小澤 仁(おざわ・ひとし)
バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住26年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。
1月4日に放送されたNHKスペシャル「2024私たちの選択―AI×専門家による“6つの未来” ―」は私たちの今後の在り方を考えさせられる興味深い番組であった。生産年齢人口がピークを迎えた1997年以降、一貫して下がり続けた日本の実質賃金。2023年の国内総生産額(GDP)は、人口が3割も少ないドイツに抜かれて世界4位に転落。今や1人当たりのGDPは世界32位(22年)と、日本は中進国に成り下がってしまった。こうした日本の凋落(ちょうらく)を予見して私は「ニュース屋台村」などで警鐘を鳴らしてきたつもりでいたが、残念ながら私の声は届かなかった。
最近になり少しずつ「日本の凋落」や「安い日本」の実態がマスコミによって伝えられ始めてきた。それでも人間は「正常性バイアス」という生来の気質から、自分に不都合な事態を認めようとはしない。こうした日本の実情を見たくない人たちからは感情的反発が生まれる。一方で、日本の問題点を指摘する人たちも個別事象だけに焦点を当てており、総合的な提言を見る機会は少ない。前置きが長くなったが、今回ご紹介するNHKスペシャル「2024私たちの選択」は、こうした日本に対して「複合的な提言」を試みた価値ある取り組みである。 記事全文>>