引地達也(ひきち・たつや)
特別支援が必要な方の学びの場、みんなの大学校学長、博士(新聞学)。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般財団法人発達支援研究所客員研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。
◆ここにきたら、やさしくなれる
これまで造語である「ケアメディア」の概念を考え、発信し、「ケアメディア論」との書籍にもしてきた行動の一つの実践として、このたび「ケアメディア」というウェブサイトを立ち上げた。このページのコンテンツは当事者による発信が中心で、各種障がいなどで「支援」が必要な方がウェブを通じて社会に出るだけではなく、その持っているもので社会との「つながり」の中でよりよい方向に行ける道標(みちしるべ)にもなると考えている。
キャッチフレーズは「ここにきたら、きっとやさしくなれる ここにつながったらきっとかしこくなれる」。
「やさしく」そして「かしこく」というキーフレーズが「みんなの大学校」の学びとリンクし、幅広い意味合いを持たせている。関わる人すべてがやさしくなれることから、その関わりは今よりも「かしこくなる」ことにつながることを感じ、共有していきたいと考えている。
公開にあたってスタートする各ページのコンテンツを紹介したい。
◆やさしい作品たち
「ぎゃらりーあいりす」は「YURI」さんの写真作品を集めている。自然や店先、街角、モノ、そして人。その目線はナチュラルで柔らかい。展示している四つ葉のクローバーにはYURIさんの思いが反映されているのか。「忘れずに 忘れずにいたいな」と綴(つづ)った。写真が発する「優しさ」というエネルギーが誰かの力になれたらと思う。
「しあわせのたね」は「そとねこ」さんの詩作品が中心のようだが、ページのアイコンに描かれたどんぐりの絵のような自作のパステル絵画も期待している。詩の言葉も穏やかな時もあれば、はっとさせられる瞬間もあるが、総じて優しい視点。優しいからこそ、世の中の世知辛い実態が相対化されてくる。
「ひねくれもののひとりごと」は発達障がい当事者の「青の15号」さんが思ったことをコラムとして表現していくもので、野球、ドラマ、スポーツなどの独特の切り口が面白い。世の中の見方が多様であることを静かに言葉の展開により示すことで、多様性は保証されていくから、このコラムは新しい社会の道標の一つになりそうだ。
◆重度障がい者の視点
さらに、このページには重度障がい者の創作も掲載している。いずれも「みんなの大学校」の学生でもある岩村さんの「かずとのしゃしん」と、松本さんの「Piece Gallery」(ピース・ギャラリー)である。
「かずとのしゃしん」は、これまでの病院での生活や自宅に戻ってきた時の様子、出かけた時の風景など岩村さんがベッドの上や移動の際にストレッチャーから見えた風景をコメントに示しながら、写真を提示する。その目線を知り、その心の内から学んでいくために、編集に携わる私自身が岩村さんとの対話で言葉を一緒に紡いでいきたい。
松本さんは、ヘルパーさんとの共同作業で指につけた絵具で松本さんの世界を表現していく。描いたものから周囲がそのイメージを本人に伝え、どんなタイトルにするのかを決めた。
現在展示しているのは「蛍」「風にのる」「花束」「花輪」「夏の海」「あまずっぱい?」など。私は「風にのる」が気に入って、自分の名刺の裏にその軽やかさを演出するような絵をデザインしてしまった。
◆クリエーターたち
ウェブサイト「ケアメディア」で発信する彼・彼女らは「クリエーター」として今後も自分のペースで発信する予定で、この5人を皮切りにどんどん発信する仲間を増やしていきたい。
今後、開設する予定のページは芸術もあるし、実用的なものもあるが、すべて支援や障がいに関わっていて「ケア」が優先される環境のものであるが、その「ケア」の原義は人との関わり合いだと考えれば、この発信は本来あるべき私たちのコミュニケーションの姿なのだと思う。
この「ケアメディア」で発信したい方の作品は随時募集しています。また、このホームページへの広告掲載も募集中です。広告掲載費用はそのまま就労継続支援B型事業所「みんなの大学校」大田校の工賃として、このページで作業をしている利用者にそのまま支払います。よろしくお願いいたします。
※「ケアメディア」のページはこちらです。
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