水野誠一(みずの・せいいち)
株式会社IMA代表取締役。ソシアルプロデューサー。慶応義塾大学経済学部卒業。西武百貨店社長、慶応義塾大学総合政策学部特別招聘教授を経て1995年参議院議員、同年、(株)インスティテュート・オブ・マーケティング・アーキテクチュア(略称:IMA)設立、代表取締役就任。ほかにバルス、オリコン、エクスコムグローバル、UNIなどの社外取締役を務める。また、日本デザイン機構会長、一般社団法人日本文化デザインフォーラム理事長としての活動を通し日本のデザイン界への啓蒙を進める一方で一般社団法人Think the Earth理事長として広義の環境問題と取り組んでいる。『否常識のススメ』(ライフデザインブックス)など著書多数。
◆はじめに
トランプ米大統領の軽率ぶりは、マスコミもこぞって報道するが、唯一ブレないものが、TPP(環太平洋経済連携協定)に対する立場だったのではないか?
だがトランプのTPPからの離脱の理屈は、関税撤廃による自国の競争力の低下と、労働力の流動化によって、国内産業と労働者が痛手を被るといういたって単純な理由だった。まさにアメリカ・ファーストの保護主義でしかない。これは、NAFTA (北米自由貿易協定)で、米国内での生産が減少し、さらにメキシコから流入してきた安価な労働力によって、200万人もの失業者が生じたことを考えているだけだ。このことは、NAFTAによって仕事を失った低所得階級に理解されて、ヒラリーよりも明快にTPP反対を言い放ったトランプの勝利に繋(つな)がった。だが、忘れてはいけないのは、TPP問題はそんな単純な関税問題や労働問題だけではない、一国の「主権」をも揺るがす問題だったということだ。
理由の良し悪しはともかくとして、トランプの大統領就任によって、TPPは成立要件を満たさないことになった。つまり、協議国の総GDP(国内総生産)の85%以上の賛成がないと発効しないからだ。米国だけで60.4 %を占めているため、米国抜きの発効はありえない。
だがその現実の下で、むりやり強行採決をしてまでTPPを批准させた安倍政権は、TPPの怖さをどこまで理解していたのだろうか?
いや、現在でも、賛成の与党はもちろんのこと、反対の立場の野党議員といえども、この条約の真意と危険性を理解している議員は決して多くない。
ところで、TPPからの撤退後、トランプは二国間協定であるFTA(自由貿易協定)こそが重要だと言い出した。ならばTPPなら危険でFTAなら安全なのかといえばまったくそうではない。それは関税問題の陰に隠れている非関税障壁の撤廃による、おそろしい問題として、変わらぬ危険性がそこに残るのだ。
また別の言い方をすれば、米国では、「大統領にも議会にも、TPPの内容を決定する権限がない」という事実が全てを物語る。その権限の全ては、表向きは「米国通商代表部(USTR)」、裏は600社にも及ぶ「グローバル企業」の代理人にあるといわれる。米国上院貿易委員会ですら、その条約内容にアクセスできず、上院議長が問題視したほどだ。
つまり、その「裏支配構造」においては、これから交渉が始まるFTAは、今まで交渉が行われてきたTPPとほとんど同じものなのだ。
そこで、2年前にネット出版した拙著『愚者の箱』から、TPP問題を引用して、そもそもTPPとはなんだったのかを復習してみよう。(以下、『愚者の箱』〈水野誠一著/あの出版刊/2014年〉から引用)
◆TPPの本質は関税問題ではない
2012年の暮れ、総選挙が行われた。
この選挙で民主党最後の野田政権は、「消費税増税」と「TPP加盟」を打ち出した。当然党内でも反対が渦巻き、小沢一郎の離党、鳩山由紀夫の公認問題での不出馬などが引き起こされる。不協和音の中での、自爆テロ的な選挙だった。
結果はご存じの通り民主党の決定的敗北。不可解な点もありながらも自民党の圧勝で終わった。
そして成立した安倍政権は、消費税増税法案から、TPP参加への表明まで汚れ役はすべて民主党政権が果たしてくれているという状況になった。あとは様子を見て「いいところ取り」さえすれば好都合というわけだ。事実選挙中はTPP反対を謳っていた自民党は、勝利するなり賛成どころか、積極的に推進する立場に手のひら返しをしたのだ。
金融緩和、財政出動、産業活性化という「アベノミクス」への期待感からか、円安、株高という市場反応が起こり、新政権はまずまずのスタートを切ったように見えた。
しかし、今後、いつまで続くかは分からない。僕は大いに懐疑的だ。円安への誘導政策は、すでに5年は遅きに失しているうえ、その手法があまりにも稚拙である。その間に大半の生産工場は海外に移転してしまっており、金融緩和をしてもゼロ金利の国内には資金がまわらず、産業の活性化にはつながらないと思うからだ。浜田宏一エール大学名誉教授の政策感覚は、いささか時代にそぐわなくなっている。
