п»ї 外国投資の回復に向けてPRを『夜明け前のパキスタンから』第6回 | ニュース屋台村

外国投資の回復に向けてPRを
『夜明け前のパキスタンから』第6回

10月 02日 2015年 国際

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北見 創(きたみ・そう)

日本貿易振興機構(ジェトロ)カラチ事務所に勤務。ジェトロに入構後、海外調査部アジア大洋州課、大阪本部ビジネス情報サービス課を経て、2015年1月からパキスタン駐在。

パキスタンへの外国直接投資は低迷を続けており、2014/15年度は13年ぶりの低水準となった。約2億人の人口と、世界43位の経済規模を持ち、2072年まで人口ボーナス期が続くと見込まれる有望市場にもかかわらず、それに見合った評価を受けていない。治安改善の兆し、格付けの引き上げという好材料がそろう今年度は、投資誘致に力を入れて欲しいところだ。

◆低迷を続ける外国直接投資

パキスタンの2014/15年度(7月~翌6月)の対内直接投資額は、前年度比58%減の7.9億ドルと、01/02年度以来の低水準となった。現政権は外国投資誘致を積極的に行うと明言しているものの、外国企業のパキスタンへの投資意欲は低調といわざるをえないのが現実だ。

2000年代は9・11テロ以来、米国の対アフガン戦争への最前線基地となるパキスタンに資金が流入しており、景気もよく、外国直接投資も進んでいた。しかし、リーマン・ショックの起きた2008/09年度を境に、パキスタンへの直接投資・間接投資は急速に失速し、長らく低迷の時期を迎えている。

2010年代に入り、投資国として中国が台頭し、米国が相対的に存在感を弱めているという傾向にはあるものの、経済規模や将来的な潜在性に比して外国投資の規模は少なく、過小評価されているという感は否めない。

◆「クリティカルマス市場」パキスタン

下図は、国際通貨基金(IMF)と国連貿易開発会議(UNCTAD)のデータから、1995年~2013年までの経済規模と累積投資残高を散布図にしたものである。パキスタンの名目国内総生産(GDP、2013年)は2300億ドル程度で、ベトナム、エジプト、ナイジェリアなどと比べて、経済規模に見合ったほどの投資がされていないという印象を受ける。

さらに、パキスタンへの直接投資はこれまで欧米企業が主体であり、日本企業の直接投資に至っては、自動車メーカーなど一部の大手企業に限られている。

ジェトロが毎年発表している「世界貿易投資報告(2015年版、注1)」では、市場規模も大きく、成長率も高いにもかかわらず、欧米企業などと比較して日本企業の参入が十分進んでいない国を「クリティカルマス市場(注2)」と定義し、その一つにパキスタンを挙げている。

同報告によると、パキスタンの人口ボーナス期(生産年齢人口/従属年齢人口が2倍以上の期間と定義)は2072年まで続き、今後、長期にわたって成長が見込まれる数少ない国の一つである。しかし、パキスタンの対内直接投資残高のうち、英国が18%、米国が11%、中国が6%を占めており、日本は5%で同3カ国に後れを取っている。

◆投資誘致はPRに課題

日本を含む外国企業による直接投資が進まない要因としては、治安やイメージの悪さが第一に挙げられるが、投資誘致の方法にも課題は多い。パキスタンの情報が少ない上、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国のようなワンストップ・サービスや投資優遇措置が受けられないからだ。パキスタンにも投資庁(BOI)があるが、投資優遇税制を管轄するのは歳入庁(FBR)、会社設立は商業省と縦割りになってしまっている。

例えば、IMFから徴税強化を求められる中、政府は法人税率を35%から年間1%ずつ引き下げ、現在では32%になっているが、国外にこうした変化を知る企業は少ない。

また、投資インセンティブとして、(1)外資規制ほぼ無し(2)新規投資に対する5年間の法人税免除〔所得税法65条D〕、または20%の低減税率〔同法の第2付属書18条A〕(3)追加投資(設備や機械)費用の10~100%相当の税金免除〔同法65条B、65条E〕(4)特別経済区内への投資企業に対する10年間の法人税免除〔SEZ法〕――などを用意しているが、細かく法文を読まなければ理解しづらく、運用も不透明のため、十分にPRできていない。

日本でのパキスタン政府のPR活動としては、輸出振興は積極的である一方、投資誘致は十分であるとは言いづらい。制度上は手厚い外資優遇パッケージを用意しているので、政府が一丸となってアピールするべきであろう。

直近の治安状況は、武装勢力の掃討作戦が功を奏し、若干の改善を見せている。また、今年6月にはムーディーズが格付けを引き上げており、追い風となる材料も多い。今後の投資誘致増に期待がかかっている。

(注1)http://www.jetro.go.jp/world/gtir/2015.htmlで閲覧可能

(注2)パキスタンの他にインド、バングラデシュ、トルコ、ナイジェリア、南アフリカ共和国、エジプト、メキシコ、ブラジル、コロンビアなど

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