п»ї プレシジョン・キャスティング・システムズ(タイランド)日系企業紹介『おじゃまします』第19回 | ニュース屋台村

プレシジョン・キャスティング・システムズ(タイランド)
日系企業紹介『おじゃまします』第19回

11月 14日 2014年 経済

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バンコク週報

1976年10月創刊のタイで発行する日本語新聞。在タイビジネスマンに向けてタイの政治・経済・社会ニュースから人物紹介まで多彩なコンテンツを提供している。

◆精密鋳造用のワックス製造

精密鋳造用装置・機器の設計・製作・販売などを行うPCSジャパン(千葉県東金市)は2012年5月、タイに関連会社プレシジョン・キャスティング・システムズ(タイランド)( 以下、PCSタイランド)を設立した。

その2カ月前の3月、PCSタイランドで現在マネージングディレクター(MD) を務める市崎裕崇氏は、その時点で海外進出最有力候補先だったインドへ視察と展示会出展を兼ねて赴いていた。その時、PCSジャパンの小澤昌明社長から国際電話が入る。「ピントンに決めたから」と。「それはインドのどのあたりですか?」と市崎氏が問いただしたところ、「インドじゃないよ。タイだよ。すぐタイ現地法人を設立してくれ」「……(絶句)」。

実は同社が海外進出を検討し始めたのはその前年の3月。東日本大震災を教訓に、顧客が使用している材料の継続供給のためのバックアップ拠点をつくるためだ。そして、そのわずか1年後に進出先が正式決定するというスピード進出になった。

チョンブリ県イースタンシーボード地区にあるピントン工業団地は、11年の記録的大洪水の直後から、その被害を受けにくいエリアということで注目を集めた。早く決めないと他社に取られてしまうとの危機意識もあり、本社ではまだ現地法人もない状態で早急な契約を指示。ピントン側も臨機応変に対応し、12年4月10日に仮調印。翌月14日のPCSタイランド設立後、本契約を行った。

資金面では日本政策金融公庫の海外展開資金を利用。この時、千葉支店として初案件だったこともあり、スピード審査で12年3月27日に融資が決定した。

さらに、インドが製造拠点であってもタイは重要なビジネス展開拠点になると考え、大洪水後の11年末近くに日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所のレンタルオフィスへ申し込んでおいたところ、幸運にもタイへの進出が正式に決定したわずか1カ月後に入居開始できたことも、進出を後押しした。

それぞれ別経路で動いていた進出に向けての流れが12年4月で合流することになったという。市崎氏は「用意周到に準備していたとしてもここまでドンピシャにはいかなかったろう。タイミングと運に恵まれると不可能が可能となる。あまりそういうのは信じないほうだが、大厄が終わった12年2月3日以降、本当に何もかもが急展開した」と冗談まじりに振り返る。

◆BOIもスピード認可

タイ投資促進委員会(BOI) への投資申請は12年7~8月にかけて行い、10月に認可。こちらもスピード認可となった。実はこの時、市崎氏はBOIで「投資恩典が認められなかったらインドにいく」と宣言している。

PCSタイランドの業務は、精密鋳造用の初工程で使用するワックスの製造。このワックスはPCSジャパンが独自開発したものだ。また、現在、精密鋳造用ワックスを製造している企業はタイを含むASEAN諸国にはない。このため、BOIも最短期間での認可を約束したという。

一方、精密鋳造は軍事技術を民生に転用したもので約100年の歴史を持つ。ロケット、ガスタービン、航空船舶、自動車部品のほか、マンホール、ゴルフのクラブヘッド、バルブなど特殊な形状をしたモノは、鋳造後の切削加工を大幅に削減できる精密鋳の得意分野だ。 ただ、タイでは現在、精密鋳造の需要はあまり高くない。模型用金型やレシピ作成など初期工程で時間と手間ヒマがかかるからだ。量産には向いているが、少量多品種には向かないという面もある。

そのため、同社ではタイだけでは限界があるとして、輸出にも力を入れている。

◆使用済みワックス再組成

タイでの取引先は日系企業3社。ローカル企業との取引はまだないという。タイにライバル会社のいない同社には、使用済ワックスの再生というもう一つの〃売り〃がある。顧客企業にとっては処理費用が不要となるほか、新品の6割程度の価格で、ほぼ同程度の品質のワックスを使用することもできる。

顧客からは「いままで捨てていたワックスを再組成できるのか」との質問もあるという。

なお同社では、他社製のワックス再組成も請け負っている。

市崎MD(右端)とPCSタイランドを支えるタイ人スタッフ

Precision Casting Systems (Thailand) Co., Ltd.
150/80 Moo 9, T.Nongkham, A.Sriracha,
Chonburi, 20110 Thailand
Tel :+66-(0)38-347-314~5
Fax :+66-(0)38-347-316

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