п»ї 「つなぐ」がはじまり、新しいコミュニティーに向かう『ジャーナリスティックなやさしい未来』第213回 | ニュース屋台村

「つなぐ」がはじまり、新しいコミュニティーに向かう
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第213回

7月 06日 2021年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆ストレス解放で「健康」

 みんなの大学校と一般財団法人発達支援研究所が共同で編集する12ページのカラー冊子「つなぐ」が発刊された。同研究所の山本登志哉所長と私が共同編集長となり、発達障がいや精神障がいにより生きづらさ、働きづらさ、いづらさ、を感じている人とつながりながら、その要因を探り、そして良い方向を考えていこうという試みの一環である。

誰もが特性という個性を持つ中で何が正しいのかは分からない、ことを前提に他者と交じり合い、そして協力し合ったり、調整したりすることを楽しみたいと思う。人が交わることで当然発するストレスを助長するよりは、ストレスから解放された状態のほうが「健康」ではないかと考えつつ、この「つなぐ」を通じてつながりを模索したい。

小さな紙媒体ではあるが、コミュニケーションを駆使して水平型の関係性をどのように構築するかの大きな一歩と考えて出発したい。

◆無力を認める

 創刊号の特集は「当事者研究」をテーマにした。私と山本先生、そして当事者研究で知られる東京大学先端科学技術研究センターの綾屋紗月さんの鼎談(ていだん)を掲載している。

当事者研究の歴史から現状までを綾屋先生から研究と分析、そして実践に加えて、綾屋さんご自身が発達障がいの当事者であるとの立場から、山本所長が研究者の立場から、そして私は実践の立場からの展開である。私にとって当事者研究はやはり綾屋さんが実践してきた、そして見てきて、ご自分でも実感された内容の奥行きに魅了されて、もっぱら聴く側に回っての鼎談となった。

この中で綾屋さんは「無力を認める」「重要なのは興味を持って聞いてくれる人」など、障がいと社会の接点で重要なポイントを示してくれている。それをいざ、紙面に内容を収録してみると、ほんの一部しか掲載できないことに気付き、今回の特集で収録できなかった部分は次回以降の連載とした。

◆ひっくり返すSST

また「逆SSTをやってみよう」という記事では発達支援研究所が行っている当事者を支援するあらたな視点での新しい取組も紹介しているが、これも面白い。

支援の現場で「ソーシャル・スキル・トレーニング(Social Skills Training:略称SST)」は、福祉領域だけではなく、ビジネスの世界でも知られている方法だが、前提としてマジョリティーの社会に合わせるための訓練という位置づけである。当事者からすれば、定型的な考え方に合わせるためのトレーニング、である。

記事によると、「社会の中でほかの人たちとうまく付き合っていくための技能、あるいはトラブルの少ない社会とのつきあい方として、(中略)それをマスターすべく学習・練習する」。

つまり「発達障がい当事者も定型発達の人も一緒に生きていく社会を作るべき、という観点から考えれば、一方だけが努力して、もう一方は相手に合わせるという努力をしていない、というのもおかしな話」ということで、「私たちはそのトレーニングする側とトレーニングされる側を、ひっくり返してみようと思ったわけです。SSTの逆、ということで名前も『逆SST』と名付けました」とのことである。

◆化学反応にわくわく

「つなぐ」では、逆SSTの手順も示しながら、その結果を示しているが、これはどこでも実践が可能で、SSTの見方や可能性が広がるから楽しい取り組みになりそうだ。

そのほか、みんなの大学校が4月から始めた新しい就労継続支援B型事業所の形も紹介している。この「つなぐ」でつながるコミュニティーはどんな化学反応をしていくだろう。とてもわくわくしつつ、編集部も面白い動きをしていきたい。

「つなぐ」のデータ媒体は今後、アマゾンなどで販売する予定で、紙媒体は、みんなの大学校に問合せいただければ対応可能であるが、全国の就労移行支援事業所アクセスジョブでもお渡しできる。

研修などでご使用するなど5部以上必要な方は、みんなの大学校本部までご連絡ください。(東京都国分寺市本多2-1-4、℡070-3166-1616)。紙媒体の料金は、国内送料込みで10部までが1000円、15部までが1500円、20部まで2000円など。

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