迎洋一郎(むかえ・よういちろう)
1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。
前回は原価低減への取り組み事例(その1)として、「工程の流れ化」について紹介した。その最大の狙いは、工程の連結によって工程間に最小の標準手持ち量を決め、その量が最大、最小超え現象を捉え、ムダ、ムラ、ムリの顕在化につなげて改善を進めることである。
今回は「工程の流れ化」に基づき、各工程の加工時間(サイクルタイム=C/T)と、その作業手順の標準化について述べたい。そのうえで、何秒で1本(1個)造らなければならないか(タクトタイム=T/T)の関係を図表にして課題を明らかにし、適正人員配置など改善に結びつける手法について説明したい。
◆タクトタイム(T/T)をまず計算する
タクトタイム(T/T)とは、製品1本(個)を何秒で加工すれば、所定時間に予定数が完了するのかを定めた標準加工時間である。次の事例は、ある自動車ゴム部品加工工程を参考にした事例である。
A:1日の正味稼働時間を設定する(各会社の勤務時間がベースとなる)
①稼動設定時間=8時間(480分)
②計画停止時間=30分(点呼、点検、清掃等)
③正味稼働時間=450分(480分-30分)
B:加工工程別の生産必要数量
①(a)ライン 5035本
②(b)ライン 4370本
③(C)ライン 95本(bライン印字後、組み付け、梱包)
C:各工程のタクトタイム(T/T)を決める
①(a)ライン (450分×60秒) ÷ 5035本 =5.36秒
②(b)ライン (450分×60秒) ÷ 4370本 =6.05秒
③(c)ライン (450分×60秒) ÷ 95本 =284.21秒
◆加工工程ごとの標準作業(作業手順と加工時間)を決める
新しい流れ化した工程に従って、ライン(a) (b) (c)の標準作業書を作成する。この標準作業により、各工程の一作業ごとの加工時間(C/T)が明確となる。
◆タクトタイム(T/T)と加工時間(C/T)を図表化し課題を明らかにする
具体的に、今回のケースでの課題は二つ。一つ目は(b)ラインで印字作業の加工時間(C/T)が5.7秒オーバーすること。二つ目は(c)ラインで合計35.5秒の手余り時間(何も作業しない時間)が発生することだ。
◆タクトタイムに合わせた人員配置の設定
①(b)ラインの印字工程に2台の機械を連結し、従来1人で行っていたワークの右側と左側の両面印字を2人の作業員の流れ作業にすることにより、作業員1人当たりの加工時間(C/T)を短縮する。
具体的には従来作業員1人で11.75秒かかっていた加工時間(C/T)は2人に分割することでほぼ半分になる。さらに流れ作業化により、一部の作業(標準作業表(b)ライン印字作業右側の5,6)が不要となり加工時間全体の削減につながる
②(c)ラインの作業の組み替えと手余り時間の有効活用
まず組立と梱包を1人の作業員でやることとする。
しかしながらまだタクトタイムと作業時間には大きな開きがある。この作業員の手余り時間については、部品供給係(通称部給マン)として活用する。
一日の手余り時間
⇒248.7秒×95本=6.6時間
従って裁断への部品の供給および梱包工程への空BOX供給や完成品BOXの引き取り、組付部品の品揃えなど、非サイクリック(非通常)的に発生する 作業を応援することで、全体の流れの効率化を高める
◆改善の効果と更なる改善への取り組み
今回の取り組みにより、タクトタイム(T/T)と加工時間(C/T)が明確になり、納得した生産加工体制が出来る。具体的には、従来11人の2交代制(総人員22人)で行っていた工程が半分の1シフトで出来るようになった。
もちろん工程は、予期せぬトラブルも発生するので、その時は残業などで対応し、後にトラブルの再発防止必ず行うことで可動率はさらに向上していく。工程の流れ化ができると、機械化、自動化へ挑戦していく下地ができたと言えよう。
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