山口行治(やまぐち・ゆきはる)
株式会社エルデータサイエンス代表取締役。元ファイザーグローバルR&Dシニアディレクター。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
東京から舞鶴(京都府)まで、往復1900キロのドライブをして、途中、福井県勝山市の恐竜博物館に行ってみた。九頭竜川のサクラの花は満開だった。日本に恐竜がいたころ、気候は温暖で、入江や干潟がたくさんあったようだ。最近の古植物学の進歩により、恐竜たちが生きていたころの生息環境が再現されていたことが興味深かった。ヒトの祖先であるネズミのような哺(ほ)乳動物も、恐竜とともに生きていた。しかし、ネズミたちは恐竜目線では全く目立たない存在、敵でも味方でもない存在だったようだ。進化論では、種の数を推定することはできても、特定の種がどの程度の個体数であったのか、個体が分布する地域自体の地理的および気候的変動もあって、個体数の推定が困難なようだ。個体密度という観点では、植物は大成功していて、地域を個体群の特徴的なパターンで埋め尽くす。動物は植物群落に依存するニッチな生息環境で生きざるを得なかったのだろう。現代では、人類が植物群落を破壊し、植物を人為的に栽培して、陸上環境を支配しているようではあっても、ゴキブリは恐竜時代にも生きていたし、個体数という意味では、人類はゴキブリに全く太刀打(たちう)ちできないと思われる。しかも、ゴキブリは人類目線で目立たないように生息している。恐竜にとって人類の先祖は、人類にとってのゴキブリのような存在だったのかもしれない。 記事全文>>