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結局何もしなかった?日本の新型コロナウイルス対策
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第224回

9月 09日 2022年 社会

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小澤 仁(おざわ・ひとし)

oバンコック銀行執行副頭取。1977年東海銀行入行。2003年より現職。米国在住10年。バンコク在住24年。趣味:クラシック歌唱、サックス・フルート演奏。

日本の新聞やテレビなどのマスコミの情報を見ていると、日本政府は「コロナ患者の全数把握の撤廃」「コロナ感染者の隔離期間の短縮化」などの施策を展開しようとしている。マスコミも「オミクロン株は重症化率が低い」とか「日本のコロナ対策は欧米諸国に比して遅れている」として、政府による規制緩和に前のめりのように私には感じられる。しかし果たして、これは事実を反映しているのであろうか? オミクロン変異株の登場以来、日本の一日当たりの死者数は300人を超えるなど過去最多となっている。今回はバンコック銀行日系企業部の元木健太郎さんが執筆した「コロナ感染症」に関する論文をご紹介したい。世界各国のコロナ対策を分析し、日本との相違点を明らかにしている。日本の新型コロナ対策の有用性についてぜひ、皆さまでご判断いただきたい。

1章 はじめに

 1.) 現在、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るっている。感染症とは、ウイルス、細菌、寄生虫などの病原体が体内に入り様々な不調を引き起こす病気のことで、人類が誕生したまさにその瞬間から感染症との闘いは始まった。昔と比べ医療技術や衛生状態が大きく改善してきた現代においても感染症はなくなっていない。

2.) 20世紀の後半から 現在までの約50年間で新たに登場した感染症は約40種類といわれており、およそ15カ月に1種類というペースで見つかっている。このレポートでは最新のウイルス感染症である新型コロナウイルスについて取り上げる。

2章 コロナウイルスについて

1.コロナウイルスとは

1.) コロナウイルスは電子顕微鏡で観察することができる。直径約100nm(ナノメートル)の球形で、表面に見られる突起の形態が王冠に似ていることから、ギリシャ語で王冠を意味する「corona」という名前が付けられている。

2.) コロナウイルスは様々な動物が保有しており、その種類は全38種類といわれている。そのうち、ヒトに感染するコロナウイルスは全7種類ある(表1)。風邪の病原体として人類に広く蔓延(まんえん)している4種類、重症肺炎ウイルスSARSおよびMERS、そして2019年に発生した新型コロナウイルスである。

2.新型コロナウイルスとは

1.) 新型コロナウイルスは2019年12月に中国で発見され、これまでにない世界規模のパンデミックを起こしている新種のコロナウイルスである。2022年8月までに世界で感染者5億9千万人、死亡者646万人が確認されており、既存のコロナウイルスとは伝播(でんぱ)性と病原性において、明らかに異なるウイルスであると考えられている。

2.) 新型コロナウイルスの感染は、ヒトからヒトへ咳(せき)や飛沫(ひまつ)を介して起こり、特に密閉・密集・密接(三密)の空間での感染拡大が頻繁に確認されている。主に高齢者や心臓病、糖尿病などの基礎疾患を持った患者が重症者となることが多いが、50歳代未満の健康な人でも重症例や死亡例もまれにではあるが確認されている。

【表1 ヒトに感染するコロナウイルス全7種類一覧表】

出典:国立感染症研究所HPおよびWikipedia「基本再生産数値」よりデータ引用し著者作成

1:1人の感染者が免疫を持たない集団に加わったとき、直接感染させる人数の期待値

2:COVID-19は2.3-2.4、アルファ株4-5、デルタ株5-9.5、オミクロン株約20といわれている

3:感染者が出ても他の人に感染しにくくなる状態。そのために免疫を持つべき人の割合

 3.コロナウイルスの変異株について

1.) コロナウイルス最大の特徴は、ゲノムであるリボ核酸(RNA)が約3万塩基と、RNAのゲノムを持つウイルスの中でも最長であることだ。そのため変異の過程でコピーミスが起こりやすく変異株が発生しやすいウイルスといわれている(図1)。

【図1 ウイルスの変異プロセス】

出典:花王プロフェッショナル・サービス株式会社HP

 

2.) また、新型コロナウイルスは他のコロナウイルスより感染力が強いといわれている。そのためヒトからヒトへの感染を多数繰り返しており、変異株が発生しやすいウイルスとなっている。実際に新型コロナウイルスの変異株は世界各国で発生しており、各変異株はそれぞれの危険度によりWHO(世界保健機関)が分類している(表2)。