夏の参議院選挙で過半数を取るまでは、多少慎重路線を取るつもりかと思ったら、高い支持率に気を良くしてか、新政権は「TPP交渉参加」を急いできた。
安倍総理は、オバマ大統領との会談で、TPP交渉参加については「交渉参加に際し、一方的にすべての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」という共同声明を発表。そして、米と砂糖の例外化、一方米国には自動車輸入関税の例外化という調整だけをして、交渉参加を決めてしまった。
だが、秘密性の高いTPP交渉とはいえ、これとて不確実な話なのである。先行する9ヶ国が、あとから交渉に入った後発のカナダとメキシコには例外的な独自交渉や再協議を一切認めないという極秘条件を求めていたことが分かったからだ。
しかも、日本農業新聞はこう報じている。
「米国のオバマ大統領は現状では環太平洋連携協定(TPP)交渉の決定権を持っておらず、交渉相手国と協定をまとめても議会によって多様な修正を受け締結困難となる可能性が高いと政府が分析していることが分かった。外務省が、作成した資料に明記している。安倍晋三首相はワシントンで2月22日(日本時間23日未明)に行った日米首脳の共同声明を受けて『聖域なき関税撤廃でないことが明確になった』として交渉参加に前のめりな姿勢を示しているが、共同声明では何も保証されていないことがあらためて露呈した格好だ」
これでは風呂の温度を確かめずに飛び込む愚挙ではないか。
しかも、3月8日には先行国の10経済団体から、一切の例外交渉は認めないとする共同声明が出されたという。この中に名を連ねる「米国緊急貿易委員会(the Emergency Committee for American Trade)」がどうも急先鋒らしい。
米と砂糖の関税を守ることが問題の本質だという解釈自体にも認識不足がある。はたまた国民の目を眩ませる煙幕なのか。どちらにしても愚かな決断だ。
つまり、関税撤廃は表の看板で、本当の狙いは非関税障壁撤廃にあることは明らかだからだ。
◆TPPとは何か?
TPPとは、環太平洋経済連携協定(トランス・パシフィック・パートナーシップ)の略
だ。
すべての品目の関税を段階的になくすことを目標にしている。そして関税以外にも、投資や競争、知的財産、政府調達、環境、労働といった「21分野24部会」で共通のルールを設け、自由貿易圏をつくろうという試みだ。
シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4ヶ国が2006年に交渉を始めた。その後、2010年までに米国、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが交渉に入り、2011年11月にはカナダ、メキシコが交渉に加わった。現在、すでにオーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの9ヶ国が加盟を決めている。
そこに日本がさらに遅れて、動き出したバスを止めてまで協議に加わった。いいかえれば、閉店間際の「注文の多い料理店」に自ら飛び込んだというわけだ。
実は、4ヶ国が交渉を始めた当初は、得意なモノやサービスを各国が交換し合うという「水平型」の交易圏をつくることが狙いだった。だが米国が交渉に参加してから、市場ルールを米国型に統一し、手前勝手なブロック経済をつくるという「覇権型」のTPPに変質している。
このことを、日本は理解しているのだろうか。
◆TPPとは「注文の多い料理店」だ
宮澤賢治の作品に「注文の多い料理店」という童話がある。夜道に迷った旅人(ハンター)2人が空腹と疲労で帰路を急いでいると、行く手に暖かそうな灯りを点す料理店を見つける。「やれ助かった」とばかりに飛び込んで一安心するのも束の間、料理店の主人から「服を脱げ」「クリームを塗れ」などと色々な注文を出された挙げ句、「体に塩を塗り込め」と注文されて初めて、ようやく旅人の方が料理されて食べられてしまうのだと気づき、ほうほうの体で逃げ出す。つまり料理店は旅人を釣るワナだったという怖い童話だ。
僕はTPPをこの話になぞらえる。
TPPは、聖域なき「関税撤廃」という面ばかりが強調されて、自由経済の理想型のように思われてきた。だが、実は関税以外の「非関税障壁の撤廃」という問題が意外と認識されていない。
非関税障壁の撤廃とは、国内の歴史や文化的な伝統であろうが、長年日本で守られてきた国内法だろうが、もしそれが外国企業の日本進出に不利なものと認定されれば、撤廃しなければならないということなのだ。実際、そのための怖い「注文」が次第に見えてきている。
