山田厚史(やまだ・あつし)
ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。
イタリア・フィレンツェで安倍首相は、伊勢志摩サミットに向けた「新三本の矢」を披瀝(ひれき)した。金融・財政・構造改革で世界経済を活性化、といううたい文句がG7首脳声明に盛り込まれる。同行記者を相手にした内輪の記者懇談で、明らかにしたというが、記者の反応は「また三本の矢かよ」。白けた雰囲気だった、という。
◆使い回され過ぎた「三本の矢」
「マス対」と呼ばれるメディア対策に熱心な安倍政権は、政策に中身がなくても包装紙は立派だ。しかし「三本の矢」は使い回され過ぎである。政権登場とともにぶち上げたアベノミクスの解説が、「異次元の金融緩和、機動的な財政出動、経済活性化のための成長戦略」という三本の矢だった。3年前のことである。円安・株高で活況到来か、とはやされたものの期待倒れな結果となり、モデルチェンジされた「新三本の矢」は、①希望を生み出す強い経済(GDP600億円)②夢を紡ぐ子育て支援(希望出生率1・8)③安心につながる社会保障(介護離職ゼロ)――だった。
実現の手立ては不明。絵に描いたモチは「矢ではなく的だ」と揶揄(やゆ)され、このあたりからアベノミクスは迷走が始まった。
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