Archive for: 1月, 2025

日本の医療機器の実力は?(その1)
世界市場を概観する
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第284回

1月 31日 2025年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住27年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

私は10年以上にわたって、この「ニュース屋台村」で「日本の衰退を回避するための提言」を行ってきた。極端な金融緩和に走ったアベノミクスや利権政治家・官僚・経済界が先導した放漫財政、官僚主義に染まった企業幹部の台頭によるコンプライアンス社会の出現と硬直的な人事制度の導入、SNSを介在したフェイクニュースの横行と既成マスコミの堕落などである。金融緩和も放漫財政も日本の経済再生に寄与せず結果として「失われた30年」が現出してしまった。最近になりマスコミでも日本の凋落(ちょうらく)を取り上げるようになったが、具体的な日本再生のアイデアは出てこない。自民党からも野党からも日本をどう導くかの政策は語られない。 記事全文>>

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「悪データ」と魅力的な性悪説の世界
『みんなで機械学習』第55回

1月 29日 2025年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

o
株式会社ふぇの代表取締役。独自に考案した機械学習法、フェノラーニング®のビジネス展開を模索している。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長、Pfizer Global R&D, Clinical Technologies, Director。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

◆ツイン・ピークス

米国の映画監督デイヴィッド・リンチ(1948~2025年)の訃報を読んで、代表作として紹介されていた1990年からのテレビドラマ「ツイン・ピークス」を見てみた。リンチ監督の「エレファント・マン」は記憶に残る映画だった。しかし、「ツイン・ピークス」の、1950年代の<古き良き時代のアメリカ>を舞台とするテレビドラマ、という解説には違和感があった。

「ツイン・ピークス」は、全てがアナログな舞台設定だった。カナダ国境の田舎町における、一見善良そうな人びとの生活の裏側では、セックス・麻薬・犯罪が蔓延(まんえん)する、アメリカ社会の<異質性>が描かれていた。現在のトランプ大統領が出演していても、全く違和感がない<古き良き時代のアメリカ>だ。今日と決定的に異なるのは、スマホやインターネットなどのデジタル通信機器が全くないこと、テレビや新聞などの古典的ジャーナリズムが物語に関与しないこと、外部社会とのつながりは、連邦捜査局(FBI)と国際犯罪組織だけで、コカ・コーラなどのグローバル企業の商品や宣伝すらないこと、魔術的な暗黒社会があることぐらいだろう。 記事全文>>

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トランプとデジタル複合体の台頭
AIブームの死角「自律型攻撃兵器」
『山田厚史の地球は丸くない』第280回

1月 24日 2025年 国際

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

アメリカでドナルド・トランプ氏(78)が大統領に返り咲いた。就任式が行われた20日には、25余りの大統領令が出され、バイデン政権の下で進められてきた政策が、根底から覆された。お祭り騒ぎのような政権交代が進む中で、気がかりなことがある。「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げる政権と時代の最先端を走るTEC産業が一体化し、「デジタル産業複合体」が形成されつつあることだ。

温室効果ガス抑制を目指すパリ協定からの離脱、WHO(世界保健機関)からの脱退、カナダとメキシコに25%の関税をかけ、メキシコ湾を「アメリカ湾」に名称を変える。米国議会に乱入して有罪になった全員の恩赦など、世界やアメリカで通用してきた「常識」を根底からひっくり返した。 記事全文>>

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「デジタル遺産」となり得るNFT②
近時の動向アップデート
『企業法務弁護士による最先端法律事情』第16回

1月 22日 2025年 社会, 経済

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北川祥一(きたがわ・しょういち)

北川綜合法律事務所代表弁護士。弁護士登録後、中国・アジア国際法務分野を専門的に取り扱う法律事務所(当時名称:曾我・瓜生・糸賀法律事務所)に勤務し、大手企業クライアントを中心とした多くの国際企業法務案件を取り扱う。その後独立し現事務所を開業。アジア地域の国際ビジネス案件対応を強みの一つとし、国内企業法務、法律顧問業務及び一般民事案件などを幅広くサポート。また、デジタル遺産、デジタルマーケティング等を含めたIT関連法務分野にも注力している。著書に『Q&Aデジタルマーケティングの法律実務』(日本加除出版、2021年)、『デジタル遺産の法律実務Q&A』(日本加除出版、2020年)、『即実践!! 電子契約』(共著、日本加除出版、2020年)、『デジタル法務の実務Q&A』(共著、日本加除出版、2018年)。講演として「IT時代の紛争管理・労務管理と予防」(2017年)、「デジタル遺産と関連法律実務」(2021年、2022年、2024年)などがある。

1 NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)とは?

近時、ブロックチェーンを利用したNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)なるデジタルデータが世に出回るようになりました。ブロックチェーンは暗号資産においても利用されている技術になりますが、NFTは暗号資産とは異なる特徴を持っています。 記事全文>>

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金融政策はなぜビハインド・ザ・カーブが続くのか
日銀「多角的レビュー」を読む・その2(完)
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第82回

1月 20日 2025年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

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オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。著書に『異次元緩和の罪と罰』(講談社現代新書2753、2024年9月)。