さらに注意すべきは、他にどんな国が参加していようが、日米2カ国だけで、GDP比では80%以上を占めているという事実だ。すなわちTPPの実態はこの2カ国間のFTAのようなものであり、先行していた諸国は「注文の多い料理店」のおとりの客だったと見ることもできるのだ。
◆米国でリークされたTPP密約情報が語るもの
何故、僕がTPPの本質は関税障壁の撤廃にはないというのか。
それは、2012年6月に米国の市民団体「パブリック・シチズン」が、それまで密室で進められていたTPPの恐るべき草案のリークを受けて発表するという出来事があったからだ。
その内容はテレビのニュース番組で放映され、ウェブ上でも観ることができる。「パブリック・シチズン」代表のロリー・ウォラックが語る内容は、それが単なる貿易協定でないことを証明している。リークされた全26章のうち、貿易関係はたった2章のみだという事実も、その証拠といえるだろう。
彼女がハッキリいっているのは「表は貿易協定だが、実質は多国籍企業による世界統治だ」
「まさにトロイの木馬」だということだ。そして「これは、オキュパイ・ウォールストリートで槍玉に挙げられた『1%=多国籍企業』からの逆襲」なのである。
驚くことに米通商代表部のカーク代表主導で行われたこの草案づくりは、600人を超える多国籍企業の顧問たちはウェブ上で草案にアクセスできたのに、それを監督すべき上院貿易委員会の議員は、ワイデン委員長はおろか誰もアクセスできなかったという。堪(たま)りかねたワイデン委員長が、監督責任のある協定の内容を知る権利があるとする法案を提出したというから呆れる。
この草案でまず語られるのは、ISD条項のことだ。あとで述べるように、あらゆる国内法や規制を土足で乗り越えて、米国が勝手につくった国際法廷に国を引っ張り出せるというとんでもない代物である。
草案が示唆するのは、司法の二重構造だといえる。
国民は、所属する国の国内法や司法を使って権利を守り、要求を推し進める。だが、多国籍企業は別立ての司法制度を持ち、お抱え弁護士達が、インチキ国際法廷(世界銀行の下部組織=国際投資紛争解決センター)に加盟国の政府を引きずり出し、3人の判事によって、相手国政府に無制限の賠償を命じることを可能にするものだ。
そして、このリークには、あとで述べる薬価引き上げのためのジェネリック薬品の販売禁止から、金融規制の緩和まで触れられており、高リスク金融商品の販売も国内ルールでは規制できなくなるとしている。
TPPがこの草案通りのものとなれば、NAFTA以降好き勝手に特権を固めてきた多国籍企業にとって、極めつけの飛躍の機会となるだろう。そしていうことを聞かない国に対しては、為替と貿易制裁が制裁手段になるのだから、加盟諸国はまさに、グローバル資本帝国主義下の属国でしかない。こんな酷い協定があっていいのだろうか?
この告発は米国で行われたものだ。米国内でさえ、米国民のためではなく、「1%」の多国籍企業とグローバル資本のためでしかないTPPに対して、こんな批判の目が向けられているのだ。そのことを考えてみて欲しい。
◆非関税障壁の最大のものは公的医療保険制度
TPPが要求する恐ろしい「注文」のひとつが、野田首相も、のちに安倍首相も入っていないと説明した「公的医療保険制度」の問題だ。
この問題については、2011年2月の日米事前協議で米国側が「TPP交渉の参加国が公的医療保険制度の廃止や単純労働者の受け入れを迫られるとの懸念」を払拭したといわれていた。だが実際は2012年9月16日に、日本政府は米国から「公的医療保険制度の運用で自由化を求める声明」を受け取っていたという。この事実を野田政権は隠していたのである。これは民主党でTPP反対派の長尾たかし衆議院議員からの情報だ。
ここで注意すべきことは、TPPでは公的医療保険問題を本来扱うはずの「金融サービス分野」ではなく、「物品市場アクセス分野」で取り扱うことにしたという、ペテン的な手法を使ったという点である。抵抗の多い正面突破ではなく、裏から入り表門の鍵を開けて「薬価決定方式」から変えていく作戦なのだろう。つまり薬価の引き上げだ。
これはやがて「公的医療保険制度」の崩壊を招くことになる。
先日こんなニュースも流れた。
「安倍晋三首相は6日午前の参院本会議で、環太平洋連携協定(TPP)交渉に関し「これまでに得られた情報で、公的医療保険制度の在り方そのものは議論の対象となっていないと承知している」と明言した。「個別の食品安全基準の緩和も議論されていない」とも明らかにした。(産経新聞2013年3月6日付)」
このニュースを見て、「ああやはり、公的医療保険は守られるじゃないか」と考えた人も多かったのではないか。だがそれは間違いだろう。
傍線の部分に注意して欲しい。「在り方そのもの」とは公的医療保険制度の存在自体には手をつけないといっているだけだ。その代わり、「物品市場アクセス分野」で、多国籍薬品企業が持つ薬品の「薬価引き上げ」や「混合医療の解禁」は要求するという意味なのだ。
