中野靖識(なかの・やすし)
株式会社船井総合研究所上席コンサルタント。メーカーから小売業まで幅広いコンサルティングフィールドを持つ。一般消費者向けの商材を扱う企業の現場レベルでの具体的な販売手法の提案を得意とする。
コンサルティング現場で「企業としての顧客との約束」を再検討していく中で、モノづくりをしている企業の場合には迷いが生じるケースがあります。
昨今のモノづくり企業は、編集力のある会社が「勝つ」傾向が出始めており、「プロダクトアウト」的アプローチを改めて検討しなければならないからです。
現在の事業、製品については顧客(ユーザー)にしっかり聞く、いわゆるニーズサーベイを実施することは当然なのですが、その上でユーザーの先を行かなければウォンツ(Wants)の発掘ができません。
このことは、ウォンツはニーズから引き出すのではなく、ユーザーの先を行く強力なプロダクトアウトをしていくことを通じて勝ち取るべきものであることを示唆しています。
誰かに学ぶのではなく、存在する技術の組み合わせて新たな価値を創造することを徹底するというスタイルでも、ウォンツを勝ち取ることができます。
美術館のキュレーターのように、企業自身が保有している全知識を活用して、アップルのi-Padのごとく最も価値のある組み合わせを生み出して行くのです。
◆財務成果をゴールに置いて考える
このような勝ち方をしていくことを考えると、自分たちがすべき顧客との約束は「ユーザーのニーズに応えるマーケットインの徹底」のではなく「ユーザーに感動を与えるプロダトアウト」ではないかという迷いが生じます。
「顧客との約束」を決めると約束を守るための仕事、組織体制を整備することになりますが、プロダトクアウトを徹底するためには技術開発投資、マーケットインを徹底するためにはマーケティング投資への資源配分が大きくなるというように、戦略まで決まっていくからです。
モノづくり企業の根幹に関わる領域でもありますが、このような場合、事業としての成功、つまり財務成果をそのゴールに置いて考えると、意見がまとまりやすくなります。
いずれにせよ、自社が選択した約束を起点として、戦略全体を整えて、社内外の理解と納得を勝ち取ることがポイントになりますので、皆様の企業内で検討される場合には腰をすえた議論をお勧めします。
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