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Archive for: 10月, 2022

危うし日本の自動車産業-中国に頼るトヨタのEV
『山田厚史の地球は丸くない』第224回

10月 28日 2022年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

トヨタ自動車は、中国市場に投入する電気自動車(EV)を中国の新興メーカー、比亜迪股份(BYD)と共同生産すると発表した。「トヨタともあろうメーカーが、なぜ中国企業の手を借りるのか」と思った人は少なくないだろう。テレビCMで16車種のEVをずらりと並べ、豊田章男社長が豊富なラインアップを誇ってみせるトヨタが、あろうことか、中国メーカーとなぜ「共同開発」しなければならないのか――。

こうした感覚は、どうやら今や時代遅れになったようだ。コロナ感染で日本人が海外へ出る機会を失ったこの2年間、世界の自動車事情は激変した。いずれ訪れるだろうが「ずっと先の話」と考えていた「自動車のEV化」が、目前の課題となって迫ってきた。 記事全文>>

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日本の航空機産業復活の糸口を考える
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第227回

10月 21日 2022年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住24年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

産業を振興・育成させる具体的手段は「技術革新」と「物まね」にあると私は考えている。技術革新を導き出す方法はオーストリア人の経営学者であるピーター・ドラッガーがその著書で述べているが、技術革新以上に重要なのは「物まね」である。日本人は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとおだてられている間に「物まね」の心を忘れてしまった。しかし「物まね」によって日本は繊維、科学、鉄鋼、電気、半導体、機械設備、自動車など多くの産業で世界一にまで上り詰めたのである。もちろん単なる「物まね」だけではなく、そこに新たな工夫を施したことは書き忘れてはならない。しかしその基本は「物まね」であった。

日本の産業衰退が叫ばれる今こそ、日本人は「物まね」に活路を見いだすべきである。こうした信念から過去2年にわたって、私はこの「ニュース屋台村」で造船、半導体、自動車、農業、漁業など各種産業の世界比較を行ってきた。今回は、バンコック銀行日系企業部に所属する渡辺健斗さんが執筆した「航空機産業」に関するレポートを紹介したい。

日本の航空機産業の現状をお伝えするとともに、復活へのわずかな光明をレポートの中から見ることができる。日本は「パートナーシップ型」の社会構造を持っているため、会社という組織により縦割りの産業構造が出来上がった、という議論がある。もしそうであるならば、自動車の次に来る産業を早急に育成しなければならない。航空機産業はそうした新たな産業の一つになり得るのであろうか? 記事全文>>

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個体差の機械学習
『みんなで機械学習』第11回

10月 19日 2022年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o株式会社ふぇの代表取締役。独自に考案した機械学習法、フェノラーニングのビジネス応用を模索している。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長、Pfizer Global R&D, Clinical Technologies, Director。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

今後の世界経済はリセッション(景気後退局面)となることが確実視されている。筆者が製薬企業の臨床開発部門に所属していた20年前、新薬開発、特に認知症や脳卒中などの、加齢とともに発症リスクが高まる脳疾患の治療薬開発が行き詰まっていた。筆者たちのグループは、薬効評価を質問票の点数(スコア)で行っていることに問題があると考えて、医療画像などの「測定」できる数値(バイオマーカー)による薬効評価に取り組んでいた。FDA(米国食品医薬品局)は製薬企業の活動と呼応して、白書”Innovation or Stagnation”(※参考1)を公表している。残念ながら、その後の新薬開発では、イノベーションではなくスタグネーション(停滞)の予想が的中してしまった。例外は、ガン治療薬などにおけるバイオ医薬品で、とても高価だけれども有効な新薬が、次々に開発されている。最近、エーザイは認知症の重症化予防効果があるバイオ医薬品(抗体医薬)の開発に成功した。バイオ医薬品の開発において、当時開発していたイメージング・バイオマーカー(FDG・PETやアミロイドPET)が活用されているので、全面的なスタグネーションではないとしても、新薬開発におけるバイオマーカーの活用は、期待には応えられなかったといわざるを得ない。新薬開発だけではなく、経済全体においても、金融やITのイノベーションは社会・経済の期待には応えられず、リセッションとなってしまうのだろうか。 記事全文>>

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なぜ日銀はここへきて「賃金」を持ち出すのか-繰り返される異次元緩和の「新たな説明」
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第60回

10月 17日 2022年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

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オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。

「物価対策」といえば、通常は物価上昇を抑制する政策を思い浮かべるだろう。しかし、今回の政府・日本銀行による「物価対策」は逆だ。超金融緩和の継続と巨額の財政支出の組み合わせは、需要を維持し、物価の上昇を促す政策にほかならない。

給付金や補助金の対象とならない家計や企業にとっては、物価の上昇と将来の増税のダブルパンチとなる。一つの政策判断ではあるが、なぜこうした判断に至ったかの説明は明確でない。

日銀は、値上げ許容度発言を撤回し、政府とともに円買い介入も実施した。それでも、異次元緩和を続けている。ロジックを読み解くのは難しい。 記事全文>>

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「村上処分」その前にすべきこと-自民衰退を映す「異論抹殺」
『山田厚史の地球は丸くない』第223回