米と砂糖の関税に聖域を設けるというオバマとの約束以上に危ない話ではないか。2011年11月から交渉に入った後発のカナダとメキシコには例外的な独自交渉を認めないという極秘条件があったように、彼らが日本にだけ都合の良い譲歩をするはずがないのだ。
この公的医療保険問題には二つの局面がある。ひとつが公的保険というシステムそのもの。もうひとつが、TPPの重要テーマである「知財権」に関わる問題だ。薬価決定方法はこの後者とも関連する。
色平哲郎(JA長野厚生連佐久総合病院医師)が「市民と政府の意見交換会~TPPを考えよう~」というシンポジウムで、次のような発言をしているので引用してみよう。
「TPPに入れば『米価は下がり、薬価は上がり』ます。米国の薬価は日本の3倍程度ですから、どのぐらい上がることになるのか、全国民にとって恐るべき事態だと思います。
10年ほどの間に、HIV治療薬の価格はなんと100分の1に下がりました。世界中で600万人から700万人が救われたといわれています。薬価が下がれば多くの人々が救われます。薬価が上がるとどうなるでしょうか。日本では財務省が医療費全体に枠をかけて抑制していますので、薬価が上がればその分、人件費を圧迫するしかなくなります。医師不足の昨今、医師の人件費が削れないとなれば、看護師の給料が下がりかねません」
彼の発言がTPPにおける医療問題の本質を物語っている。
薬価のしわ寄せが看護師の給料に影響するとは、聞き捨てならない事実だ。TPPでは、さらに知財権を盾に、薬価の引き下げ要因となっている「ジェネリック薬品」の使用を禁ずるだろうといわれている。混合医療の解禁要求も続くだろう。これも薬価や知財に関わる問題だからだ。
入り口は裏口でも、次第に彼らのツメはのびてくる。
一番厄介な問題を指摘しておこう。
TPPが動き出してから、米国の民間保険会社が「医療保険」商品を開発して日本で売ろうとしたとする。そのとき、彼らが、日本の「公的医療保険制度」が邪魔になると政府にクレームを付けた場合だ。
もし、そうなったら、従来の公的医療保険制度がその新規加入の民間保険会社に不利益かどうかが、ISD条項で争われることになる。そして、その裁定で負ければ(確実に負けるのだが)、日本はすべての公的保険制度を撤廃ないしは大幅に変えなくてはならなくなるという信じられないことが起き得るのだ。
米国内で起きたTPP草案のリーク(2012年6月)とそれに対する反応を紹介したが、それより半年ほど前の東京新聞(2011年11月5日)にも、民主党政権時代に米国関係者から聞き取ったという「TPP内部文書」が紹介されていた。記事の内容はこうだ。(以下引用)
「環太平洋連携協定(TPP)交渉について通商問題を担当する米議会関係者が、日本の参加には『保険などの非関税障壁(関税以外の市場参入規制)が重要な問題となる』と述べていたことが政府の内部文書で分かった。米議会関係者は、日本郵政グループのかんぽ生命保険が販売する簡易保険や共済などの規制改革も交渉テーマにすべきだ、との見解を示したとみられる。
政府は与党・民主党に対しては、簡易保険などがテーマとなる可能性に触れつつも『現在の9ヶ国間の交渉では議論の対象外』との説明にとどめていた。明らかになった米議会関係者の発言は、日本がTPP交渉に参加すれば保険分野だけでなく、幅広い分野での規制改革がテーマに加わる可能性が高いことを示した内容。今後は情報開示が不十分なまま政府がTPP参加の議論を進めることへの批判が強まりそうだ。
内部文書によると、米議会関係者は、日本の参加には米国が以前から求めている関税以外の規制改革が重要と明言。『牛肉などの農産物だけでなく、保険などの分野で米国の懸念に対処すれば、交渉参加への支持が増す』と述べている。
米政府は1990年代以降、自国企業の日本市場参入を後押しするため『年次改革要望書』
『経済調和対話』などの形で、日本に対して多岐にわたる要求を突きつけてきた。
米通商代表部(USTR)が今年3月に公表した他国の非関税障壁に関する報告書も、簡易保険や共済が保護されているとの立場から『日本政府は開放的で競争的な市場を促進』すべきだと指摘。この点を米政府の『高い優先事項』と表現している。
規制に守られている簡保や共済には、民間の保険会社より契約者に有利な条件の商品もあ
る。簡保や共済の関係者には規制改革で、資金力がある米国企業などに顧客が奪われることを懸念する見方もある。
米政府は簡保などと同様、食品安全基準、電気通信、法曹、医療、教育、公共事業などでも日本の過剰な規制を指摘している」
こういう情報がありながら、依然、米や砂糖の関税聖域にしか関心を持たない、あるいは持たない振りをしている政治家は一体どんな頭脳を持っているのだろうか?