【表2 新型コロナウイルスの主な変異株の分類と呼称】

出典:(株)日本医学臨床検査研究所HPよりデータ引用し著者作成

VOI:注目すべき変異株(Variant of Interest)で 複数の国で大規模な市中感染やクラスターの多発を引き起こす可能性、世界的規模の公衆衛生に危険を及ぼす可能性があるもの

VOC:懸念される変異株(Variant of Concern)でVOIの特徴に合致し、次のうち少なくともひとつに当てはまるもの。①感染・電波性の増加②毒力の増加③公衆衛生措置・ワクチンの有効性低下

3.) 次に変異株の派生および感染拡大の流れを見ると、新たな変異株ほど感染力が強い傾向にあることがわかっている(図2)。人類は新型コロナウイルスに対して有効性の高いワクチンを次々と開発し、前例のないスピードで人への接種を実現してきたが、ウイルスも変異を続けており、世界各国で感染拡大に歯止めが利かない状態になっている。

【図2 変異株の感染拡大図】

出典:Nextstrain HP

 
3章 新型コロナウイルスの国別比較

 1.)新型コロナウイルスの感染状況に加え各国が行った各種対策を比較する。

日本、米国に加え、欧州からフランス、アジアからタイ、中東からサウジアラビア、ウイルスの起源であるといわれている中国の計6カ国を抽出し比較を行う。日本、米国、フランス、タイは2020年9月からのデータを用いる。サウジアラビアと中国については特徴的な動きがあった2020年2月からのデータを用い、人口100万人当たり感染者数(過去7日間の増加)、各種対策、ワクチン接種率の状況から各国を見ていく(図3-1から3-6)。

【図3-1 日本の感染状況、対策、ワクチン接種率について】

出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科HPよりデータ引用し著者作成

【入国規制】2020年9月に英国で発生したアルファ株の流行時期が2021年4月と遅いことから、海外由来の変異株の流行を遅らせる効果があると考察される。

【外出禁止】要請にとどまるが、2021年7~9月の緊急事態宣言で人流を抑えたことで感染者数は減少したと考察される。

【飲食店閉鎖】休業要請にとどsまるが、2021年7~9月の緊急事態宣言下においては実施された。感染者数を減少される対策として一定の効果があると考察される。

【ワクチン接種】2021年12月に部分接種率80%超となったが、後にオミクロン株が流行している。また完全接種率80%超となった2022年4月以降にもオミクロン株の派生型「BA5」が流行しており、新たな変異株に対して効果は限定的であると考察される。

【特徴】日本にはロックダウンに関する法律がなく、全ての対策に強制力がないことが挙げられる。またオミクロン株発生以降は目立った対策もなく、感染拡大が続いている。

【図3-2 米国の感染状況、対策、ワクチン接種率について】

出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科HPよりデータ引用し著者作成

【入国規制】2020年12月のアルファ株発生時には素早い規制を設け、感染拡大の抑え込みに成功している。

【外出禁止】2020年11月にロサンゼルスで24時間外出禁止命令が出され、感染の波を抑制することにつながったと考察される。

【飲食店閉鎖】2020年9月に営業再開した際に感染拡大していることからも、感染拡大の抑制に効果があると考察される。

【ワクチン接種】ワクチン接種率が低調な2020年12月に流行したアルファ株とワクチン接種が進んだ2021年6月に流行したデルタ株感染の波を比較すると、一定の効果があると考察される。

【特徴】人口100万人当たりの感染者数だけで見ると、日本よりも多い水準が続いていた。一方で、感染地域でのレストラン営業禁止や入国時の規制強化、2022年1月には医療従事者へのワクチンブースター(追加)接種を義務化し、ロックダウンとその他の対策を効果的に行うことで、各感染の波を抑えることに成功している。

【図3-3 フランスの感染状況、対策、ワクチン接種率について】

出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科HPよりデータ引用し著者作成 

【入国規制】新型コロナウイルス発生当初の2020年3月に欧州国境の閉鎖を行った。

【外出禁止】各感染の波が発生した際に外出禁止措置を取っており、感染拡大の抑え込みに成功している。

【飲食店閉鎖】レストランの閉鎖だけでなくオミクロン株が流行した2022年1月にはワクチンパスポート制度を導入。感染の波を抑え込むことに成功している。

【ワクチン接種】2021年11月に部分接種率80%超となった後にオミクロン株が流行しており、新たな変異株に対して効果は限定的であると考察される。

【特徴】米国同様、人口100万人当たりの感染者数だけで見ると、日本よりも多い水準が続いていた。一方で、ロックダウンとワクチンパスポート制度導入などの対策を行うことで、マスク着用義務をなくした2022年6月以降でも大きな感染の波は発生していない。

