東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、建築関係のトラブルについてご紹介します。ある日、A社から内装工事のトラブルでご連絡を頂きました。オフィス・ショールームの内装をB社に依頼しましたが、作業の途中で作業員が来なくなってしまったというご相談です。
◆些細な取引でも書面に残す
まずは一連の流れを聞いた上で、弁護士による対応を検討するために契約書を見せてもらいました。契約書は何百万バーツかの大きな取引にもかかわらず、4枚程度のものでした。建築図面はありましたが、仕様書などはなく、使われていた素材も想定されていたものより低級なものに変わっていました。しかし、元々打ち合わせで話されていた素材を確定する証拠もありませんでした。
このままでは予定通りの施工、引き渡しはあり得ません。オフィス・ショールームのオープンが予定より遅れてしまうのが必至ですし、何よりも安全面に問題がないのか心配になります。
本来、定期的に定点確認のために現場へ行って写真を撮るなど、内装業者に全て依存せずに進捗(しんちょく)具合を管理することが理想です。業者が来なくなったなどの事態に陥っても現場で撮った写真が進捗状況の記録となり、証拠として使うことが出来ます。
A社は別の内装業者を雇うことを検討していますが、必要な書類が作成されていないため、別の会社への引き継ぎも一筋縄ではいきません。手元にある契約書では、引き渡しが遅れた場合についての項目はなく、何をどこまで請求できるのかもわからない状態です。
付き合いの長い顧客や信用があると思われる相手先の場合、つい安心して契約書を締結せずに取引をしてしまうことなどもあるかと思います。しかし、トラブルを未然に防ぐには、どのような些細(ささい)な取引でも逐次契約書を作成し、お互い内容を確認して書面に残すことをお勧めしております。
契約書の内容は、基本的には締結する当事者が納得をしていれば、自由に決めることが出来ますが、相手が大きな会社や法務セクションがしっかりしている場合には、契約書の文言変更などのリクエストは難しいかもしれません。しかし、そのような場合でも不明瞭な点を明らかにし、自社にとって不利な点については、納得がいくまで話し合いをしなければなりません。
法律事務所などで、契約書の作成以外にも、ネガティブチェックを行っておりますので、署名前に相談をされると安心です。
◆用語の定義は統一されているか
自社内で確認をする場合、確認するポイントは次の通りです。まず、契約書に使用されている用語の定義は明確で統一されているかどうかが重要です。例えば「製品A」と「製品A等」では意味する範囲が違ってきます。「等」の範囲が明確に記載されていないと、それに何が含まれるかについて後々問題になることがあります。
また、「製品」「商品」「対象商品」などの、別の意味に解釈ができる可能性がある文言も、問題になることがありますので、ご注意下さい。意味が同じであれば、同じ文言で統一されていなければ良い契約書とは言えません。
さらに、通常の売買契約書には必要ありませんが、不動産賃貸契約書や請負契約書などは、収入印紙が必要となる場合がありますので、ご注意下さい。また、裁判ではタイ語の契約書が必要となりますので、外国人同士の取引の際でもタイ語の契約書をメインに作成することをお勧めいたします。
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