東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、日本人のAさんが日本で出会ったタイ人の友人B子さんと共同で興した会社の発展と衰退についてご紹介します。
日本で出会って気が合ったAさんとB子さんは、タイで事業を始めました。友人同士、しかもB子さんは日本語が堪能ですから安心です。さらに、Aさんがタイに来て驚いたことには、気の良いB子さんの家族や親戚が総出で事業を手伝ってくれます。日本ではこんなことは考えられません。うれしい驚きです。
一から始めた製造業ですが、会社は大きくなり、工場での生産・製品の販売・そして貿易も加わって順調に業績を伸ばしていきます。タイ投資委員会(BOI)の奨励の恩典も受けています。利益が出始めた頃から、B子さんの家族や親戚も次々に雇用しています。
◆信頼関係崩れ、会社存亡の危機
順風満帆(じゅんぷうまんぱん)の成長と抜群の社内環境、理想的な環境のなか、10年近くが経ちました。ところが、ちょっとした意見の違いからB子さんが退職をほのめかします。今までの夢の会社が一瞬で暗転します。
B子さんが退職するならB子さんの親族全員が退職する、との通知を受け取ったAさんは頭を抱えてしまいました。B子さん一族はタイ側株主で過半数をもっていますので、新たなタイ側株主を探さなければなりません。
まさに一瞬にして会社の存亡の危機です。B子さんの親戚が全ていなくなると会社が回らなくなるのは火を見るよりも明らかです。全ての重要な部署の責任者はB子さんの親戚に任せています。全ての重要な情報はB子さんに集まるように自然となっています。代わりに任せられるスタッフはというと、思い浮かびません。
とはいえ、B子さんとの溝はもう埋まることはありません。B子さんも、B子さんの親戚も会社に残る気は無いようです。こうなれば残されたスタッフでなんとか会社を潰さないようにやっていくしか選択肢はありません。
◆会計まわりはふだんからバックアップ体制を
このような事態になる前に、弊社からはB子さんの親戚で過半数が占められた株主構成の是正、運用体制のバックアップ準備についてアドバイスを重ねていましたが、聞き入れられることはありませんでした。
こうなってしまった今となっては、どうやってダメージを最小限にするのか考えるのが精いっぱいです。バックアップ体制については、特に会計まわりはふだんから対策を講じておかないと致命的になります。十分な注意が必要です。
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