【図3-4 タイの感染状況、対策、ワクチン接種率について】

出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科HPよりデータ引用し著者作成

【入国規制】新型コロナウイルス発生当初の2020年3月~11月に入国禁止措置を取っており、感染流行を遅らせることに成功している。

【外出禁止】入国規制と同様に感染拡大を抑える効果があると考察できる。

【飲食店閉鎖】2021年4月のデルタ株発生時には店内飲食禁止対策を行ったが、感染は拡大した。

【ワクチン接種】他国と比べて2021年8月のデルタ株の感染の波が大きい。ワクチン接種率が低調であったことが要因のひとつであり、感染拡大を抑える効果があると考察される。

【特徴】観光産業がGDP(国内総生産)の20%を占める国であり、外国人観光客の流入を含めた経済活動が必要である。政府は2022年7月ごろにはエンデミックの状態を目指すと公表し、2022年6月からは入院が必要な陽性患者のみを感染者数としてカウントしている。グラフ上で最新の感染数が減少しているのはそのためであり、感染者の実数は把握できない状況となっている。

【図3-5 サウジアラビアの感染状況、対策、ワクチン接種率について】

出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科HPよりデータ引用し著者作成

【入国規制】2020年3月~2021年1月および2022年1月の対策から、各感染の波が抑えられていることがわかる。

【外出禁止】2020年4月に24時間外出禁止措置を取っていた際は感染が抑えられていた。一方で、ラマダン(イスラム教徒が毎年行う断食)開始と同時に感染者数が増加しており、感染拡大を抑制する効果があると考察される。

【飲食店閉鎖】2021年2月に実施した際に感染拡大の波が緩やかになったと考察される。

【ワクチン接種】普及前後で感染の規模に大きな変化がなく、ワクチン接種以上に入国禁止措置が効果的であったと考察される。

【特徴】ラマダンや巡礼(ハッジ)など、宗教上実施せざるを得ない行事があるなかで、厳格な入国規制とロックダウンを行うことで各感染の波を抑え込むことに成功してきた。

【図3-6 中国の感染状況、対策、ワクチン接種率について】


出典:札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科学HPよりデータ引用し著者作成
【入国規制】ウイルス発生起源となった国といわれており、他の対策を強化していた。
【外出禁止】2020年1月以降、政府の厳しい管理体制の下で厳格な行動管理が継続して行われていた。
【飲食店閉鎖】2020年1月以降、政府の厳しい管理体制の下、厳格な営業管理が継続して行われていた。
【ワクチン接種】自国で開発したワクチンで接種が急速に広がったことがわかるが、オミクロン株には効果が低かったと考察される。
【特徴】トップダウン方式で徹底したロックダウン対策を行った国である。ほぼ全ての成人がスマホアプリで行動を監視され、感染者が出た場合には接触者を特定し、強制的にPCR検査が実施されていた。結果としてオミクロン株発生までの感染抑制に成功した。

4章 医療体制の国別比較
1.病床数と医師数
1.) 対象各国の医療体制について病床数と医師数を比較する(表3)。
【表3 人口あたり病床数と医師数】

 出典:厚生労働省医政局HPおよび各国のHPよりデータ引用し著者作成

日本は人口あたり病床数が対象6カ国中で最も多く一見、医療体制が充実しているように思える。しかし、人口あたりの医師数は米国、フランス、タイを下回っており、コロナ禍のような緊急時には十分な医療対応ができないと考察できる。

2.)  また日本には小規模な病院が多く、隔離スペースが必要なウイルス感染症対策はできない病院が多いこともわかっている。そのため、緊急時に実際に使用できる病床数は限られており、人口あたりの病床数を十分に保有していながら、医療ひっ迫を招きやすい国となっているのではないだろうか。

2.コロナ禍の医療対策

1.)  対象各国のコロナ禍における医療対策について具体的な内容を比較する(表4)。

【表4 各国の医療対策】

出典:JETRO(日本貿易振興機構) HPよりデータ引用し著者作成

2.) 日本の対策は時期も遅く、小規模であることがわかる。米国はニューヨーク州のみで9000床の仮設病床を、フランスでは同時期に1万4000床の仮設病床や野戦病院を設置している。対策の差がけた違いとなっている理由のひとつに、(表3)で見た従来の医療体制の問題が関係していると考察される。

