バンコク週報
１９７６年１０月創刊のタイで発行する日本語新聞。在タイビジネスマンに向けてタイの政治・経済・社会ニュースから人物紹介まで多彩なコンテンツを提供している。
◆紙へのこだわり捨てず 日系中小企業とともに成長
総合印刷業務を展開するケーエスアイ（ＫＳＩ、本社・大阪市西成区）は、タイ法人ＫＳＩ（タイランド）を２０１３年４月に設立。競争が激化する印刷業界だが、ウェブなどデジタルメディアや情報技術を含めた新たな事業を日本で展開する一方、初の海外拠点を構えたタイで、日系企業の受注獲得を図っている。
長井伸吉社長によると、現地生産・調達を進める日本の顧客からタイで技術指導の打診があったことをきっかけに進出。「中国とカナダ、インドネシアも候補地だったが、タイはＡＳＥＡＮ（東南アジア諸国連合） の中心にあり、経済がまだ伸びる余地がある。日本人が働きやすく、過ごしやすいことから選んだ」と経緯を語る。
日本の業務の一部をタイに移管しており、現在は主に、言語に左右されないテクニカルイラスト、写真を基にトレースした絵 、機械の分解図など、印刷物を制作するまでのデータ加工を手掛ける。長井社長は、「日本の仕事のアウトソーシングがほとんどなので、今後はタイで直接取引ができる仕事をどんどん増やしていきたい」と意気込む。
◆企画から印刷まで
ＫＳＩは、印刷物制作などで、顧客が「どうしたらよいかわからない」という入口の企画段階から携わり、ニーズを把握。一緒になってソリューションを考え、最後の出口（印刷）までワンストップサービスで提供できることを強みとする。タイでも事業が軌道に乗れば、日本で加工してタイで仕上げる業務ほか、入り口から出口まで支援できる体制を構築する考えだ。
タイでも日本品質が求められることから優秀な現地スタッフの確保は不可欠だ。長井社長は、「小さな会社なので、５人のタイ人スタッフには、１つのことだけなく、デザイン・営業・企画などさまざまな部門で活躍できるデザイナーに育ってほしい」と期待を示す。
一方、チラシなどの色合いやイラストの使い方で、タイ人の創造性を評価。タイ文化の要素を多く取り入れるだけでなく、米国のポップ的なものを制作する能力に長（た）けているという。タイ側の提案するものが将来、日本の小売店舗などで受け入れられる可能性すら指摘する。
タイで現在、問い合わせが多いのが、名刺とノベリティ（企業名などを入れて配布するカレンダーなど贈呈用の品物）。自ら外回りする長井社長は、名刺とノベリティを皮切りに、企業だけでなく、飲食店（メニュー）やヘアサロン（広告宣伝用チラシ）など新規顧客の開拓を目指す。
◆ＷＥＢで紙媒体を補完
タイでは紙媒体が少なく、日本ほど街中でチラシを配られることはない。バンコクでは、スマートフォンが普及しており、紙面で訴えるのは難しいと懸念する。「本を買わない、読まないなど、ペーパーレスの風潮が日本以上に進んでいる。ただ、在タイの日本企業にはこれからも紙で訴えていきたい」と長井社長はこだわりをみせる。
ただ、文字数・情報が限られる印刷物を補完する役割として、ＷＥＢコンテンツを有効に活用し、紙媒体に付加価値をつければ、的確なソリューションを顧客に提供できるとみる。
また、レイアウトの段組や色弱者に配慮した色使いを顧客に提案するなど、「文字よりもイメージで訴えることが世界中の流れ」（長井社長）となっていることを見越した事業展開を推し進める考えだ。
まずはタイ進出の日系中小企業との関係を築き、一緒に成長したいと長井社長。マニュアル制作中の情報漏えいを懸念する企業も少なくなく、セキュリティーが万全な体制で、自社で完結できる印刷工場の立ち上げも検討している。納期と品質を確保して日系企業に印刷物を提供するだけなく、日本のマーケティングスキルを取り入れて、将来はタイ企業の取り込みも目指す方針だ。
◆わが社の製品・サービス
ポスター・チラシなど制作
「お客様の『大切な想い』を『大切な人』に伝えるためには、何が必要なのかを真摯（しんし）に考え 、想いを届けるデザインを心掛け、情報発信のお手伝いをします。また、ポスター・チラシ等から更なる顧客誘導のためのＡＲ技術やＷＥＢ・ＩＴへの情報展開もお手伝いたします」
テクニカルイラストなどの制作
「各種技術資料や取扱説明書、パーツカタログなどの編集業務にも永年携わっており、お客さまの専門的な知識を勉強しながら、テクニカルドキュメント・テクニカルイラストを制作することも得意としております」
KSI(Thailand)
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