引地達也(ひきち・たつや)
コミュニケーション基礎研究会代表。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長などを経て、株式会社LVP等設立。東日本大震災直後から「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。
◆初詣の列
引っ越し先の家屋のアンテナ不備なのか、引っ越した年末以来、テレビが映らない。年末年始の騒々しい番組を見ることもないので、そのままにしておき、新たな街の空気を楽しむことにした。テレビとともに心の雑音が消えたようで心地が良い。そして年が明けて近所の神社に元朝参りにいくと、夜店もない静かな佇(たたず)まいの、普段は通り過ぎてしまうような神社なのに、長蛇の列になっている。
よく見ると、お宮前で1人か2人ずつ、木の棒の先に折った白い紙を束ねた祓具(はらえぐ)を左右に振り、お祓(はら)いを施している。地元自治会の方々が参拝者に祓具でのお祓いとお神酒(みき)を授けるのが、この神社の仕来(しきた)りらしい。寒空の中、人は静かに列をなし、この仕来りに従う。
この合意形成は同じ文化圏で同じ地域で生まれ、もしくは生活する者どうしの相互理解で成り立つ。これが暗黙の地域とのコミュニケーション。この長蛇の列に加わり、黙ってその仕来りに従うことがコミュニケーションの第一歩である。
列に身を寄せながら、私たちはこれまでも、これからも、この多くのコミュニケーションの中で生きて、死んでいくのだ、との感慨の中、年は明けていった。
私は昨年末、「コミュニケーション基礎研究会」を設立し、そのようなコミュニケーションの切り口から人を活かし、社会を活気づけたいという思いを形にしようと日々悩んでいるが、少しだけ、自分なりに確信していることがある。それは「人を幸せにするコミュニケーション」を考え、実践することは、結局は「自分を幸せにするコミュニケーション」につながる、と。ホームページに掲載した「あいさつ文」では、その思いを表現した。
以下ホームページ引用(http://communicationresearch.jimdo.com/)
人を幸せにするコミュニケーション
人を大切にするコミュニケーション
人を思いやるコミュニケーション
人を助けるコミュニケーション
人を守るコミュニケーション
人を活かすコミュニケーション
人を育むコミュニケーション
人が生きるコミュニケーション
これは私が目指しているコミュニケーションのかたちです。
しかし、「人」と言うと、他人に何かを「しなければいけない」と思って、
気負ってしまいます。
そもそも、他人とのコミュニケーションで悩んでいる人に、
いきなり「人」を意識させてしまうと、
嫌気がさす気持ちにもなるでしょう。
よくわかります。
それでは、「人」を「自分」に置き換えてみましょう。
自分を幸せにするコミュニケーション
自分を大切にするコミュニケーション
自分を思いやるコミュニケーション
自分を助けるコミュニケーション
自分を守るコミュニケーション
自分を活かすコミュニケーション
自分を育むコミュニケーション
自分が生きるコミュニケーション
どうでしょうか。
少し気が楽になってでしょうか。
ここからはじめてみましょう。
このフレーズ一つひとつが、
私たちが目指すコミュニケーションの輪郭です。
ただ、これらを形作るのは至難の業です。
私はこれまで記者としての取材現場、
コンサルタントとしての経営課題の解決現場、
営業実績を上げるための消費者との営業現場、
社会活動においては震災の修羅場や多くの喜怒哀楽の感情とともに、
コミュニケーションを繰り返してきました。
自分なりに全身で人の気持ちを受け止めて、
全力で答えを出そうと取り組んできたつもりですが、
失敗も数知れません。
それでも、こうして幸せに生きているのは、
やはり多くのコミュニケーションに助けられているから。
研究会では、この経験を活かして、
コミュニケーション領域での実践と研究の中から、
社会で利用しやすい形に抽出してまいります。
常に社会は変化していきますから、最終結論はありませんが、
現在、私が提供する最も有効な形を模索してまいります。
よきコミュニケーションとともに、
よき仲間とともに、
そして自分を育み、幸せにしていこうとする
すべての人とともに。
(引用終わり)
◆失敗談も盛り込んで
講演などでコミュニケーションについて話す時、私の数多い失敗の話に共感を持たれることが多い。きっと登壇している人も自分と同じ失敗している、という安心感を与えるからなのだろう。だから、今後、コミュニケーションに関する各論を展開する中で、失敗談も積極的に盛り込んでいこうと思う。
先ほどの「人を幸せにするコミュニケーション」から「人が生きるコミュニケーション」までの8項目もそれぞれ個別に説明し、実際の生活に役立てる内容にしていきたい。同時に、国際社会の諸問題や社会情勢の現実の問題を見据えながら、マス向けにも個人向けにも通用するコミュニケーションの形を、ここでも模索してきたい。
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