3.オンライン診療について

1.)  オンライン診療の普及率について(図4は日本、米国、フランスのみデータあり)

【図4 オンライン診療普及率】

出典:ビジネス・ブレークスルー大学大学院HPより引用し筆者作成 

2.) 上記のデータは、日本は病院数ベース、他国は患者数ベースのため直接的な比較はできないが、日本はコロナ禍においてもオンライン診療の普及が最も鈍い国であることは明確である。オンライン診療の普及率が低い日本では、感染者は病院に出向き診療を受ける必要がある。そのため、感染者や感染疑いのある患者の人流が抑えられにくく、オミクロン株発生以降も感染拡大が収まらない状況になっているのではないだろうか。

4.ATK検査およびPCR検査

1.) ATK検査キットおよび病院でのPCR検査の価格について比較する(表5)。

【表5 ATK検査キットおよび病院でのPCR検査価格一覧】

※各国2022年8月時点での為替相場で日本円換算 単位(日本円)

出典:各国の通販サイトおよび病院のHPよりデータ引用し著者作成

2.) 日本は、ATK検査キット価格は対象6カ国中で最も高く、病院でのPCR検査についても米国に次ぎ2番目に高いことがわかる。PCR検査の価格が最も高い米国は、図4で見たようにオンライン診療が普及しているため、PCR検査についても自宅から郵送で検査ができるなどのサービスが整っている。そのため、通院して検査をする場合は価格が高くなると予想できる。つまり、日本はいずれの検査価格も最も高い水準にある。

5章 各国の製薬、創薬について

1.日本と欧米諸国の創薬技術の推移比較(図5)

【図5 医薬品創出企業の国籍別医薬品数年次推移(25年のデータ比較)】

出典:医薬産業政策研究所HP他からデータ引用し著者作成

1.) 1980~1990年代前半、日本は醸造産業を中心とした発酵技術を用いて創薬技術で世界をリードしていた。しかし1990年代後半になり一般の疾病については満足度の高い治療薬が出尽くすと、日本国内の医薬品市場に停滞の兆しが見え始めた。

2.) さらにこの頃からメガファーマのM&A(企業の合併・買収)などで海外市場が急成長していった。日本国内でも大規模なM&Aの必要性論が唱えられたが、大きな動きはほとんどなく、欧米諸国との格差が広がる結果となった。

3.) 格差が広がったもう一つ原因に創薬手法の変革が挙げられる。2000~2001年ごろ、約32憶塩基あるといわれるヒトゲノムの大まかな配列が世界で研究・公表された。これを機に製薬業界でもゲノム創薬という新たな手法が誕生した。これまでに開発された医薬品は約500個の分子ターゲットしか持っていなかったが、ゲノム創薬では約2000~3000個の遺伝子をターゲットに創薬を行うことが必要になった。

4.) 結果として、人体に効果的で副作用の少ない創薬ができるようになった一方で、今まで以上の技術力と資金力が必要な業界となり、日本の創薬業界は欧州諸国に追いつかれ、米国には大きく差をつけられる状況となった。

5.) 2021年時点での製薬企業の売上高世界ランキングをみても、日本企業のトップは武田薬品工業の11位で321.1億ドルとなっている(表6)。

【表6 製薬会社売上高世界ランキング 2021年度】

出典:AnswersNews HPよりデータ引用し著者作成

 2.新型コロナウイルスに対する各国の製薬状況

1.) 新型コロナウイルスに対するワクチンおよび治療薬開発の状況を比較する(表7)。

【表7 各国のワクチンおよび治療薬開発企業】

出典:EvaluatePharmaのデータ引用し著者作成

図5でも説明した通り、日本と米国との間には開発企業数に大きな差が生まれている。また、ワクチン、治療薬とも企業数で中国が上回っていることがわかる。

2.) 次に日本企業の内訳についてみる(表8)。

【表8 新型コロナウイルスに対するワクチンおよび治療薬開発中の日本企業一覧】

出典:厚生労働省HP他よりデータ引用し著者作成

日本を代表する製薬各社が開発を行っているが、2022年8月現在日本国内で承認されているものはない。理由としては、図5表6からもわかる通り、そもそもの日本の創薬業界と企業力の課題が挙げられるのではないだろうか。

