東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、郵便で銃弾が送られてきた会社のトラブルについてご紹介します。ジェトロ(日本貿易振興機構)からのご紹介でいらっしゃったY社さんが物々しく取り出したのは、何の変哲もない封筒です。中身を見ると、なんと銃弾が1発入っています。長い歴史を持つ自動車部品メーカーとして、世界中に展開しているごく普通の日本企業です。一体全体、どこから何のためにこんな物が送られてきたのでしょうか。
そもそもの発端は、スクラップ業者の選定時にさかのぼります。Y社はいくつかの業者の中で見積もりを取り、買い取り価格がずば抜けて高い業者を選びました。定期的に他の業者の価格を調査してもこんなに高い金額を提示する業者はありません。サービスにも問題なく大満足です。重さによる課金の契約なので、もちろん毎回きちんと業者が計量してくれています。はかりは業者が毎回用意してくれるので手間もかかりません。
いつまでも続くかに見えた「蜜月」ですが、同業他社とのふとした会話から疑問が生じます。「いくら何でもキロ当たりの買い取り値段が高すぎるんじゃないの? どこかおかしいんじゃないの? ちゃんと自分たちで量ってる?」
◆はかりに細工 不正が発覚
早速はかりを調達して業者が来る前に自社で計量してみることにしました。いつもどおりに計量に来た業者の数字を見ると……何と明らかに、事前に自分たちで量った重さよりも重量が少なくなっています。はかりに細工がしてあり、重量を実際よりも小さく表示することで、金額をごまかしていたのです。キロ当たりの値段の高さにひかれて、うまくだまされてしまったという次第です。
もちろん、それからが大変な騒ぎです。業者の選定時に不正は無かったのか、社内の担当の部署はこのからくりを知っていたのか、知らなかったのか。新しい業者はどのように選定すればよいのか。社内を大嵐が吹き荒れる最中に送られてきたのが、冒頭に紹介した、封筒に入った1発の銃弾です。Y社の日本人マネージングディレクター(MD)が真青になって弊社に飛び込んでいらっしゃいました。
◆甘い話には特に注意
銃弾送付の意図は間違いなく「脅し」です。早急に警察に相談して、手続きを取ります。同時に警備会社の見直しも行い、公正な業者入札により新しい業者も選定できました。
嵐は収まりましたが大変恐ろしい思いをした上に、業務にも甚大な支障をきたしました。とにもかくにも最初からきちんとした仕組み・ルールを作った上で、あらゆる可能性を考えて甘い話には特に注意しなければなりません。どんなに気をつけても、気をつけ過ぎるということはありません。
ついでになりますが、警察・役所とのやり取りで、アンダーテーブル(ティーマネーとも呼ばれるいわゆる賄賂)につい頼りたくなる気持ちは分からなくもありませんが、絶対にお勧めしません。一度不正なお金が支払った会社は、彼らにとっては「お得意様」です。その後も何かと理由をつけては会社を訪れ、お金をせびられることになるのは必至です。
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