п»ї 日産スプリング(タイランド)日系進出企業紹介『おじゃまします』第6回 | ニュース屋台村

日産スプリング(タイランド)
日系進出企業紹介『おじゃまします』第6回

12月 13日 2013年 経済

LINEで送る
Pocket

バンコク週報

1976年10月創刊のタイで発行する日本語新聞。在タイビジネスマンに向けてタイの政治・経済・社会ニュースから人物紹介まで多彩なコンテンツを提供している。

◆従業員の定着率向上に資格制度導入も

「ダントツ品質宣言! 目指せ、世界一品質」をスローガンにかかげる精密バネメーカー「日産スプリング」の創業は1951年12月。それから半世紀を経た2005年5月、同社は海外初となる子会社「日産スプリング(タイランド)」をタイ・ラヨン県のイースタンシーボード工業団地に設立した。社名に「日産」を冠しているが、日産自動車の系列会社ではなく、創業者が〈日々産ずる、またお客様に日参(ニッサン)することから付けた〉(同社HP)とのことだ。

タイ工場の製造品目は、線ばねと板ばねだ。線ばねは、ブレーキのマスターシリンダー、シートのスライド部、コンソールボックス開閉部、ドラムブレーキ用など自動車での使用が中心となる。一方、板ばねは、カーオーディオ、プリンターなどに用いられる。取引先は在タイ日系企業が8割という。

ばねは自動車の心臓部を構成する重要部品だけに、徹底した品質管理が必要となる。ただ、タイでの品質管理には苦労がつきまとうようだ。

ばねの強さを示す「ばね定数」は目で見ただけでは分らず、試験機での測定が必要となる。ばね定数は日本では高校物理に出てくるが、その理論を覚えるのはタイ人にとって簡単なことではない。さらに、ばね定数が許容差から外れた場合の処置、設計図・工程図の作成などには数年の経験が必要となる。

それだけに、従業員の定着率向上は重要課題だ。しかし、人手不足が深刻なタイ東部では、従業員の離職率の高さが多くの経営者を悩ませている。同社でも最近、入社1カ月以内に辞めていくワーカーが目立つようになった。そのため、社員旅行、年末パーティー、配偶者や子どもにも適用される健康保険導入などでつなぎとめを図っている。

小田切仁志・日産スプリング(タイランド)社長はさらに、「資格制度を導入し、合格者には手当を支給するなど、従業員のモチベーションを高める工夫を検討している」と話す。タイにはばねに関する資格がないので、日本の資格制度をアレンジして適用する。

また、原口武工場長によれば、大学卒、専門学校卒の雇用を進めるため、学校訪問も行い、3、4年前から研修生を積極的に受け入れているという。研修後に就職した例もあるそうだ。

従業員のモチベーションを高める工夫を怠らない小田切仁志社長(左)と原口武工場長

◆コスト削減へ原材料の現地調達に腐心

板ばねの品質の良し悪しを左右するのが金型の精度だ。金型はタイ国内の日系および現地メーカーに依頼している。今では日系金型メーカーで修業したタイ人が独立して会社を立ち上げるケースもあり、現地メーカーのレベルが上がっているという。また、日系と比較して若干安価なため、製品のレベルに合わせて日系とローカルを使い分けている。

部品メーカーには高品質だけでなく、低価格も求められる。コスト削減のため、原材料の現地調達は必要不可欠となる。ただ、タイにはばね材がないため、同社では商社を通じ、日本材、海外材を仕入れる一方で、低価格・高品質の素材入手先の調査・開発を怠らない。

売り上げは前年比で12年度は30%増、13年度は15%増の見込みだ。業績の順調な伸びを背景に昨年9月に工場を移転。新たな生産機械も導入した。そのため、月間生産量は、線ばねは3000万個、板ばねが800万~900万個に伸びた。

タイ以外の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に製造基地を拡張する予定は今のところない。現在の工場建屋面積は3600平方メートルだが、さらに4000平方メートルの余裕があるため、まずここを拡張する。小田切社長は「ばねの現地調達が進んでいるため、まだまだ需要は伸びるだろう」と期待している。

整理の行き届いた清潔な工場

コメント

コメントを残す