3.治療薬の承認状況

1.) 新型コロナウイルスに対する治療薬承認状況について各国で比較する(表9)。

【表9 新型コロナウイルス治療薬承認状況 2022年8月時点】

出典:MILKEN INSTITUTE HP他各国のHPよりデータ引用し著者作成

日本の承認済み治療薬は8種類と米国の9種類、フランスの8種類と比較して遜色(そんしょく)ないように見える。ただし、米国は取り消し済みの治療薬も2.3種類あり、実際はもっと多い。

2.) また承認の早さについて着目すると、日本は米国やフランス(欧州)に比べると新薬の承認は遅く、保守的に対応していることが考察される。

6章 まとめ

  1. どのようにして新型コロナウイルスは収まってきたか

 1.) 入国規制

対象6カ国とも適時対策を行い感染者の流入を防ぐことで、感染拡大を抑え込んできた。また2020年2月および2022年1月のサウジアラビア、2021年1月の米国の対策からわかるように、感染拡大後であっても素早く入国規制を行うことで、さらなる感染拡大を防止する効果があった。

2.) 外出禁止

日本以外の5カ国で実施され、人流を減らし感染拡大を抑え込む効果があった。2020年4月にサウジアラビアで、2021年6月にフランスで規制解除後には感染拡大していることからも、外出禁止対策と感染拡大には相関関係があるとわかる。日本はロックダウンに関する法律がなく強制的な対策ではなかったが、国民が外出自粛要請に従うことで感染拡大を抑え込んできた。

3.) 飲食店閉鎖

日本以外の5カ国で実施され、マスクを外す必要がある飲食の機会を減らすことで感染拡大を抑え込む効果があった。2020年9月に米国で規制解除後には感染拡大していることからも、飲食店閉鎖も感染拡大と相関関係があることがわかる。日本は外出禁止同様、強制的な対策ではなかったが、多くの飲食店が休業要請に従うことで感染拡大を抑え込んできた。

4.) ワクチン接種

2021年8月にワクチン接種率が低かったタイで、デルタ株が各国以上に感染拡大したことから、効果のある対策であったとわかる。一方で、感染流行初期段階では有効な対策であるが、後に新たな変異株が出現すると、効果は限定的になることもわかった。

2.日本の問題点、なぜいまだに経済活動を通常に戻せないのか

1.) ATK検査キットの価格が高い

価格が安い国であれば、誰でも頻繁に自主的な検査を行うことができる。仮に無症状であってもATK検査で陽性となれば、自ら行動を制限することができ感染拡大防止につながる。また体調不良の場合や、無症状ではあるが感染疑いがあり検査を受けたい場合でも、わざわざ病院に行く必要がなくなる。結果として医療ひっ迫を回避することにもつながる。

2.) オンライン診療普及率が低い

オンライン診療が普及している国であれば、感染者の外出機会を減らすことができる。また、PCR検査を受けるためだけに通院する患者や、感染の疑いのある患者の外出機会が減少し、感染拡大防止につながる。結果として、対面で診療すべき患者数が減少し、医療ひっ迫を回避することにもつながる。

3.) 医療体制に課題がある

上記1.)および2.)の対策を行うことで無症状者は病院へ行く必要がなくなる。そのため病院は重症患者のみを受診するだけでよくなり、新型コロナウイルス以外の重症患者に対応する医療体制が維持できる。日本は医師不足という課題に加えて1.)および2.)いずれの対策もできておらず、医療ひっ迫の状態が続いている。

4.) 承認済み治療薬はあるが入手困難である

欧米諸国より保守的で承認も遅いが、日本では8種類の治療薬が承認されている。しかし、一部の治療薬は手に入らず治療を受けられない患者が発生している。理由としては、感染者増加が続いていることに加え、自国で開発した治療薬がなく欧米諸国からの輸入に頼らざるを得ないことが挙げられるのではないだろうか。医療ひっ迫を回避した上に治療薬があるという状況に意味があり、日本はその状況にないことがわかる。

ロックダウンやワクチン接種で感染拡大を抑えつつ、医療体制の改善を行ってきた各国では、新型コロナウイルスは深刻な病ではなくなりつつある。一方で、日本はワクチン接種にこそ力を入れてきたが、医療体制には改善が見られなかった。結果として、いまだに医療ひっ迫を回避できておらず、新型コロナウイルスは危険な病と分類されたままである。

以上の理由から、日本ではいまだに経済活動を通常に戻せない状況が続いているのではないだろうか。

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