東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、日本とタイの給与の合算申告についてご紹介します。タイ中部・ラヨン県での実例です。
タイの税務署より「日本の所得も合算して申告しているのか?」との問い合わせが4、5社に入りました。駐在員の方々は、留守宅手当として日本円で給与の一部を支給されていることが多いようです。日本の留守宅の生活費として使う、タイ人スタッフに知られる給与額を低く抑えられる、など駐在員にとってはなかなか便利な仕組みですが、日本での所得に対する税金の扱いはどうなるのでしょうか。
◆日本の所得金額を合算して正直申告
税務署からの問い合わせに、「NO」と答えればタイでも課税されることは目に見えています。「YES」と答えれば偽証罪に問われるかもしれません。これまでの駐在期間何年分の日本での所得にすべて課税されてしまえば何百万円の追徴課税となるかもしれません。これは進退窮まりました。さて、どうすればよいのでしょうか?
答えとしてはもちろん「NO」です。日本の所得は申告していないことを認め、正直に日本の所得の金額を合算してタイの税務署に申告しましょう。タイ居住者は日本の給与とタイの給与を合算してタイで申告する必要があります。
タイ居住者とは、1月~12月の間で合計180日以上タイに滞在している外国人を指します。隠そうとしても税務署は従業員にもヒヤリングをします。不幸中の幸いというのはおかしいのですが、これまでの事例では、前年度以前の分まで追徴課税されたという例は聞きません。ここはジタバタせずに正直に申告するのが一番です。
日本の国税庁 タックスアンサー「No.1929 海外で勤務する法人の役員などに対する給与の支払と税務では海外で勤務する法人の役員などに対する給与の支払いと税務」によると、「日本の法人の海外支店などに1年以上の予定で勤務する給与所得者は、一般的には、国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者になり」「非居住者が受け取る給与は、たとえその給与が日本にある本社から支払われていても勤務地が外国である場合、原則として日本の所得税は課税されません。」
「しかし、同じく海外支店などに勤務する人であっても日本の法人の役員の場合には、その受け取る給与については取り扱いが異なります。この場合には、その給与は、日本国内で生じたものとして、支払いを受ける際に20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)の税率で源泉徴収されます。」としています。
もちろん、タイの税務署にも日本の所得とタイの所得を足して合算申告が必要となりますので、その上、日本の税務署からも20%が課税される、といういわば2重課税の状態になります。こちらも一点、役員の方はお気をつけください。
日タイ問わず、税務署への対応は何よりも普段からの付き合いが大事です。分からない点は事前に問い合わせ、普段から税務署とは良い関係を築くことが重要です。
〈参考リンク〉
「No.1929 海外で勤務する法人の役員などに対する給与の支払いと税務」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1929.htm
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