助川成也(すけがわ・せいや)
中央大学経済研究所客員研究員。専門は ASEAN経済統合、自由貿易協定(FTA)。2013年10月までタイ駐在。同年12月に『ASEAN経済共同体と日本』(文眞堂)を出版した。
1990年代後半にASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟した後発加盟国CLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)。ベトナムは工業国化に向けて外国投資を順調に受け入れ、先に飛躍、現在はフィリピンやインドネシアなどと同列に扱われることも増えた。残ったCLMは「インフラ不足」「市場規模が矮小」などを理由に外国投資家から長年、投資対象国としては見なされてこず、工業化のきっかけがつかめずにいた。近年、中国や隣国タイの「変調」もあり、ようやくそれら国々にも投資が向かいはじめた。その動きは「チャイナプラスワン」とも「タイプラスワン」とも言われる。本稿では特に「タイプラスワン」に注目し、3回にわたってその現状を報告する。
◆変調をきたすタイ
CLMには、ASEAN域内、特に製造業では隣国タイから投資する事例が増えている。いわゆる「タイプラスワン」の動きである。2012年のASEANの域内外別直接投資受け入れ統計によれば、ASEAN投資受け入れ全体における域内からの割合は18.3%であるが、CLMではその比率が高く23.8%を占めている。特にカンボジアで全体の3分の1、ラオスで4分の1にのぼる。
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