◆「ISD条項」というワナ
ISD条項について考えてみよう。
すでに触れたように、これが一番の曲者なのだ。
「ISD条項」とは、ある企業が輸出先の国で、非関税障壁によって経済的な不利益を被った場合に、「国際投資紛争解決センター」という世界銀行の下部組織に相手国を訴えることができるという条項だ。
国際投資紛争解決センターが世界銀行の下部組織だと聞くと、さも公平・公正な裁量がされると思うだろうが、実際はまったく違う。
すでにISD条項が導入されているNAFTA(北米自由貿易協定)のケースが参考になるだろう。2010年10月までにカナダは米国企業(実はグローバル企業)から28件の訴訟を起こされて、すべて敗訴。メキシコは同じく米国企業から19件の訴訟を起こされ、これもすべて敗訴。トータルで3億5000万ドルを原告企業側に対して払わされている。逆に米国は、カナダとメキシコ両国の企業から19件の訴訟を起こされたが、こちらは米国がすべて勝訴しているのだ。
どう考えても不平等な裁定としか思えない。
その判断根拠は、ひとえに原告企業に経済的不利益があるかないかであり、その国の国情だの根拠法だのというものは一切考慮されないといわれている。
これほど露骨な結果には啞然とするが、世界銀行自体が、国連の組織とはいえ、米国の支配下にあることは間違いないので当然かも知れない。歴代総裁の席を米国が完全に独占するという暗黙の了解があることからも、それは分かる。
◆何故、条約が国内法よりも優先するのか?
ISD条項があろうと、日本には日本の国内法があるのだから、それに従えばいいじゃないか、と思っている人もいるだろう。だがそうはいかないのだ。
日本においては、国内法よりも条約が優先するからだ。
これは日本国憲法第98条第2項に「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、こ
れを誠実に遵守する事を必要とする」と定められていることによる。
国内法ならば、拙い点が明らかになっても、改正するなり、運用上フレキシブルに対応することも可能だが、条約はそれよりも優位にあるため、一旦決めたらいかんともしがたい。
ところが米国は違う。
最近問題になった「米韓FTA」協定締結問題でも、この件が議論になった。米国の外交通商部が示した資料によると、米国上・下院で非公式審査を終えた「米韓自由貿易協定(FTA)履行法案」には「両者(米国の国内法とFTA協定)が抵触・衝突する場合、米国法が優先され、協定に書いてある規定でもその適用が米国法と相反する場合には法的効力がない」と明示されている。
つまり米国では、逆に条約よりも国内法が優先するということだ。国によって、条約と国内法の地位が異なるということなのだ。
そういえば、我が国の憲法は進駐時の米国がつくったものだ。この不平等さは、将来に米国が押しつける様々な条約を想定して仕組まれていたことも十分にあり得る。
◆何故民間企業が、外国を相手取って訴訟を起こせるのか?
ところで何故、民間企業が外国の国家を相手取って訴訟ができるのか、という疑問が出てく
る。これがいかに異常かは、弁護士である岩月浩二のブログを読んで欲しい。少し長いが引用してみよう。
TPPにISD条項が付されるのは必至である。
ISD条項は外資(企業)が一方的かつ強制的に国家を裁判にかけることができる制度である。ごく普通の法的な感覚からすれば、この制度はそれ自体、極めて奇妙な制度である。(中略)
国家は一方的に裁判にかけられるということはない。
国家主権の絶対性である。
したがって、国家間紛争は、外交によって解決する以外に方策がない。
外交の延長としての武力行使は、国連憲章7章による場合や自衛以外の場合には禁じられている。したがって、国際法違反を主張する側はあくまでも外交によって粘り強く問題を可決する以外にない。(なお、WTOには、国家間の紛争処理手続は存在し、WTO加盟国は、委員会への提訴がなされたときは、応じなければならないが、最終判断に至るまでに数々の段階がある上、最終的判断もISD条項のような直接的な拘束力はない。決定に反しても、国際法違反の問題が生じるに止まる)
北朝鮮による拉致被害者について、「対話と圧力」と言われる所以である。(中略)
さて、ISD条項は、そうした主権の絶対性を誇る国家を、外国投資家が一方的に裁判にかけることができるというのである。
