п»ї 孤独感の中の障がい者の学びに感動をもう一回 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第231回 | ニュース屋台村

孤独感の中の障がい者の学びに感動をもう一回
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第231回

4月 18日 2022年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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◆社会全体で「学び」を認識

文部科学省の委託研究事業「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」を委託している全国22の団体を対象にしたウェブ上の交流会は、文科省の委託を受け私たち、みんなの大学校が事務局となり、2021年度事業として運営してきた。

委託団体は障がい者が学べる環境を整備するための先進的な取り組みを行う全国の地方自治体、教育委員会、大学、社会福祉法人やNPO法人、医療法人で、交流会は学びを推進するコアメンバーがオンライン上で集まり、文部科学省の担当者も交えて意見交換する場である。交流会の全4回が先日終了した。私自身は運営側でありがら、障がい者の学びの今を確認し、来年度に向けての道筋を考え、形作り始めるための大きな学びを得た機会となった。障がい者の学びへのアプローチは複数のトラックが存在しているが、それぞれに課題は多い。社会全体で「学び」の認識やイメージをあらためなければならないのが、引き続いての大きなテーマである。

◆4つの領域

交流会は前半と後半に分かれ、前半は委託団体の中から1団体が報告し、後半は小グループに分かれて、そのテーマについてディスカッションするスタイルとした。

1回目は和歌山県の社会福祉法人一麦会、麦の郷の野中康寛さんから「創り合い、学び合う~ゆめ ・やりたいこと実現センターの発足・実践から~」。

2回目は東京都国分寺市立並木公民館・本望慎一館長、国分寺市立恋ケ窪公民館・加藤征彦館長、国分寺市立本多公民館・櫻井奈穂子さんから「国分寺市立公民館 くぬぎカレッジ事業の実践報告」。

3回目は札幌市の医療法人稲生会の宮田直子・みらいつくり大学校教務主任から「みらいつくり大学校の実践報告」。

4回目は秋田大学教育文化学部附属特別支援学校校長、藤井慶博・秋田大学教授から「大学における障害のある方の生涯学習モデル講座の実践と課題」。

この四つのテーマは、現在の障害者の学びのアプローチとして存在する四つの領域を示している。つまり一麦会が「福祉」、くぬぎカレッジが「公民館」、みらいつくり大学校は「医療」、秋田大学は「教育機関」である。

◆コンテクストのずれ

これを大きく分けると、「福祉行政」と「教育行政」の縦割りとなり、学びの環境を整備しようと現場で動く方々はこの行政組織とやりとりすることになるが、この二つの文化の違いや使用するコンテクストのずれに戸惑うことになる。

私も福祉と教育の間を行ったり来たりしながら、担当者の言葉の使い方の違いに気を遣うことは多い。

例えば、「インクルーシブ」。

みんな一緒に、という中に「誰が」「どのように」の視点が二つの行政では違う。教育の場合はプロセスとしての「インクルーシブ」のイメージが強く一緒にすることで得られる効果は学びによって未知数ではあるが、それは必然であるというイメージである。福祉の中では結果としての「インクルーシブ」だから、まずは「そうすること」に価値がある。

しかし効果が見えなければ、それは絶対的価値ではない、という姿勢であろう。教育は能動的だが、福祉が受動的だとの見方も出来る。この違いを一つに束ねられるのが「ダイバーシティ」ではあるが、こちらはまだ真意まで理解されている言葉とは言い難く、産業界のキャッチフレーズとして始まったばかりの印象だ。

◆誰かがやらねば

障がい者の学びを展開しようとする時に「ダイバーシティ」を全面的に押し出していくと、そこには障がい者だけではなく、外国人や引きこもりの方、様々な価値観を持った方も対象となり世界は広がる。障がい者が社会の「障害」によって生きづらくなっている「障がい者の条件」さえも飲みこんでしまう勢いもありそうで、これまで障害福祉に携わってきた方々には新しい価値観に戸惑いも覚えているようである。

新型コロナウイルスの影響もあり、リモートで気軽につながれる社会で私たちがしばられてきた枠組みから抜け出すのは今なのだろう。障がい者の学びを推進する時に、行政への説明が伝わらず孤独を感じる時がある。

それでも前に進んできたのは当事者の思い、その真剣な表情、学びの中での笑顔やその先にある希望があったからで、私はそれを糧にさらに前に一歩と進み出ていきたい。誰かがやらなければいけないし、得られる出会いには感動も多い。その感動をもう一回、と思い、孤独を乗り越えている。

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