п»ї 日本のセックス産業の変化とその背景 『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第34回 | ニュース屋台村

日本のセックス産業の変化とその背景
『時事英語―ご存知でしたか?世界ではこんなことが話題』第34回

4月 17日 2018年 文化

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SurroundedByDike(サラウンディッド・バイ・ダイク)

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勤務、研修を含め米英滞在17年におよぶ帰国子女ならぬ帰国団塊ど真ん中。銀行定年退職後、外資系法務、広報を経て現在証券会社で英文広報、社員の英語研修を手伝う。休日はせめて足腰だけはと、ジム通いと丹沢、奥多摩の低山登山を心掛ける。

久しぶりに下ネタに絡んだ論説を紹介する。

それにしても、エコノミストのような世界に名だたる政治経済誌が取り上げるにしては、またしても奇異な感じではある。しかし、結構よく調べている。わざわざこんなことまで世界中に知らしめてくれなくてもよいのにとは思うが、本当は深刻な題材はあるのだけれど世界の読者に売れるネタが今、わが国にはないのであろう。

よく読むと、ストリップを接待に使う、などいくぶん誇張もあり、そこまで言うかの感なきにしもあらずではある。しかし、我が国のことをこのように論じたい読者がいるから書かれるのである。きっとそれは日本が十分に成熟した文明国であると捉えられていることの裏返しであろうから、卑下することはない。

そうは言っても変わった記事である。以下、全訳を掲げる。

◆ソフトなサービスに人気、高齢者も

日本の性産業は性的でなくなりつつある
人口高齢化と長引く経済停滞がその業界の様相を変貌させた
(英誌エコノミスト、アジア印刷版 2018年4月5日 東京発)

17世紀、東京(当時は江戸と呼ばれた)の北東部に位置する吉原は多数存在した赤線地帯の一つであった。女娼男娼の両方があらゆるサービス提供をうたいながら通りを闊歩(かっぽ)したのである。そして400年のちの今でも、吉原は性ビジネスの中心として残り続けてきた。しかしながら、顧客の欲求はあからさまなものではなくなりつつある。「女帝」などの名を冠する20以上に及ぶソープランドではランジェリ―をまとう女性による“しごき”サービスをおよそ1万円(94米ドル)で提供している。

吉原の変貌(へんぼう)は日本の性産業の広範に及ぶ変化を映し出すものである。信用に足るデータは入手できにくいが、膣性交(これは違法ではあるが広く提供されている)とか口腔セックス(これは合法)のようなハードなものに代わって、よりソフトなサービスが人気を得ている。日本の性ビジネスは長く性交だけではなく親密さとか恋愛を願望するニーズに応えるものでもあった、と社会学者の山田昌弘氏(中央大学文学部教授)は述べているが、実際それに応えるサービスも増えている。

例をとると、飲み物が供され女性に優しくされる「キャバクラ」とか、あるいは手術医に扮(ふん)したり、列車内の舞台設定のもとで男性客が“空想”の性的享楽世界を自ら演じて浸ったり(しかし少なくとも建前上は最終的な性的所作には至らない)して楽しむ「イメージクラブ」などが増えているのだ。「オナクラ」ショップでは女性が凝視するなか男性客に手淫をさせている。ポルノ産業も堅調である。

よりつつましい性的サービスへのシフトは、その面では過度にお堅いアメリカ占領軍の軍人たちが、日本の当局者が抱いていたよりまともな判断を押し切り、1958年には金銭支払いを見返りに供する膣性交サービスを禁ずるに至る一連の動きが始まった第2次世界大戦直後から起きていた。しかし、近年人口統計上と経済面での要因がこの分野での変化を加速している。日本では人口の約28%が65歳以上で占められ、それは世界で類を見ない高比率である。高齢者がかってより長く健康で過ごし、そしてより「ソフトで露骨でないサービス」を求めている、と東京都内にある矢野経済研究所の松島勝人氏は述べる。

高齢者だからといって慎まない

最近発行の週刊ポストは幾人かの年配男性たちが「ただ若い子たちとお話しするため」にソープランドに行くさまを記事にしている。女性を広島の個人宅とかホテルに派遣するデリヘリビジネスのオーナーは、主たる顧客層は年配者たちが20代の若者たちにとって代わったと言う。彼らは性交渉ではなく若い女性を仲間としてただ一緒に時間を過ごしたいだけなのだと話す。