通常であれば、外資(企業)は母国政府に権利侵害を陳情し、母国政府が重要な課題だと考えれば、外交保護権の行使として、相手国と交渉する。あるいは現在ではWTOのパネルにかける。
これが当たり前の国際法の世界である。
ところがISD条項は、国家ですらなしえなかった、相手国を強制的に国際裁判の場へ引きずり出すという強烈な権限を、外国投資家に与える。
しかもその判断には、強制力があり、国内判決と同様に強制執行できる効力があることが予め合意されている。
おかしくはないのか。
ISD条項は、外国投資家に国家を超越した強烈な国際法主体性を与える。
個人よりも、国家よりも、国際法上外国投資家に優越した地位を与えるのがISD条項だ。
如何なる深刻な人権侵害を受けようと、個人は、決して国家と対等ではない。
かけがえのない基本的人権を侵害されてすら、個人は、相手国と直接交渉すらする権利がない。母国にすがるしか国際法上の手段はない。
外国投資家をそこまでして、国際法上優遇しなければならないのか。外国投資を国内に呼び込むために、国家はそこまで屈辱的にならなければならないのか。どうして、このような逆転したことが起きているのか。
問題はそこから出発する。
答えは一つである。
投資の自由の拡大こそが、全世界の国民に幸福をもたらすという強力なテーゼである。
資本移動の自由を高めてこそ、適正な国際的な分業が行われるようになり、富が均等に分配され、全世界の国民が豊かになるというのである。
したがって、投資家の前に国家は主権を譲り渡し、最大限の投資の自由の享受を認めなければならないのである。
真剣にそう考える人がいるのだろう。そう考える人の力が強いから、ISD条項のような普通の国際法的発想では理解できないものが生まれたのであろう。
最後の部分をもう一度読んで欲しい。
真剣にそう考える人がいるとは到底思えない。だが、それを建前に堂々と要求する「1%」の力が強いから、ISD条項のような普通の国際法的発想では理解できないものが生まれたといっているのである。
もちろんこれは皮肉だ。「投資の自由の拡大こそが、全世界の国民に幸福をもたらす」ことなどあり得ない。カーター大統領のときに米国で行われた規制緩和が、とんでもない貧富の差を産み出したように、あらゆる規制緩和には毒が含まれている。
そこには、物質主義や強欲経済主義というものが渦巻いている。これこそがグローバル投資家主権の確信犯的な「ウソ」であり、この現代に覆いきれないほど大きな「貧富の差」をもたらした「愚行」そのものなのだ。
◆米韓FTAに学ぶ
米韓FTAは、このISD条項が入ったために反対運動に火がついた。これは周知の事実だ。だが問題はISD条項だけではない。
いったん規制緩和をすると元に戻せない「ラチェット条項」や、例えば自動車分野で韓国が協定に違反したり、米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼしたりする行為と判定された場合、米国の自動車輸入関税撤廃を無効にしてしまう「スナップバック条項」なども存在しているのだ。
こう考えただけでも、TPPは巧妙に仕掛けられた「日米EPA」なのだといえるだろう。繰り返しになるが、日本と米国を除いた他の10カ国のGDPを足し合わせても、全体の20%にも満たないのだ。
こんな仕掛けの「注文の多い料理店」に何とか入ろうとドアを必死に叩いているのが今の日本だ。宮澤賢治の童話では、旅人が最後には気づいて、辛うじて逃げ出すことができたが、今回のTPP交渉では、一度テーブルに着いたら離脱は不可能だといわれている。
(※注)経済連携協定(EPA)……FTA(自由貿易協定=物の流れ)に加えて、人の移動、知的財産権の保護、投資、競争政策など様々な協力や幅広い分野での連携で、両国または地域間での親密な関係強化を目指す条約。ちなみにFTA(自由貿易協定)とは、特定の国や地域との間でかかる関税や企業への規制を取り払い、物やサービスの流通を自由に行えるようにする条約。
◆TPP賛否は「農業VS製造業」の闘いという間違い
こういう話をしていると「農業なんて所詮日本のGDPの1.5%でしかない。それを守るために残り98.5%を犠牲にしていいのか?」と発言した民主党の前原元外相のように的外れな指摘がまたぞろ出てきそうだ。
農業関係者のTPP反対のデモをマスコミがこぞって取り上げたこともあり、TPP問題とは「農業VS輸出産業」の闘いと思われがちだ。前原元外相の発言もマスコミに大いに取り上げられたが、まったく意味不明の戯言でしかない。
