記者M
新聞社勤務。南米と東南アジアに駐在歴13年余。年間120冊を目標に「精選読書」を実行中。座右の銘は「壮志凌雲」。目下の趣味は食べ歩きウオーキング
東京・新宿にある国立競技場の解体作業がこのほど始まった。正式には「国立霞ヶ丘陸上競技場」というが、ラグビー愛好者らは花園(大阪)、秩父宮(東京)と並ぶ「聖地」として、「こくりつ」と呼ぶ。僕のいくつかあるウオーキングコースの中の一つは、1964年(昭和39年)に東京オリンピックの開会式が行われたこの施設の脇を通るが、ここが完成したのが、僕が生まれた58年(昭和33年)だと知ったのは不勉強なことに、解体作業が始まる前に行われた今年5月の見学ツアーに参加した時だった。
◆神々しく輝いて見えた聖火ランナー
形あるものが消失してしまうのは、はかなく哀(かな)しい。自分と同い年のこの施設には、大学対抗陸上やラグビー日本選手権などを観戦するために何度か訪れたことがある。「ラグビーフリーク」と自他ともに認める大学当時の友人は、常にゲームの中心に絡み続けることが求められるポジション「ナンバーエイト」にちなんで息子に「英斗(えいと)」と名付け、大学卒業以来ほぼ毎年、大学選手権や日本選手権の決勝のたびに上京し「こくりつ」で観戦してきた。彼ほどの愛着はないにせよ、僕はいまも時折その脇を歩きながら、数々の劇的な名場面を生み、それを見つめ、大観衆の歓喜とため息を包み込んできたこの競技場に、いたわりのまなざしを送っている。
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