引地達也(ひきち・たつや)
特別支援が必要な方の学びの場「みんなの大学校」学長、博士(新聞学)。フェリス女学院大学准教授、文部科学省障害者生涯学習支援アドバイザー、一般財団法人発達支援研究所客員研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
◆失望に変えた事件
最近の障がい者向けのグループホーム事業の拡大は、障がい者が地域とともに生き、暮らす共生社会に向けた希望のはずである。その希望を失望に変えてしまったのが、障がい者向けグループホーム運営大手企業による食材費の過大徴収事件など、各種の不正事件であろう。
事業者が私腹を肥やすだけならまだしも、利用者に提供している食事が粗末だったのは、福祉事業者としての資格も見直すべき事案だ。このような事態は、グループホーム事業拡大で民間企業の参入が増える中で、懸念はしていた。「収益化が容易」とのうたい文句で事業参入を呼びかける広告が飛び交い、私にも「グループホーム事業に参入したいのですが……」との相談も定期的にやってくる。
障がい者に対応する社会の環境が不十分な中で、グループホームを運営するのは簡単ではない。事件を受けて、社会における障がい者を支援する社会福祉事業としてのグループホームの在り方を熟考できればと思う。 記事全文>>