たしかに農業生産額はGDPの1.5%程度かもしれない。そもそも輸出自体が限定的であり、ほとんどが国内消費なので、輸出の関税は大した問題ではない。ただし、逆に海外から激安のコメや野菜が無制限に輸入されれば、もともと規模が小さい産業だけに国内生産は完全崩壊しかねないという一方的な問題を持っている。そうなれば、食糧安保が崩壊する。
しかし一番深刻な問題は、「食文化」が崩壊し、食の「安全」と「質」が守れなくなる可能性だ。この問題は無視されてしまっている。
一方、輸出で稼げる、つまり日本が輸出の関税撤廃でメリットが出る分野といえば、自動車や家電製品などの耐久消費財くらいだろう。この割合はGDP比率で14.4% (2009年)だが、その輸出依存度は約11.5%である。これをかけあわせると1.65%くらいの規模でしかない。こちらも、それほど国内消化率が高いのだ。
その理由のひとつは、この分野はすでに海外への工場移転が済んでいるということが挙げられるだろう。ちなみにトヨタは米国内で生産した製品は、米韓FTAを利用して韓国に輸出しているという。日韓FTAを結ばずとも、そもそも日本から輸出する必要がないわけだ。
すなわち、TPPを論じるよりも前に、長年円高が放置されているうちに、生産の海外化が進んでしまっている事実を知らなければならない。今回のアベノミクスが円安自体を目的にしている誤りにも、この事実への認識不足がある。
日本での国内サービス業はGDP比で20.8%、卸売り・小売業は13.1%(いずれも2009年)と、輸出に比べてもよほど大きい。
すなわち、日本はもはや輸出産業国ではなくて内需国なのである。
ちなみに現在の米国の関税率を見ると、普通乗用車が2.5%。家電製品が5%だ。この程度の関税だったら、為替が10%も円安に振れれば問題は解決してしまう。
ところで、「TPP参加によるGDPへの影響」がどうなるのかの試算がある。
経産省、農林水産省、内閣府とそれぞれの計算があるが、どれも不完全なものだし、前提条件が不確定な中ではあまり意味がない予測だろう。次に示したURLはそれぞれ批判派、中間派、推進派の分析評価だと思って参考にしていただきたい。
僕が、これらの予測にこだわらない理由は、産業構造と環境の変化が進み、問題の本質がGDPなどの「量的」なものから「質的」なものへと移行していると考えるからだ。
ただし、その中でも、農水省の試算は気になる。額が適切かどうかは分からないにしろ、農業に大きなダメージがくることは明らかだし、ひいては食品の質の問題にも波及する可能性があるからだ。
さらに関西大学・高増明教授のGTAPモデルによる農業関連の計算も参考になる。日本の米の生産を維持するためには、400%の補助金が必要になるという試算だ。
http://www.takamasu.net/TPP.html
◆NAFTAの失敗に学べ
こうした指摘がある一方で、米国の思惑を疑問視する向きもある。
例えば、米国は最初からTPPの交渉テーブルにつかないなど、あまり積極的でないのではという見方だ。
また「米国議会調査局の『太平洋への回転。オバマ政権のアジアへの再均衡』という報告書を見るかぎり、日本をターゲットにする意志がないのではないか」といって「米国陰謀論」を否定する根拠にするジャーナリストもいる。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34898
議会調査局が公表するレポートに本音をさらすはずがないと思うが、ただ実際、米国にもTPPへの参加に大々的には喜べない事情はある。
米国が慎重を装う理由のひとつが、TPPに対する国内からの根強い反対運動だ。先のリーク草案の話でも分かるだろう。
そもそも米国には、苦い想い出がある。1992年に米国がカナダとメキシコと結んだNAFTA(北米自由貿易協定)によって、全米で200万人の労働者が失業したからだ。
NAFTAによって、米国内の企業や生産はメキシコに流出し、無関税で価格破壊的な安い商品が流入した。失業率が上がり、海外労働者の出現で賃金は下がり、ほとんどの商品が外国産になってしまった。グローバル化と国際競争力の強化という政府の「夢」の説明は、結局は大企業だけの利益で終わったのである。
つまり自由貿易協定は、一部、すなわち米国でいう「1%」の「多国籍企業の利益にしかならなかった」のだ。
では、もう一方のメキシコやカナダは潤ったのだろうか?
