助川成也(すけがわ・せいや)
中央大学経済研究所客員研究員。1998年から2回のタイ駐在で在タイ10年目。現在は主にASEANの経済統合、自由貿易協定(FTA)を企業の利用の立場から調査、解説。著書に「ASEAN経済共同体」(2009年8月/ジェトロ)など多数。
◆禍根を残した2012年のASEAN外相会議
10カ国がまとまることでバーゲニングパワーを発揮してきた東南アジア諸国連合(ASEAN)であるが、前回述べた通り、南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)の領有権を巡り、2012年7月のASEAN外相会議で、当時、議長国であったカンボジアと、中国と領有権争いを演じているベトナム、フィリピンとが対立、ASEAN設立以来初めて共同声明が採択されない事態となった。ASEAN間で、それも共同歩調を合わせて対処するはずの対域外国問題で会議が決裂したことは、「ASEANの脆弱(ぜいじゃく)性」を世界に知らしめることになった。
議長国は、特に対外問題でASEANの声が「一つ」になるよう調整を図る役割を担う。カンボジアは加盟10カ国の中では最も遅い1999年にASEANに加盟した。議長はアルファベット順で輪番制になっており、特別な事情がない限り10年に1度しか回ってこない。そのことから、議長国としての「カンボジアの未熟さ・経験不足」を指摘する声もある。
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