п»ї カジノで「お・も・て・な・し」『山田厚史の地球は丸くない』第22回 | ニュース屋台村

カジノで「お・も・て・な・し」
『山田厚史の地球は丸くない』第22回

5月 30日 2014年 経済

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山田厚史(やまだ・あつし)

ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。「ニュース屋台村」編集主幹。

安倍首相はアジア安全保障会議に参加するため30日、シンガポールに発った。会議後、米ラスベガスのサンズ社が経営するカジノ施設「マリーナベイサンズ」を視察する予定だ。経済・金融情報を配信する米ブルンバーグは29日、サンズのアディルソン会長が「安倍首相にカジノ解禁をお願いする」と語ったことを伝えた。

安倍首相は超党派の国会議員による「国際複合型観光施設(IR)推進議員連盟」(通称カジノ議連)の最高顧問を務めており、首相の視察を機に、水面下で進んでいた「カジノ解禁」がいよいよ表面化する。

◆カジノ解禁を立法化するためのパフォーマンス

マリーナベイサンズは、シンガポール政府の後押しで4年前に開業。2棟の高層ホテルの上にお皿型のプールを乗せたユニークなデザインで、中核にカジノを設けている。シンガポールはカジノを売りにして観光客を集める方針で、リゾート地であるセントーサ島にもマレーシア資本のゲンティンのカジノを誘致した。

アジアはカジノ資本にとって「爆発市場」だ。ポルトガルから返還されたマカオに乗り込んだカジノ資本は、年間4兆円も利益を稼ぎ出すほどに成長した。触発されベトナム、カンボジア、韓国などへ広がり、観光客誘致に切り札がなかったシンガポールが本腰を入れた。米国でも砂漠都市の振興策として賭博が許され成功したラスベガスのように、カジノは「陽のあたらない場所」で興行するというのが常識となっている。

シンガポールのマリーナベイサンズは「大都市で堂々と」という常識破りの成功であり、カジノでひと儲けしたい人たちの「聖地」になっている。国会開会中に聖地を訪れる安倍首相の狙いを「カジノ解禁を立法化するためのパフォーマンス」と関係者は見る。

◆日本は「最後の処女地」

「東京五輪が開かれる2020年までにカジノを開業させるためには今年中にカジノ法案を成立させることが必要です。世論の反対を恐れ、慎重に時期を探っていたが、ここで法案の審議にかからないと年内成立に間に合わない」と推進派の議員はいう。

「カジノ解禁法案」は昨年12月の国会で会期末にこっそり出された。今国会で形だけでも審議しないと、年内成立に間に合わない、という事情がある。アディルソン会長も「秋には法案を成立することを願っている」と見通しを語っている。

5月の連休明けに、東京・汐留のホテルで「世界カジノ会議」が開かれラスベガスやマカオのカジノ経営者が大集合した。衆参に140人を抱える「カジノ議連」を応援するロビー活動と見られた。カジノ資本にとって日本は「最後の処女地」とされ、期待が集まっている。

◆国民がカモに、寺銭がタックスヘイブンに

カジノが日陰の身であるのは、表向きの華やかさと裏で、マネーロンダリング(資金洗浄)やタックスヘイブン(租税回避地)への資金流失、賭博依存症、暴力団の介在など犯罪や社会病理が絡むからだ。

マカオの大成功も、中国の官僚腐敗と無縁ではない。賄賂の受け渡しが賭博を装って行われ、カジノに入り浸り賭博依存症になった高級官僚が汚職で逮捕されることは日常茶飯事になっている。

違法である賭博を合法化し、東京を訪れる五輪のお客様をカジノで「おもてなし」しようと言うのである。


   フジテレビ、三井不動産、鹿島建設が組んで東京・お台場にカジノを建設する計画が国家戦略会議に提出された。巨額の投資とあぶく銭が乱舞するカジノはアベノミクスの成長戦略の一翼を担うことになる。

しかし「カジノ経営のノウハウ」は日本にはない。主役は国際カジノ資本である。狙いは潤沢な日本の貯蓄である。きらびやかな施設で国民がカモになり、寺銭がタックスヘイブンに流れ出す。

そんなカジノでおもてなしするのが東京五輪。安倍政権のキャッチフレーズは「日本を取り戻す」ではなかったか。

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