日本銀行は2024年12月、過去25年の金融政策を検証する「金融政策の多角的レビュー」を公表した。注目の2013年4月以降の異次元緩和については、一定の留意を残しつつも「全体としてみれば、わが国経済に対してプラスの影響をもたらした」と結論づけている。

だが、前回第81回(2025年1月14日付)で述べたように、異次元緩和の効果の分析は過大評価の可能性が高い。また、副作用に関しては、言及はあるものの、深掘りを避けた印象である。 記事全文>>

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「やめる、やめる詐欺」返上宣言
2025年の年頭にあたって
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第283回

1月 17日 2025年 経済

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

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バンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住27年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

私はこの10年あまり、バンコック銀行(以下バン銀)の退職を騒ぎ立てる「やめる、やめる詐欺」を働いてきた。特に人からお金をだまし取ったわけではない。それでも私の「やめる、やめる詐欺」に振り回された方も多い。2025年の新年を迎えるにあたって、ここにこの“詐欺行為”をやめることを宣言したい。また、これまで私の“詐欺行為”に振り回された方に対して、この場を借りて謝罪したい。 記事全文>>

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未来への説明責任
『みんなで機械学習』第54回

1月 15日 2025年 社会

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山口行治(やまぐち・ゆきはる)

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株式会社ふぇの代表取締役。独自に考案した機械学習法、フェノラーニング®のビジネス展開を模索している。元ファイザージャパン・臨床開発部門バイオメトリクス部長、Pfizer Global R&D, Clinical Technologies, Director。ダイセル化学工業株式会社、呉羽化学工業株式会社の研究開発部門で勤務。ロンドン大学St.George’s Hospital Medical SchoolでPh.D取得(薬理学)。東京大学教養学部基礎科学科卒業。中学時代から西洋哲学と現代美術にはまり、テニス部の活動を楽しんだ。冒険的なエッジを好むけれども、居心地の良いニッチの発見もそれなりに得意とする。趣味は農作業。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。

◆代替案が無い不確実な世界で生きる

前稿第53回(https://www.newsyataimura.com/yamaguchi-134/#more-22000 )はリベラリズムの代替案について考えてみた。筆者としては2025年に向けた直近の政治的な話題のつもりだったのだけれども、いつもの事ながら、近未来の「データ文明」を夢見る哲学的な文章になってしまった。中学3年生の時に、文部省(当時)中央教育審議会の「期待される人間像」(昭和41〈1966〉年)(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/661001.htm )を知ってから、「リベラル嫌い」となった。個人的な「リベラル嫌い」について記載して、17世紀の合理主義哲学、スピノザにも言及したので、過去の哲学的な雑感となって、2025年の政治と経済の話題としては、ピントがずれていたのかもしれない。近代合理主義哲学には経済合理性の概念はない。近代経済学、マルクス経済学、ケインズ以降の経済学、それぞれの経済合理性を議論している。それぞれ経済理論として、もしくは経済政策には有用ではあっても、筆者には、現在までの経済学が「合理的」であると思われたことは無かった。資本主義や民主主義が「合理的」なのかどうか疑わしく思われるのと同じで、哲学的な懐疑が不足している、もしくは、哲学を無視することで科学的なふりをしているようだ。現在では、合理的な意味でのリベラリズムの代替案が無い不確実な世界で生きるしかないとあきらめて、近未来の「データ文明」について考えている。 記事全文>>

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緩和効果の過大評価の可能性
日銀「多角的レビュー」を読む・その1
『山本謙三の金融経済イニシアティブ』第81回

1月 14日 2025年 経済

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山本謙三(やまもと・けんぞう)

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オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。著書に『異次元緩和の罪と罰』(講談社現代新書2753、2024年9月)。

日本銀行は昨年末、過去25年の金融政策を検証する「金融政策の多角的レビュー」を公表した。同レビューでは、2013年4月以降の大規模金融緩和(以下、「異次元緩和」)も取り出して分析しており、評価できる。

結論は、異次元緩和は導入当初に想定していたほどの効果はなかったが、経済・物価を一定程度押し上げたというものだった。日銀は、これをもとに「引き続き2%の『物価安定の目標』の持続的・安定的な実現という観点から金融政策を運営していく」としている。

しかし、「多角的レビュー」で示された異次元緩和の経済への押し上げ効果は過大評価の感が強い。また、財政規律や市場機能に及ぼす副作用は深掘りを避けた印象がある。2回にわたり検討してみたい。 記事全文>>

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裏切られた蜜月 同盟に亀裂
日鉄のUSスチール買収拒否
『山田厚史の地球は丸くない』第279回

1月 10日 2025年 政治, 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収を、米国政府は「完全かつ永久的に放棄せよ」と一蹴した。予想された展開ではあったが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は「米国の製造業と安全保障を損なう経済的な自虐行為」と論評した。

さまざまな意味で「米国の現状」を映し出す決定だった。労組まで巻き込む産業の排外主義とロビー活動、目先利得に引きずられる米国政治の劣化、そして「日米同盟とはこの程度」であることが可視化された。

アメリカの製造業が抱える諸問題、保護主義に染まった産業政策、自国第一から自分第一へと傾斜する政治――。論点は多々あるが、今回は「買収拒否」が「日米同盟」そして日本の針路に与えた衝撃を考えてみたい。 記事全文>>

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