山本謙三(やまもと・けんぞう)
オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。
日本銀行は、10月末の金融政策決定会合で長短金利操作(YCC)を再修正し、長期金利が上限めど1%をある程度超えることがあっても、容認する場合があるとの姿勢を示した。
一方、マイナス金利をはじめとする大規模な金融緩和の大枠は維持した。日銀の公表文では、「『物価安定の目標』の持続的・安定的な実現という観点から、賃金と物価の好循環など経済・物価情勢の変化を丹念に確認していく」としている。
では、足元の「賃金と物価の関係」はどうか。関係を端的に表す実質賃金指数は、18か月連続で前年比マイナスに沈んでいる。直近9月(速報)の前年同月比もマイナス2.4%と、到底「好循環」とは言えない状況にある。
春闘で大幅な賃上げが実現した際には、夏場にも「好循環」が確認されるとの観測もあったが、的外れだった。一体、何が起きているのだろうか。 記事全文>>