風俗情報誌「俺の旅」の編集者である生駒明氏によれば、現在、彼の雑誌は主に50代、60代の男性読者に照準を合わせいるとのこと。掲載の写真は控えめであり、性器とか乳房を多く載せていない。杖をついて、アダルトグッズのチェーン店エムズの出口あたりをうろついている老人は自分に向けた品ぞろえが豊富なことを知っているのであろう。具体例を一つ挙げるならば手塚マオリみたいなスターが登場する「シルバーポルノ」である。彼女は9年のキャリアののち昨年80歳で引退した。

セックス産業はまた同時に、性欲を満たすことへの興味がさほど強くない若者たちに向けたビジネスの適合も行っている。昔、若者は文字通りの解釈としては新しい筆を使って文字を書く「筆おろし」として知られる童貞喪失は、吉原の売春婦の助けを借りるのが普通であった。今や童貞はしばしば無期限にそのままである。最近の調査では未婚男性の42%、未婚女性の44%が35歳まで性体験を持たないとされている(日本人男性の50%以上および女性の60%以上が30から34歳までに結婚する)。多くの若者がセックスを面倒くさいと考えている、と前述の山田氏は言う。そのような若者向けのサービスはしばしば「自分で済ます―疑似セックス」に対応したものになっていく、と松島氏は話す。裸の女性とおしゃべりができるウェブサイトとかアダルトビデオを見ることができるビデオパーラーのように自慰をより楽しくさせるサービスがブームになっている。

そのような変化を日本人男性の自信喪失の兆候とみなしている人たちもいる。日本のメディアは独立心の強い女性を恐れる「草食男子」を話題にする。フリルのついたエプロンをした女性がスプーンですくった食べ物を、彼女が息を吹きかけ冷ましてからお客の口に運んでくれるメイドカフェは旅行者を含む男性客であふれかえっている。「添い寝カフェ」あるいは「抱っこカフェ」ではお客がカネを払って女の子の傍らに横たわるのである。追加料金を払えば(あやすように)そっと体を叩き続けてくれたり、じっと目を見つめてくれたりする。社会学者たちはまた、性産業のもう一つのトレンドも自信喪失によるものと考えている。少女崇拝である。業界では男性客に女生徒の格好をした女性と一緒に歩いたり、横たわらせたりする業者も現れている。そしてそのような業務は、従事する女性が本当の学生年齢でなければ合法的である。

性産業におけるこのような変化には、経済の要因もその役割の一端を担っているのであろう。大量の現金がばらまかれたバブルの時代は通り過ぎた。デリヘルビジネスのオーナーは言う。セックスは高価なものだが、メイドカフェで満足する限りわずか千円で済むのだと。さりながら伝統的性産業が落ち目だと言っても、成人向け娯楽産業全体が凋落(ちょうらく)しているわけではない。矢野経済研究所の調査によると、日本の高齢化と人口減少にもかかわらず、性的娯楽関連施設とサービスは、2014年には2.14%(前年比)成長しており、同じく関連ショップの売り上げの減少は1%(同)にとどまっている。世界最大のポルノウェブサイトPornhubによれば、日本でのその種の商品の流通量は世界で4番目に多いという。

前述の編集者、生駒氏はその業界の存在が世界の他地域と比べて文化的により受け入れられているからだと言う。(日本では)ポルノ雑誌がほとんどのコンビニで売られているのと同時に多くの企業ではストリップクラブと同様な場所がいまだに接待の場所として適切であるとみなしているのである。そして、日本人男性が(自分の体の一部を)貫通させるセックスに興味を失っているかどうかはわからないまでも、彼らが創造性に満ちたそれに代わるものに不自由をきたすことはない。(以上、全訳終わり)

【訳者注】この記事は、印刷版アジアセクションに「More smutty than slutty」の見出しのもと掲載されている。このフレーズの正確な訳出ができないので省略する。「smutty」「slutty」とも「わいせつ」「性モラルの低い」などの意味で単なる語呂合わせのようにも思えるが、この二つの単語を併記する意味は断定できない。

※今回紹介した英文記事へのリンク
https://www.economist.com/news/asia/21740042-ageing-population-and-protracted-economic-slump-have-changed-face-business-japans

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