山田厚史(やまだ・あつし)
ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。
「北方領土は我が国固有の領土」。3月7日の参議院本会議で岸田文雄首相はこう述べた。安倍政権の末期から、この見解は政府から消えていた。交渉相手をおもんぱかって、「我が国の領土だ」と言えなかったのである。
やっと「当たり前のこと」が言えるようになったのは、領土交渉を考えなくてもよくなったから。つまり、北方領土を取り戻す交渉は「終わった」ということである。
ロシアがウクライナに侵攻し、「領土交渉どころではない」という事態は、交渉当事者にとって「もっけの幸い」かもしれない。「ロシア排斥」が世界で叫ばれる今、「交渉手じまい」はやむを得ない、と誰もが考えるだろう。
だが、ロシアとの交渉をつぶさに見ると、「北方領土を取り戻す」という外交は数年前にすでに終わっている。 記事全文>>