山本謙三(やまもと・けんぞう)
オフィス金融経済イニシアティブ代表。前NTTデータ経営研究所取締役会長、元日本銀行理事。日本銀行では、金融政策、金融市場などを担当したのち、2008年から4年間、金融システム、決済の担当理事として、リーマン・ショック、欧州債務危機、東日本大震災への対応に当たる。著書に『異次元緩和の罪と罰』(講談社現代新書2753、2024年9月)。
日本銀行は昨年末、過去25年の金融政策を検証する「金融政策の多角的レビュー」を公表した。同レビューでは、2013年4月以降の大規模金融緩和(以下、「異次元緩和」)も取り出して分析しており、評価できる。
結論は、異次元緩和は導入当初に想定していたほどの効果はなかったが、経済・物価を一定程度押し上げたというものだった。日銀は、これをもとに「引き続き2%の『物価安定の目標』の持続的・安定的な実現という観点から金融政策を運営していく」としている。
しかし、「多角的レビュー」で示された異次元緩和の経済への押し上げ効果は過大評価の感が強い。また、財政規律や市場機能に及ぼす副作用は深掘りを避けた印象がある。2回にわたり検討してみたい。 記事全文>>