メキシコではNAFTAが実効するようになった直後1995年には570万人の失業者が出たといわれている。実効の前年1993年では3.43%だった失業率が、実効1年後のこの年には6.23%に跳ね上がったのだ。
それはアメリカから戦略的に輸出された安価な遺伝子組み換えトウモロコシが原因だといわれている。トウモロコシを食文化の源にしているメキシコで在来種栽培に従事してきた農業労働者の多くを失業させてしまったのだ。
これによって職を失った労働者は、米国がメキシコに移設した自動車部品製造工場などに低賃金で雇われたものの、失業者を全部吸収するまでには至らなかった。米国内の部品工場減少は、すでに米国内の失業者を生みだしていたわけだが、そのうえメキシコの失業者が米国に不法入国するようになったため、米国の賃金をさらに引き下げたといわれる。労働者から見ればNAFTAは経済の悪循環を生み出しただけだった。
しかも問題は失業者の増大だけではなかった。米国からもたらされた遺伝子組み換えのトウモロコシが、食文化の核として存在した在来種をことごとく駆逐するという問題も起きている。この問題はあとで述べたい。
メキシコは日本よりも経済や近代化において後進国だから参考にならないというかもしれないが、ここで学習したいことは「結局潤ったのはグローバル資本の多国籍企業だけ」ということだ。
メキシコが先進国でないというなら、カナダからの警告もある。
グローバルフードシステムと呼ばれる世界の食料貿易動向および穀物メジャー企業の実態についての調査研究の第一人者である、ブルースター・ニーンとキャサリン・ニーン夫妻からのTPPに関するメッセージを観て欲しい。講演のために来日する予定だったのが、健康上の理由で不可能になったためのビデオメッセージだが、分かりやすくまとまっている。
http://eschaton.asia/TPP/%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E3%83%93%E3%83%87%E3%82%AA%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8/
◆小泉政権の愚行を繰り返してはいけない
TPPで予想される数々の無理な「注文」の内容は、かつて日本が米国から毎年突きつけられていた「年次改革要望書」で執拗に要求されたものが多くなるはずだ。
例えば、日本の木材自給率が20%台に落ちた原因は、米国の住宅工法に合わせて、日本農林規格法を変えさせられた上に、外材の輸入関税を撤廃させられたことにあるといわれている。これもこの要望書が端を発していた。
この要望書は、民主党の政権交代の頃より、内政干渉ではないかと批判され始めたため、出してこなくなっている。だが今回のTPPこそが、形を変えた「年次改革要望書」の集大成だということを忘れてはいけない。
徹底的に従米的だった小泉政権時は、この年次改革要望書に記された事項を忠実に実行しようとして、日本を瀕死の状態に陥れた。
小泉内閣が命を賭けた「郵政民営化」などは明らかにその一端だ。そしてその人気とは裏腹に、日本経済は暗転し始めた。現在の安倍政権によく似ている。
また新たな「愚者の箱」が開こうとしているのだ。
今回のTPP参加が、その日本の自立性にトドメを刺すことにならないことを祈るしかない。
◆各国同等な「水平型」ではなくて、米国の覇権型TPPに
経済評論家の内橋克人は朝日新聞2013年3月2日付「耕論」のインタビューでこう語っている。とても本質を突いているので紹介したい。
「お互いによきものを交換しあう限り、自由貿易の拡大はそれぞれの国の利益になります。米国が入るまでのTPP構想がそうでした。シンガポールは金融サービス、ニュージーランドは農産品、チリやブルネイは鉱物資源といった具合に、お互い得意なもの、足りないノウハウを補完しあう『水平型』の交易圏が狙いでした。
米国が掲げる自由貿易は、市場のルールや規制を米国ルールに統一しようとする「覇権型」です。TPPは貿易の枠組みづくりだけの話ではなく、どの国も恩恵を受ける自由貿易を進めようというものでもありません。
米国主導に移ってからのTPPは自由貿易の理念より政治外交上の国際戦略という意味合いが強くなったのですが、日米の「聖域」を認めるかのような、その実、あいまいな共同声明が加わって、二重三重の意味で、化けの皮がはがれ始めたといっていいでしょう」
まさに、米国が入ってからTPPが変質していたことがよく分かる。
覇権型のパートナーシップという言葉自体が、そもそもの矛盾を示しているということなのだ。((以上、『愚者の箱』〈水野誠一著/あの出版刊/2014年〉からの引用終わり)
◆トランプの否常識に期待できるか?
さて、長々と古い記事を引用したが、この2014年当時の気づきと、現在の状況は全く変わっていない。
つまり、TPPを止めたところで、FTAによって関税を撤廃するということは、あたかも輸出入国双方にメリットがあるように錯覚するが、そのメリットは世界市場で活躍する多国籍メーカーや商社のメリットであり、貿易にまつわる税収がなくなる国家にとっては、むしろメリットが減少しかねない。また冒頭でも触れた、安い労働力の流入のメリットも、自国の労働者から仕事を奪う点ではマイナスになる。
だがそれよりもずっと危険な罠は、韓国がすでに苦慮しているように、FTAにも付いてまわるISD条項やラチェット規定やスナップバック規定などの付帯条項だ。これにより、国家が数々の多国籍企業の前にひれ伏すことになるからだ。TPPとなんら変わらない罠が待ち構えていることになる。
韓国で起きた一例を挙げれば、米国投資ファンドの「ローンスター」に、ISD条項を発動され、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターに韓国政府が提訴されたという事実がある。 ローンスターは、韓国がアジア通貨危機に陥っていた1997年、土地や建物、銀行などを一斉に安価で買収していった。買収したのちに、さらに売却するという手法で、5兆ウォンを稼いだ。韓国政府は、この5兆ウォンに対して課税を課そうとしたところ、前述のとおり、ローンスターにISD条項で訴えられたということだ。
トランプはNAFTAも見直すと言っている。これからの日本の命運は、彼がその問題の本質がグローバル企業とその手下である通商代表部の「罠」にあるということに気づいて、もっと両国にとってフェアな本来のFTAに向けて「否常識」なリーダーシップを発揮できるかどうかにかかっているのだ。
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