п»ї ロシア社会の一断面をみる『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第8回 | ニュース屋台村

ロシア社会の一断面をみる
『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第8回

10月 17日 2014年 文化

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SurroundedByDike(サラウンディッド・バイ・ダイク)

勤務、研修を含め米英滞在17年におよぶ帰国子女ならぬ帰国団塊ど真ん中。銀行定年退職後、外資系法務、広報を経て現在証券会社で英文広報、社員の英語研修を手伝う。休日はせめて足腰だけはと、ジム通いと丹沢、奥多摩の低山登山を心掛ける。

「列車に曲乗りのスリルを味わう子供たち」(Train-surfing is rush for Russians Japan Times 2014年9月1日付AFP時事電)。まず、記事の要約を以下に記す。

18歳になったばかりの男子、サーシャは10歳の時からモスクワ駅とその郊外の自宅最寄り駅の間を毎日、列車にぶら下がる冒険を楽しんでいる。そんな命がけの行為でアドレナリンをたぎらせる少年は彼だけではなくその数が増えている。

ロシア語で’いう「zatseperi」(しがみつき)で遊ぶ彼らはスピード、ルール、権威に挑むことで達成感と誇りを感じ誰にも止められない、と自慢する。夢中になると昼夜を問わずこの曲乗りにふけり、学校にも行かなかったという。ある友達が酒を飲んで列車から振り落とされ即死した直後の1週間ほどはやめたが、すぐさま再開したと言う。

彼らが懲罰を受ける恐れを持たずにそのような危険な行為にふけるのは、警官に見つかっても、科せられる罰金が100ルーブル(約3.5ドル)とわずかであることが主因とされ、当局は罰金額を50倍に引き上げようとしている。しかし、サーシャはそれでも彼らの冒険ブームを抑制することにはならないとする。むしろ、彼らの注意が彼ら自身の安全確保よりも警官の目を避けることに集中し、より危険な結果となると予測する。

別の16歳の少年ミーシャは2週間前、ある駅に列車が止まった際にモスクワ警察に追われ飛び降りたが、顔面で着地し血まみれになった。彼はその日帰宅したが、両親には「もっと気をつけろ」と言われただけであった。

ロシアの若者について詳しい社会学者のアレキサンダー・タラソフ氏によると、彼らの曲乗り行為は権威への挑戦とかスポーツではなく国家、社会および家庭が彼らに十分な注意を払わず放置しているために暇つぶしをしているだけと見なす。

「ソビエト時代には共産党青年グループの制度の下、スポーツや芸術プログラムが主宰されたが、今ではそのような活動は存在しない」とタラソフ氏は言う。

プーチン大統領は頻繁によきソ連時代を懐古するのであるが、彼は以前の青少年の体力養成プログラムである“労働と国防に備えよう”キャンペーン(Ready for Labor and Defense)を復活させようとしている。しかし、タラソフ氏は「そのような復古の試みは問題の本質的解決にはならない」と話す。そして、「真に問題であるのは、ソ連崩壊後の1990年代に成人したアル中や麻薬中毒の両親の下で貧しい家庭の子供たちがまともな子育てを受けていないことである。その課題に向き合わねば解決されない」と指摘する。

◆粗野な行為をする青少年がやがて国を動かす

この英文記事を読んで、私が以下のように感じた。

ソ連崩壊は西側世界にとって歴史上の快挙であったはずであり、時のリーダー、ゴルバチョフ氏はノーベル平和賞を受賞している。しかし、この記事が映し出しているのは、その後の社会のなかなか重い現実の部分描写である。

超過保護、安全志向の日本社会では若者がいかに無謀になろうとしても、こんな行為は不可能である。想像を絶する粗野な行為をする青少年が大人になり、リーダーにならずとも選挙民となって我らが隣国を動かすのである。

感覚だけで議論をしてはいけないが、何か空恐ろしいものを感ずるのである。

※今回紹介した英文記事へのリンク
http://www.japantimes.co.jp/news/2014/08/31/world/russian-train-surfers-extreme-sport-or-social-problem/

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