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トランプ米大統領就任でどうなる世界のiPhone工場―河南省鄭州市
『中国のものづくり事情』第7回

4月 17日 2017年 経済

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Factory Network Asia Group

タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。

2016 年の中国は景気減速が懸念されていたが、自動車産業は堅調だった。日系勢も好調で、日本車の販売台数が初めて400 万台を超えた。前年比24.0%増の124 万7713 台を記録したホンダは同年12月、湖北省武漢市で新工場建設の起工式を開いた。

一方、前年比8.4% 増と伸び率では劣るものの、日系メーカーの首位を維持したのは、135 万4600 台の日産だった。「シルフィ(軒逸)」や多目的スポーツ車(SUV)の好調が貢献した。

その日産の内陸部の拠点といえば、湖北省武漢市と河南省鄭州市だが、前者は16年8月号の本誌「FNAマガジンチャイナ」で取り上げているので、今回は鄭州を取り上げたい。

◆投資のアクセルを緩めない富士康

鄭州経済を支えているのは、自動車とスマートフォンだ。『鄭州日報』(17年1月6日付)によると、同市で16 年に生産された自動車台数は、前年比21.8% 増の62 万5000 台に達した。それに大きく貢献しているのが鄭州日産であることは間違いない。

スマートフォンに関しては、シャープを買収したことで日本でも有名になった鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)がアップルのiPhone を生産していることで知られる。鄭州工場では、1日50 万台もの生産能力があるという。

米大統領に就任したドナルド・トランプは「アメリカ・ ファースト」(米国第一主義)を掲げ、メキシコで工場を建設する自動車メーカーを牽制(けんせい)。計画を変更するメーカーが現れるなど、物議を醸しているが、その矛先は、富士康にも向けられている。生産拠点の一部を米国に移すのではないかという報道もある。しかし、これは現実的とは思えない。米国で生産すれば当然コストは上がり、販売価格の上昇は避けられない。iPhone の販売台数は減少するだろう。米国を代表する企業の一社であるアップルが業績を落とすことは、米国にとって利益にならない。トランプが強気なのは、パフォーマンスに過ぎないとの見方も強い。

今年に入り、富士康がシャープと有機EL(OLED)パネル生産のための工場を鄭州に建設する可能性が報じられている。2018 年にはすべてのiPhone にOLED パネルが搭載されるという噂もあり、その需要に備えるため、鄭州に建設するというわけだ。富士康には、中国への投資のアクセルを緩める気配はない。

富士康は、自動化をはじめとする設備投資にも注力している。同社自動化技術発展委員会の代佳鵬氏は、中国の製造拠点で働く工員の数を3段階にわたって削減する計画であることを明らかにしている。第1段階では、作業員にとって危険であったり、簡単で重複したりする作業をロボットにやらせる。第2段階では、すべての生産ラインにロボットを投入する。第3段階では、生産、物流、検査などの作業を完了させるための最少人数の従業員だけを残し、すべてが自動化される。代氏によると、成都、深圳、鄭州の工場はすでに第2、第3段階に入っているという。特に鄭州では、コンピューター数値制御(CNC)工作機械の1ラインの完全自動化を実現させているという。

このように依然として世界の工場として機能し続ける鄭州だが、日本での存在感は薄い。日本貿易振興機構(JETRO)の発表によると、鄭州への進出日系企業は14年時点で103 社。しかも最近、特に目立った進出もなく、武漢と比べると圧倒的に注目度が低いのが現状だ。

しかし鄭州は、中国の中央政府も重視している。国家発展改革委員会(発改委)は16年12 月26 日、中部地区発展の戦略である「促進中部地区崛起“ 十三五” 企劃(第13 次5カ年計画)」を発表したが、その中で、武漢と鄭州を「国家中心都市」に定めている。交通や物流のハブとしても重要な地域だからだ。これからさらに、政府の鄭州への投資は加速するだろう。日系企業にも、その“ 列車” に乗り遅れないでほしいものだ。

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参考資料
『鄭州日報』『OFweek 工控網』『中国通信網』など

※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ 2017年2月号より転載しています。
http://www.factorynetasia.com/magazines/

※『中国のものづくり事情』過去の関連記事
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