迎洋一郎(むかえ・よういちろう)
1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。
これまで2回にわたり、「標準化の重要性と生産現場における標準化定着への取り組み」についてお話してきた。今回は、会社の間接部門の関わり方について検討してみたい。
製造業の会社は、その規模や業種によって組織のあり方も違ってくる。下に示した会社の組織の主な役割については、一つの事例としてご理解いただきたい。
◆製造会社の組織
◆間接部門の役割
製造会社には、実にさまざまな間接部門が置かれている。これは何のためだろうか。
顧客の要求に基づいて開発された製品は試作の過程を経て量産へと移行されるが、その段階を生産準備期間とし、間接部門はそれぞれの立場で加工標準、規格、検査基準、工程設計という担当がある。間接部門の第一の役割は、製造部門を支えるための以下の標準書を作成し、製造部門の指針を作ることである。
1.技術部門・・・顧客の要求品質の確保、低価格加工条件の技術標準・指示書
2.生産管理・・・効率のよい造り方の工程設計、設備負荷、加工工数、生産数予測
3.安全管理・・・安全に安心して働ける、作業環境標準
4.品質管理・・・悪い物を混入していないか検査し、1個でも後工程に流出させない検査基準書類
間接部門の第二の大きな役割は、製造現場でこうしたことが守られているかどうかの管理責任にある。各部門が標準書だけ作成し、「あとは製造現場の責任」とする姿勢であれば、いつまでたっても会社は良くならない。顧客もしくは市場の要求に沿った製品ができているかの評価、さらには出来ていない場合の問題点の洗い出しを製造部門と共に考えていく必要がある。そのためには、特に品質管理部門が中心になって関係部門と共同で標準の遵守状況を監査しなければならない。
◆標準が守られない会社の実例
では、製造現場の実態はどうなっているのか、私が最近体験した事例を紹介したい。
1.課題
(1)技術標準をそのまま製造標準にしている管理監督者は変化点管理を全くやっていない。
(2)技術担当者は、現場の実態を把握せず想定標準書を作成している。
(3)ワーク表面に全数融合不良が発生しているのに、対策をとらず修正で逃げている。
(4) ビニール袋、紙箱詰めは前年度禁止したが、この工程はまだ使っている。
以上の結果、人的加工原価が260%、機械加工原価が108%になってしまっている。
2.改善すべきこと
売価見積もり、適正配置人員は技術標準をもとに設定しているため、直ちに改善が必要。
(1)この種の類似工程が複数あるが、職場・工場のトップが気づかないため放任している。職場を巡視して標準の遵守状況を把握すべきである。
(2)技術、品質、製造の役割認識が非常に低い。徹底して再教育すべきである。
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