東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回も前回に続き、新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴うトラブルについてご紹介します。
A社は従来、賞与の支給については従業員が満足する額を提示してきました。しかし、今期の決算は新型コロナウイルスの影響による赤字を回避できず、創業から初めて前年比減の金額を提示せざるを得ませんでした。過去にも業績が悪化した年はありましたが、賞与が減額されたことはありませんでした。このため、従業員は今回提示された減額案を拒否。A社から、難航する労使交渉の解決に向けてご相談がありました。
◆業績より「頑張り」への評価を求める
タイでは賞与の支払いは法的に必須ではなく、支払い方法も会社ごとに自由に決定することができます。その一方で、多くのタイ人従業員は、賞与の支給は「当然の権利」と考える傾向があり、特に日系企業で働く従業員はその傾向が強いと言えます。
賞与の支給額について従業員の理解を得る方法としてまず大切なのは、減額の要因となる業績と賞与額の因果関係を十分に説明することです。また、毎年の期初に、その期にどのような結果や成果が賞与の査定につながるのか、また減額される場合もその条件を事前に明示しておくことで、賞与額に対する従業員の納得が得られやすくなると思います。その際、もちろんのことですが、増額時も減額時も、当初取り交わした約束を会社側が遵守(じゅんしゅ)することも重要です。
毎年多くの日系企業が賞与の支給額について頭を悩まされていると思います。どれだけ論理的に会社の実状を伝え、合理的とみられる金額を提示しても、タイ人は「利益配分」という考えではなく、感情に重きを置いた「頑張り」に対する支給を要求することが多いようです。また、過去の業績不振時の支給額と比較し、「赤字でも十分な賞与が支払われたことがあるのに、なぜ今期は減らされるのか」と不満の声も多く寄せられるようです。
過去の経済危機の時と異なり、新型コロナウイルスによる業績の下振れはすぐには回復のめどが立ちにくく、賞与の減額を提示せざるを得ない企業様が多いと推察します。この機会に、賞与の支給基準を明確化し、従業員への周知徹底を図ることで納得を得られやすい体制を構築されてはいかがでしょうか。
今回ご紹介したような問題に関するご相談がありましたら、是非お気軽に弊社へお問い合わせください。
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