п»ї ボランティアと障がい者が交わるフィールドワークから 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第150回 | ニュース屋台村

ボランティアと障がい者が交わるフィールドワークから
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第150回

12月 27日 2018年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など経て現職。

◆田んぼと街歩き

文部科学省の「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究」の採択事業である障がい者向けのオープンキャンパスは、「基礎教育ステージ」「関わり合いのステージ」「実践教育のステージ」の三つのステージに分けて取り組んでいるが、11月は関わり合いのステージの二つのプログラムを行った。

一つはさいたま市緑区に広がる「見沼たんぼ」で、たんぼを保全する地域のNPOとともに田んぼでご飯を炊き、おにぎりを作って食べ、ゲームや散策を楽しむプログラム。もう一つは埼玉県和光市で2日間にわたって地域のボランティアの方々と同市内の名所を歩き、グルメスポットで食事をし、それを壁新聞で発信する、というものだ。

どちらも地域の方と障がい者との交流をベースに考えたプログラムで、事後の参加者のアンケート調査ではおおむね満足している様子でホッとしているが、実現までにはいくつかのハードルもあった。

◆地域の方の不安

まずはご協力いただいたボランティアの方々の不安だ。

地域で活動するボランティアの方々は高齢の方や人生経験の長い方が多く、責任感が強いし、事故への対応も常に考えているようで、「障害者の学び」のプログラムに対し、「何を学ばせることができるだろうか」との思いが先立つようだ。しかも、対象が、精神障がい者と知的障がい者と聞くと、この二つのカテゴリーの中にいる人の想像も混乱してしまい、対応となるとなおさら、戸惑うことになる。

不安を解消するために、やるべきことは、説明の繰り返しと対話しかない、と考えた。ボランティアの方々に全体で説明し、個別にも対応し、不安を解消しながら、当日は日常的に支援活動を行っている支援者がサポートスタッフとして障がい者5人に対し1人の割合で配置させ、ボランティアと障がい者の方々の媒介役になることも約束した。

この準備をして迎えた当日。自己紹介から始まったプログラムは、街歩きをする段階になれば、媒介役がいなくてもボランティアと障がい者が直接コミュニケーションを取り始め、それは自然の対話としてグループ内に広がり、気づけば当初の不安は解消されるに至った。

やはり、最初のハードル、経験がないところから、何かを始めるのはどんなことでも難しい。障がい者との交流もそうである。やればできる、のである。

◆壁をなくすために

このプログラムが終了した翌日、オープンキャンパスを後援する和光市の担当者から連絡があり、協力したボランティアの方々が代わるがわるに「素晴らしい取り組みだ」「もっと拡充するべきだ」と言いに来たという。やはり、これはうれしい反応だ。ここから交流が広がり、モデル化する可能性が高まっていく。

それでも反省はある。

一応の成功で終わりながらも、いくつかの問題は指摘された。

「とても楽しかったけど、あの一言は……」と訴えてきたのは、精神障がいの女性。一緒におしゃべりし散策している合間、その彼女はいつものように薬をのんだところ、ボランティアの男性は「あれ、どこか悪いの?」と聞いてきたという。

楽しく交流していたから、彼女に疾患があることを忘れたのであろう。悪気のない一言であろうが、多くの疾患者はその言葉に傷つく。自分があなたとは違って病気があることを実感する瞬間であり、それまで楽しく過ごしていたものに、暗幕がいきなり降りてくるような衝撃となる。だから、「注意してください!」と書くと、「やはり面倒くさい」との反応がきそうなので気が引ける。

この壁をなくすために、どんな言葉があるのだろうか。まだまだ課題は多い。

■いよいよ始まる!2019年4月開学 法定外シャローム大学
http://www.shalom.wess.or.jp/

■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
http://psycure.jp/column/8/

■ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link

■引地達也のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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