п»ї 4S管理は全社一丸で取り組む―迎流企業診断と評価(2)『ものづくり一徹本舗』第27回 | ニュース屋台村

4S管理は全社一丸で取り組む―迎流企業診断と評価(2)
『ものづくり一徹本舗』第27回

11月 29日 2017年 経済

LINEで送る
Pocket

迎洋一郎(むかえ・よういちろう)

1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。

職場環境を改善する際に用いられるスローガンとして「5S活動」があります。「整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)」の5項目をいい、日本語での頭文字が「S」になっていることに由来します。いずれも各職場において徹底されるべき事項で、多くの会社では5S活動を推進されていると思いますが、私はあえて、躾(教育・訓練)を除外して「4S」としました。

◆ジャストインタイムに不可欠なこと

「1S」は整理です。整理ができないのは「要らん物をつくるから整理ができん」と教えられました。後述する「ジャストインタイム」(必要な時に、必要な物を、必要な量だけ)のつくりができていない、したがって要らん物は捨ててしまえ。その行為を「整理」ということです。

ところが、要らない物だと判断する決心が固まらず、つい工程の片隅や完成品倉庫にほこりまみれになって何カ月、何年も山積されている光景に出あいます。その結果、つくり過ぎの「冤罪(えんざい)」が顕在化せず、ズルズルと同じ過ちを繰り返すのです。

棚卸しでは、売れない物を資産で計上し、虚偽の利益を計上してしまい、「勘定合って金足りず」に陥る危険さえ起きるのです。したがって工程間や完成品置き場には、標準手持ち量を決めて管理するようにしましょう。

「2S」は整頓です。整頓とは昔は通路に沿って平行か直角に並べることだと教わりましたが、それも安全や美観の点では一理あります。しかし、生産効率から考えると少し定義が変わります。つまり整頓とは、「物(ワーク、パーツ、箱……)は使う順番に、使うだけの量を並べること」だと理解してください。

並べる方については工夫をしてください。工夫とは製造オペレーターの可動率を高めることです。すなわち、①取り置きを少なくする②移動運搬距離を短くする③端数品は正数に整える――ことだと考えて改善するとよいでしょう。

オペレーターを補佐するには、部給マンの配置が必要ですが、部給マンとは、工程ごとの生産指示に従い、10分とか30分とか1時間とか時間を決めて部品や空箱の供給と出来上がったワークや、空になった箱などの引き取りをやり、加工オペレーターの非サイクリック作業を助け、可動率(べきどうりつ=設備を動かしたい時に正常に動いてくれていた時間の割合。「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一氏が考え出した造語)の向上につなげるやり方です。

各社を訪問視察すると、部給マンの配置という理念が徹底されず整頓ができていない職場が大変多く見られました。その結果、オペレーターの周りは、半加工ワーク、組み付けパーツ、加工済みワーク箱などが山済みになっているケースが多かったようです。

加工仕掛け品や完了品の検査待ち多段積みは「整頓の大敵」だと考えましょう。整頓できない職場は、ジャストインタイムのシステムが整備されてないように思います。

◆どんなゴミでもコストがかかっている

「3S」は清潔です。職場の清潔は安全衛生面から考えていいと思います。つまり、安心して快適に仕事ができる職場だということではないでしょうか。

どんな問題が潜んでいるか見てみると、①悪臭が漂う(排気、吸気装置が無い)②床面が滑りやすい(水、油、砂が機械装置からこぼれている)③照明管理ができていない④音が不快なのに発生源対策または保護具の着用ができていない⑤粉末、粉塵、噴油で作業着が汚れている⑥通い箱(ワークやパーツの収納箱)が汚れている――などを意識して管理するとよいでしょう。

「4S」は清掃です。これは単に掃除の人を雇って定期的に掃除をやってます、ではいけません。基本は、清掃しなくてもいつもきれいな職場であって欲しいと思います。

そのためには、ゴミ(ワークやパーツも含む)を落とさない、落ちていたらすぐ拾うことを全社員に徹底させるべきです。以前にも書きましたが、タイや中国ではレストランに行くと、テーブルの下に食中の総菜が散乱しているのをよく見かけます。そうした文化を日系企業は変えなくてはなりません。なぜなら、汚せば掃除人を増やす、増やせば人件費が増えるのは当たり前ですが、そんなことよりも職場に不要な落下物が存在すること自体に改善が必要なのです。どんなゴミでもコストがかかっていると考えることです。

職場に入ってゴミが散乱している所を見ると、ここは標準化とその遵守活動ができていないのではないかと疑われますので、心してください。

なお、落とさない、拾うの行動は、まず会社組織のトップからやって見せるが基本中の基本であるということをアドバイスしておきます。

以上、4Sについて述べましたが、「5S」の躾については、後述する第30回「作業の標準化とその遵守活動」で説明します。

※『ものづくり一徹本舗』過去の関連記事は以下の通り
第26回 トップポリシーとマネジメントは明確に―迎流企業診断と評価(1)
https://www.newsyataimura.com/?p=7030#more-7030

※「ニュース屋台村」過去の関連記事は以下の通り
迎洋一郎さんによる工場診断サービス
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第103回
https://www.newsyataimura.com/?p=6861#more-6861

コメント

コメントを残す