引地達也(ひきち・たつや)
仙台市出身。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長などを経て、株式会社LVP(東京)、トリトングローブ株式会社(仙台)設立。東日本大震災直後から被災者と支援者を結ぶ活動「小さな避難所と集落をまわるボランティア」を展開。企業や人を活性化するプログラム「心技体アカデミー」主宰として、人や企業の生きがい、働きがいを提供している。
◆仏壇の前
子どもの頃、私の勉強机は仏壇の目の前にあった。ふすまで仕切られているとはいえ、家の真ん中の通り道に位置する「仏間」である。仏壇の上にあたる欄干には祖父や祖母、戦死した伯父、若くして亡くなった伯母らの遺影がずらりと並び、その遺影のまっすぐなまなざしに見守られて勉強をしてきた。
子どもの頃は、それがいやだった。ふすまではなく、ドアで出入りできる部屋に憧れた。家族のだれの目からも離れ、ましてや先祖の遺影の目が届かない自分の空間。何て素晴らしい場所なんだろうと憧れてみたが、そう思う度、遺影の視線が気になった。今度はバチが当たる、と。だから、机に向かいながら、いつしか、その不気味だった遺影の数々に声をかけ、対話をするようになった。
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