小澤 仁(おざわ・ひとし)
バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住15年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。
タイに進出している日系企業のうち2割強の企業は外国為替リスク(以下為替リスク)への対応を十分にしていない、と私は考えている。2008年のタイ商務省のデータに基づいてバンコック銀行日系企業部が行った在タイ日系企業の業績調査によると、当時約4000社あった、実質的に日本企業が会社の経営に関与しているタイ法人のうち約3分の1は、恒常的赤字もしくは債務超過状態であった。このうち08年の1年間に急速に業績が悪化し債務超過に陥った企業の大半は、この年に進行した急速な円高、バーツ安に伴って表面化した為替損失によるものと思える。業績の悪い企業の約3分の1がこうした為替リスクに伴う損失だったことを考えると、全体でみても2割から3割の企業は為替リスクへの対応が十分でないと推定される。
実際、私ども日系企業部の部員がお客様を訪問しても、為替リスクを放置しているお客様は多い。この要因は以下に大別出来る。
1.為替リスクの存在を全く理解していない。
2.現地に取引銀行を持たないため、為替リスクのヘッジができない。
3.為替リスクについては理解しているが、その恐ろしさについて実感していない。
記事全文>>