SurroundedByDike(サラウンディッド・バイ・ダイク)
勤務、研修を含め米英滞在17年におよぶ帰国子女ならぬ帰国団塊ど真ん中。銀行定年退職後、外資系法務、広報を経て現在証券会社で英文広報、社員の英語研修を手伝う。休日はせめて足腰だけはと、ジム通いと丹沢、奥多摩の低山登山を心掛ける。
「地球外生物 おーい、俺たちはここにいるぞー。人類は自分たちの存在について(地球外生物に対し)知らしめようとするのをやめるべきではないか?」(The Economist, February 21st 2015)
今回紹介するのは「Yoo-hoo, we’re over here! Should humanity keep schtum about its existence?」と題された、科学技術欄で見かけた米サンノゼ発の記事である。世界にはこういうことを真剣に考えている科学者がいるのか、と興味を持つに至った。
この日付のエコノミストは「インド経済が飛び立てるチャンス」「イスラム国拡散」「中国人のアメリカへの留学熱」「英国の選挙制度」などを論じ、誌面の広角な多彩さは相変わらずである。その重い内容の誌面にあっていつも一服の清涼剤と私が勝手に位置づけているのが、科学技術欄である。
まずは以下に記事要約を掲げる。当該の記事への挿入写真はいつもの当誌の合成写真手法(?)によるものであろうが、エイリアンが宇宙飛行士らしき人物に「電話くれた?」と語りかけているシーンである。
◆「人類はまずは聞くことが分別ある行動」?
米科学振興協会(AAAS)の会合のある分科会では、これまでに何千個もの識別成果がもらされている太陽系外の惑星関連分野の討議がなされた。しかし、これまで最多の地球外惑星の発見に寄与したケプラー望遠鏡製作の必要性を唱導した宇宙飛行士ウィリアム・ボルッキ氏(William Borucki)によればこのような地球外惑星の論議の真の目的は惑星そのものについてではなく、我々以外の宇宙での高等知能生物の発見であると言い切る。
そしてその分科会のすぐ隣室では、「我々人類はその存在を知ってもらうために地球外生物に信号を送り続けるべきだろうか?」がテーマのセミナーが開かれた。地球外生物に関しては、すでに地球外生物探査計画(SETI)のパイオニアであるフランク・ドレイク氏による1974年の研究に始まり、2008年の大熊座星群の方向に向けて発信されたスナック菓子ドリトス(トウモロコシ粉材料のチップス)のコマーシャルに至るまで脈絡なく展開されてきた。
地球外生物探究をリードする同じく「SETI研究所」のセス・ショスタック氏は、今や歩調を合わせた一貫性ある活動をすべきと説き、プエルトリコにある世界最大の電波発信器を地球に近い惑星に向けたあいさつ発信のために使用したいとする。
一方、ショスタック氏と比較して、決して遜色(そんしょく)ない頭脳の持ち主である理論物理学者のスティーブン・ホーキング氏は2010年に、その説への強い異議を唱えた。ヨーロッパ人の新世界探検者とアメリカ先住民との初めての接触が一般的に平和的なものではなかった人類の歴史になぞらえて反対したのである。
ショスタック博士が「協調した発信」を主張するのは、いよいよ地球外生物との接触(電波による)が不可避の段階になったと考えるからである。テレビコマーシャル(既述のドリトス広告)はすでに200以上の太陽に似た星に到達しているはずである。人類は宇宙からの何らかの受信を探り始めるよりもずいぶん前から逆に彼方に向けた電波信号を発信してきたのである。
博士は言う。実際に受け手が存在するとしたら彼らが、我々について(どんな生物であるかの)結論を導く根拠となるので、発信すべき内容はトルティラチップスの広告(既述のドリトス)よりももっと考えた方が良い、と。
一方、宇宙物理学者でSF作家でもあるデビッド・ブリン氏はこう断定する。
エイリアンが本当に存在していて、かつ我々が彼らから何も聞けていないとすれば、おそらく彼らは我々人類が未知の何かを知っているであろう、と。
ブリン博士はカリフォルニア大学バークレー校の天文学者で地球外惑星をもっとも数多く発見したジョッフ・マーシー氏(Geoff Marcy)を含む他の27人の専門家と共同で「SETI研究所」側の(ショスタック博士の)計画に反対する声明を出した。「新参者である技術取得生物種である人類としては、自ら発するよりもまず聞くことが分別ある行動である」と。
受信、発信とも何らかの結果を確認できるか否かの賭けは気が遠くなる性格のものである。実際に発信が地球に向けて行われるとしても、我々が受信可能な周波数帯である可能性と、あるいははるかに進歩しているかもしれない他の惑星人(生物)が利用する(通信の)方式とが適合する確率は低い。
仮に可能となったら、多くのことが問題になる。ブリン博士ほかの専門家たちは必ずしも電波発信すること自体に反対しているのではない。いつ、どんな内容を発信すべきかの決定は大がかりでグローバルな研究に委ねられるべきとする。
この話題は、少なくとも現在の無線発信の手段の下で可能な到達範囲に地球外惑星文化が存在する現実的可能性は小さいと考えられるので、まじめに真剣に扱うのは大変難しい。しかしながら、もし誰かがこの発信を思いつきでやったとしたら、それはこの惑星全体を代表して発言することになる。そしてさらに万一それへの反応が返ってきたとしたら、もう大変なことで、この惑星住人である我々は、発信にはもっと注意を払うべきであったのに、と後悔することになるのである。(要約終わり)
◆SFと現実の科学の動きはつながっている
科学には全くの門外漢の自分にも、何となくわかった気持ちにさせる。SFと現実の科学の動きとがつながっているのだと思わせる記事である。ただ、日々多忙なわれらが日本で某日某夕刻に仮にこんな話題を居酒屋で繰り出したら、私を囲むまわりのオジさんたちにそれこそ“瞬殺”される憂き目に遭うことだろう。
※今回紹介した英文記事へのリンク
http://www.economist.com/news/science-and-technology/21644127-should-humanity-keep-schtum-about-its-existence-yoo-hoo-were-over-here
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