引地達也(ひきち・たつや)
一般財団法人福祉教育支援協会専務理事・上席研究員(就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括・ケアメディア推進プロジェクト代表)。コミュニケーション基礎研究会代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など経て現職。
◆学んだ結果
2019年度から法定外シャローム大学が本格的に始まるが、私のような者が「学校を作る」ことに不安感がないわけではない。しかし、やると決めた時に厳格なる教育者の虚像の呪縛(じゅばく)から解放され、分からないから教えを求め乞う愚昧(ぐまい)の徒となり進めようと決めたら、考えるより動け、となった。
文部科学省の「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究」で委託を受けているオープンキャンパスの実施や、公立の特別支援学校や私立の特別支援学校の専攻科、生活支援事業や就労移行支援事業の仕組みを使っての福祉型専攻科などを視察し、そして学びを求める当事者の声を受け、だんだんとシャローム大学の形が見えてきた。
それは「通学型」「訪問型」「連携型」の三つの型を連関して進めるスタイルだ。
◆連携広がりを視野に
通学型は埼玉県和光市の和光市駅前にある小さなキャンパスに通い、同じ学生と集い、交わることも重要な「学び」のスタンダードな型。実際に学費を払い、修了に必要な単位を取得していくことで学びを積んでいくのが日常となる。1週間のうち月曜日から金曜日が通学日であるが、1学年前期の必修講義は「芸術と社会」「科学と社会」「言語と社会」で、そのほかにレクリエーションやフィールドワーク、ゲスト講義を織り交ぜて、学びの楽しさを知ってもらう予定だ。
必修講義の「芸術と社会」は、自画像の制作など自分を「芸術として」表現することにチャレンジしてもらう計画で、「科学と社会」は、大学で遺伝子を研究していた先生が「生命とは何か」を深い視点から教え説いていく。
「言語と社会」はコミュニケーションについての授業だが、これは遠隔地との「連携型」授業ともなる。
その連携型はシャローム大学と名古屋市の見晴台学園大学と新潟市のKINGOカレッジの3者の遠隔地を結んでの講義である。見晴台学園大学は私立の特別支援学校卒業生の学びの場が必要との認識から生まれた専攻科であり、KINGOカレッジは2019年春に開設する福祉型専攻科。4月から毎週水曜日の午前中に三つの地域を結び、「コミュニケーション」をテーマに授業を行う。
最近のテレビ会議システムの利便性にも助けられ、相互発表の場などでここでも交流にチャレンジする。まずは3者での取り組みだが、最近全国で増えている福祉型の専攻科にも広めたいと考えている。さらには全国の就労移行支援事業所が特別支援学校卒業生にとっても、就労支援の訓練とともに必要な「学び」ができるようなコンテンツとして位置づけられないかも考えている。
◆医療ケアの必要な人へ
そして最後の訪問型は、医療ケアが必要な18歳以上の人向けの学びの形である。肢体不自由の生徒が特別支援学校を卒業した後の、学びの場は基本的にはない。
その中で、特別支援学校の元教員らが東京でNPO法人を設立し、訪問授業を行っている事例の紹介を受け、自宅で介護を受けている20代前半の若者や、医療機関にいる青年との学びを体験した。
どちらの方も顔の動きでパソコンを操作することが可能で、パソコンを使っての作業やフェイスブックの記事などの作成などアウトプットを意識したカリキュラムを行っていた。
現在、パソコンがユニバーサル仕様の開発も進み、肢体不自由な人たちもコミュニケーションが可能な状況において、人と交わり、学びあうことは「普通」であるはずだ。しかし、その仕組みはない。
だから行動が必要だ。シャローム大学が訪問型をやることで、1人でも多くの「学べない」人が学べるようになればと思い、試行錯誤しながら行動していきたい。動けば、学べる人は増える、と信じ、念じながら。
■いよいよ始まる!2019年4月開学 法定外シャローム大学
http://www.shalom.wess.or.jp/
■精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
http://psycure.jp/column/8/
■ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link
■引地達也のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/
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