佐藤剛己(さとう・つよき)
企業買収や提携時の相手先デュー・デリジェンス、深掘りのビジネス情報、政治リスク分析などを提供するHummingbird Advisories 代表。シンガポールと東京を拠点に日本、アセアン、オセアニアをカバーする。新聞記者9年、米調査系コンサルティング会社で11年働いた後、起業。グローバルの同業者50か国400社・個人が会員の米国Intellenet日本代表。公認不正検査士、独立行政法人中小企業基盤整備機構・国際化支援アドバイザー。
知人の日本人ビジネスパーソンと、ミャンマーでの贈賄に関する話になった。彼は「これがいいそうですよ」と、自分の腕時計を見せてニヤッと笑った。腕時計を賄賂に贈る、という意味である。もちろん相手の公務員やビジネスパートナーに上げる際には、市場で高く売れるよう箱入り新品でなければならない。日本からの出張で数箱持ってきては臨機応変に手際良く、渡して歩く人もいるという。
東南アジア諸国連合(ASEAN)域内では、贈収賄は「business as usual」という声をよく聞く。米国の贈収賄防止法(FCPA)に代表される、いわば国内法令が域外適用され、米国と関係ない(ように見える)取引でも訴追されるのは筋が取らない、という議論もある。が、先のオーストラリアでの主要20カ国・地域(G20)首脳会議でも、政治腐敗は国家の成長にとっての阻害要因である、という位置づけがなされた。新興国ではテロや貧困と関係してくるだけに、孤立主義的な主張は通らなくなりつつある。
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