10月 12日 2022年 政治

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

「私に言わせりゃ国賊ですよ」。安倍晋三元首相を語ったひと言で、自民党衆議院議員の村上誠一郎氏が党内で窮地に立っている。10月12日には党紀委員会が開かれ、「役職停止1年」という「処分」が下された。旧統一教会との深いつながりばかりか、「安倍政治の功罪」に触れないまま催された国葬に異を唱えた村上氏。「役職停止」とは、村上氏が正論を展開する舞台にしてきた党総務会への「立ち入り禁止」を意味する。口封じのような処分に、懐の深さを失った自民党の姿が見える。

◆「国賊発言」の発端

村上誠一郎と安倍晋三。ほぼ同世代、政治家一族に生まれ、若くして政界に出た。村上は1952年生まれ、当選12回、安倍は54年生まれの当選10回。源流をたどると、村上は石橋湛山、安倍は岸信介である。戦後の保守政界で首相の座を懸けて激突したリベラル・右派の政治思想が、70年の時を経て「国賊発言」の背後に漂う。 記事全文>>

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Small Random Patterns are Beautiful
『みんなで機械学習』第10回

10月 10日 2022年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o株式会社ふぇの代表取締役。独自に考案した機械学習法、フェノラーニングを実装して、ビジネス応用を模索している。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長(臨床試験データベースシステム管理、データマネジメント、統計解析)。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

『みんなで機械学習』は、第9回を最後に1年ほど中断してしまった。その1年の間に、世界が政治経済的に分断され、ビジネス環境が大きく変化している。第9回の「ビジネス関連特許の9画面表現モデル」は、筆者が40年以上考え続けているデータ論としては、ひとつの到達地点だったと思う。西欧哲学的な、真・偽、敵・味方、など2項対立の論理はとても強力で、データの統計解析においても、2×2分割表などの形で様々に利用されている。こういった単純な古典論理が有用であることは疑いない。しかし、自然や社会のデータが、古典論理に従っている、古典論理で理解できるというのは単純すぎるし、量子力学などの複素数でしか記述できない現象には、古典論理では無力としか言いようがない。「9画面表現モデル」は、3×3分割表のように見えるけれども、中心となる特異点の周りをまわる「廻(まわ)る論理」を表現している。すなわち、データ論を「表現論」として再構築しようという試みだ。 記事全文>>

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日本の自動車業界はEV化の波の中で生き残れるのか?
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第226回

10月 07日 2022年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住24年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

日本の基幹産業は、言わずと知れた「自動車産業」である。その昔は「電気」「機械設備」「半導体」「造船」さらには「鉄鋼」「繊維」なども日本の基幹産業と呼ばれ、世界中に製品が輸出されていた。残念ながらそうした産業も見る影もないくらいに凋落(ちょうらく)してしまった。いまや日本経済は「自動車産業一本足打法」に近い状態であると私は感じている。しかしその自動車産業も世界のEV(電気自動車)化の流れの中で、米国や中国など他国に後れを取っている印象がぬぐえない。私が住むタイでは、台湾の鴻海がタイの石油企業と合弁で電気自動車の生産を計画。最近では、生産台数で世界最大の電気自動車会社である中国のBYD社もタイでの電気自動車の生産計画を発表した。これに対し、タイの自動車市場を寡占している日系自動車メーカーの動きは遅い。現在の市場支配力を失ってまで「あえて電気自動車にシフトする意味がない」と考えているのかもしれない。しかしこうした戦略は、かつて日本の電機産業や鉄鋼産業が犯した過ちを彷彿(ほうふつ)とさせる。

今回はバンコック銀行の山村俊輝さんがまとめた電気自動車のレポートをご紹介したい。ガソリン車から電気自動車への転換のうねりはすぐそこまで来ているようである。日本が基幹産業を失わないためにも全力での取り組みが必要とされている。 記事全文>>

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「リベラル能力主義」について考える(その5)
『視点を磨き、視野を広げる』第62回

10月 03日 2022年 経済

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古川弘介(ふるかわ・こうすけ)

海外勤務が長く、日本を外から眺めることが多かった。帰国後、日本の社会をより深く知りたいと思い読書会を続けている。最近常勤の仕事から離れ、オープン・カレッジに通い始めた。

はじめに:本稿のねらい

前稿では、日本と米国の能力主義には違いがあり、その違いを生んだ原因は雇用システムにあると考えた。

労働法、労働政策を専門とする濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構労働政策研究所長)は、雇用システムが社会の制度や慣行の形成に大きな影響を及ぼすことを、『ジョブ型雇用社会とは何か―正社員体制の矛盾と転機』で教えている。

すなわち―戦時体制に起源を持ち戦後確立された日本型の雇用システムは、雇用契約、賃金制度、採用や人事制度、労働組合を規定し、日本的な「能力」主義を生みだした。そしてそれらを通じて、企業を経営者と労働者の人的結合体と見る意識が醸成され、戦後日本を規定した―という大きな捉え方である。戦後の日本型の雇用システムが企業を一種の擬似共同体に再編することで、株主第一主義の米国とは異なる労使協調の日本型の資本主義モデルが誕生したという解釈である。 記事全文>>

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