SurroundedByDike(サラウンディッド・バイ・ダイク)
勤務、研修を含め米英滞在17年におよぶ帰国子女ならぬ帰国団塊ど真ん中。銀行定年退職後、外資系法務、広報を経て現在証券会社で英文広報、社員の英語研修を手伝う。休日はせめて足腰だけはと、ジム通いと丹沢、奥多摩の低山登山を心掛ける。
6月の終わりにラオスの首都ビエンチャンを訪れた。この時期は雨期に当たるが予想に反して、外気温度を下げる激しい雷雨があまりなく連日40度近い厳しい暑さに耐えねばならなかった。ビエンチャンで見るべき観光スポットもあらかた見終わっており、孫にかまってもらう以外にはビールを飲むくらいしかなく、10日間ほど運動もせず、ラオスブランドのビール「ビアラオ」を流し込み、ひたすら尿酸値を上げる自堕落な日々を送った。
ビエンチャン市内の通りを歩く外国人は中国、韓国からのビジネスマンを除けば、若いバックパッカーとなんらかの国際機関に勤務する人々と聞く。国際機関とは各種援助機関であり、この国に施す仕事をしている人たちがかなりの数にのぼっているようだ。
そんなビエンチャン市内のコーヒーショップで度々休憩する機会を得た。そこは欧米の駐在者が客の大半を占め、折からインターナショナルスクールの夏休み期間中でもあり子供連れの母親が多かった。都内の六本木などに行けば珍しくない光景かもしれないが、このラオスにあって欧米人が目につく不思議な空間である。そこで見つけた唯一の英語紙がVientiane Timesである。
◆北朝鮮・平壌国際空港の落成披露を報じた新華社電
記事の内容は、北朝鮮の首都平壌の国際空港の新ターミナル完成について報じたものだ。中国国営通信社・新華社が配信した英文の内容をそのまま掲載したようだ。以下に掲げるのは、その抄訳である。
平壌国際空港の新しくモダンなターミナルが供用開始(Vientiane Times, 2015年7月3日第6面)〔平壌発(新華社)〕朝鮮人民民主主義共和国(DPRK)が先軍時代のモデル建築物と呼ぶ、新たに完成された平壌国際空港ターミナルは本日午前公式に落成披露された。モダンで目を見張る空港ターミナルはすぐ隣に接する平屋建ての旧ターミナルを圧倒する3階建てで地下駐車場も擁する。
1階は国際便到着用、2階は出発便用となっている。車はさらにターミナル外の平地の約100台収容の駐車場に止めることができる。最上階には、欧州料理、アジア料理、そして韓国スタイルの食事を特徴とする民族料理(国の料理)を含むそれぞれ全く違う料理を供する3種のレストランがある。アジアレストランでは北京ダックさえも7米ドルで提供する。他の二つのレストランが空港へのすべての訪問者に対して開かれるのに対し、民族レストランはチェックイン手続きとセキュリティーチェックを済ませた搭乗客のみが利用できる。
さらに、靴販売店、コーヒーショップ、電気製品(国内製造品、輸入品の両方)、おもちゃ、そして韓国の伝統的衣装を販売する店がある。女性衣装は平壌の他の場所で個別にあつらえるより安価で約80米ドルで販売される。コーヒーは種類によって1杯2.5米ドルから10米ドル(これはコニャック入り)と値段に幅がある。コカコーラとオレンジ・スムージーはそれぞれ50米セントで提供される。
キム・ミョング・ウォンと名乗る若いバリスタはここで働くのに先だち、ドイツに2か月にわたって研修派遣され、コーヒーとカクテルの作り方を学んだ。コーヒーの品質を確かなものにするためイタリアからコーヒーメーカーが購入された、と彼は述べる。キム氏はさらに、資格認定証を取得しており、海外からの旅行者と意思疎通のためある程度の英語を話すことができる。彼が言うには、ここで働く人たちは外国人旅行客によりよくサービスするため英語、中国語とロシア語を話すことができる。
また、新ターミナルには写真サービス、化粧品とスキンケア商品、そして高麗航空(DPRKの唯一の航空会社)がスイス企業と提携して販売を開始した時計などを扱う店がある。お客は店の担当者に、写真を撮り、現像してお土産としてきれいなガラスのフレームに収めるまでの工程を30分以内に済ませてもらうことができる。このサービスはこの空港と馬息嶺(マシクリョン)スキー場においてのみ行われており、値段は3~60米ドルの範囲とされる。
幅広いサービスが昼夜を分かたず提供されている、と空港スタッフは述べる。ターミナルへの来訪者は写真を撮ることを禁止されない。多くのDPRKの家族連れはターミナルのホールで大きな笑顔を見せた写真を撮るのに余念がない。バスとタクシーの乗車は1階で可能。両替サービスについては取り扱いブースがあり、主要通貨間の交換レートを壁の画面に表示している。しかし、新華社には、お客への両替サービスはまだ始めていないと述べた。(以上、抄訳終わり)
◆配信記事を克明にそのまま掲載
これだけの記事ではあるが、この英字新聞社は配信を受けた記事を克明にそのまま載せたものと思われる。それは、中国、北朝鮮そしてラオスの兄弟関係をうかがわせるものである。
この記事を題材にするにあたり他の英字媒体の取り上げ方も調べたが、総じて現体制についての揶揄(やゆ)を込めて扱っている。今や北朝鮮は問題国とのイメージがあまりに固定されている。この記事は、当事者が述べるままを実直に報じているようだ。中国の本当の思惑は別として、北朝鮮に一体どんなことが起きているのか、結構リアルにあぶりだされ、いよいよ怖さが伝わる記事ではある。
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