山田厚史(やまだ・あつし)
ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。
社長交代で出直しへと動き出した朝日新聞だが、「ジャーナリズムとして致命的な失敗を犯した」という自覚が新体制に希薄だ。慰安婦問題ではない。福島第一原発事故に絡む「吉田調書」報道だ。記事を取り消し、記者の処分を行ったことは間違いだった。
「間違えたのは、あの記事だったのでは」と思っている人は少なくないだろう。「所長命令に違反、原発撤退」という誤解を招きかねない見出しが付いていた。だが記事の内容に誤りがなかったことは、その後の調査で明らかになった。それがなぜ「記事を取り消すことが妥当」という第三者委員会(報道と人権員会=PRC)の結論になったのか。この過程ににじむ朝日新聞の組織的な弱さを克服しない限り、再生は本物にならない。
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