п»ї 顧客に対する約束『経営コンサルタントの視点』 | ニュース屋台村

顧客に対する約束
『経営コンサルタントの視点』

8月 15日 2013年 経済

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中野靖識(なかの・やすし)

株式会社船井総合研究所上席コンサルタント。メーカーから小売業まで幅広いコンサルティングフィールドを持つ。一般消費者向けの商材を扱う企業の現場レベルでの具体的な販売手法の提案を得意とする。

日本国内の小売市場を商業統計データと合わせて見ていくと、人口動態(人数)と強い相関性があり、今後の人口減少予測と連動して縮小していく可能性が大きいと考えられます。少子高齢化による人口減少という市場環境変化は、誰も体験したことがなく、従来の成功方程式がそのままでは通用しにくい状況にあるのが今と言えるでしょう。

企業は、この大きな時代の流れを踏まえて自社が置かれている状況を正しく認識した上で取り組むべき課題を明確にし、優先順位に基づいて絞り込み、スピーディーに対応することが必要不可欠になってきました。それを実行していく上で、私の部門では、企業として果たすべき『顧客に対する約束』を再確認することから着手することを推奨しています。

◆顧客の真のニーズを徹底的に分析する

ここで言う『顧客に対する約束』は、全ての業務の起点となるべきもので、自社の顧客が望んでいることをわかりやすく表した“約束すべき対応”と考えて下さい。

皆さんもぜひ自分自身に問いかけてみて下さい。

「お客さまが(自分の所属する)会社に期待していることは何でしょうか?」。この質問に対して簡潔かつ明瞭に答えられるようであれば、きっと『顧客に対する約束』が明確に定義されている会社だと思われます。

ひとつコンサルティング事例を紹介しましょう。

A社は、完成品を小売業者に直接納品している小型機械メーカーです。ある時A社は、顧客である小売業者の「真のニーズは何だろう?」という疑問を解決すべく調査をすることになりました。結果、「A社の商品を取り扱うことで、その商品が関わる部門全体の売上および利益が上がること」が最も期待されていることだと判明しました。

これをきっかけに、A社の仕事が変わっていきます。

まず、商品を通じて取引顧客の部門売上および利益をいかに上げるかを徹底的に考え、実際の業務におとしていく組織体制を整備しました。自社顧客の先にいるエンドユーザーの声を収集・整理する機能、商圏構造を把握する機能、取り扱い担当者(バイヤーおよび販売員)の声を収集・整理する機能など、必要だと思われる機能を新組織に整備し、情報収集と分析を繰り返すことで、「A社商品を取り扱う部門の売上および利益を上げる」体制が強化されていきました。

その情報を活用して、POPなどの店頭支援ツールを作成するだけではなく、個店別に売場づくりを支える店頭支援巡回を女性パートが推進する体制が整いました。

◆お客さまの期待に添う「約束」

「お客さまの期待」をしっかりと把握し、それに応えるためにやるべき仕事、とるべき組織体制を明確にしながら実績を出すことで、A社は本当の意味ですべき『顧客に対する約束』を鮮明に定義することができました。この結果、取引先における自社のインストアシェアは想定以上に拡大し、売上が倍増するという成果にまで繋がっていったのです。

「企業を動かす力」の原点である『顧客に対する約束』、今こそじっくりと考えてみて下さい。


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