北見 創(きたみ・そう)
日本貿易振興機構(ジェトロ)カラチ事務所に勤務。ジェトロに入構後、海外調査部アジア大洋州課、大阪本部ビジネス情報サービス課を経て、2015年1月からパキスタン駐在。
パキスタンでは携帯電話の利用者数はここ10年で格段に増え、安価なモバイル・ブロードバンドの普及が進んでいる。2000万人がインターネットを利用する時代が到来している。
◆1億2000万人が携帯電話を利用
パキスタンの1億9000万人の市場は、食品やオムツといった消費財も有望だが、通信サービスも非常に期待のもてる市場だ。他国と同様、パキスタンにおいても通信環境の整備が進んでおり、携帯電話、インターネットの普及はめざましいものがある。
携帯電話の契約者数は2015年9月時点で1億2094万人となっており、普及率は63.3%となっている。 北西部のペシャワルで2014年12月、軍系列の学校をイスラム過激派の反政府武装勢力が襲撃して銃を乱射し、児童や生徒ら141人が殺害された事件を受けて、携帯電話の犯罪利用の抑止を目的に、SIMカードの指紋と国民番号の登録が義務付けられたため、一時的に減少はしているものの、都市部の成人であれば誰でも持っていると考えて差し支えないだろう。
携帯電話キャリアで最もシェアが高いのはモビリンク(蘭ビンペルコム傘下)で、29.1%を占める。続いてノルウェーのテレノールが27.4%、中国移動通信(Zong)が19.4%、パキスタン通信最大手PTCL傘下のユーフォンが15.5%、ドバイのワリッド・テレコムが8.5%という順だ。特に上位3社の契約者数はこの10年間で飛躍的に伸びている。
◆3G携帯でネットが普及
ブロードバンドは、光ファイバー(HFC、FTTH)はほとんど利用されておらず、DSL、WiMAX、EvDO(CDMA)でのインターネット利用が頭打ちとなっている。一方、モバイル・ブロードバンドの普及は激増しており、2100万人がインターネットを利用する時代が到来している。
モバイル・ブロードバンドでは3G回線が98%を占め、契約者数は右肩上がりになっている。2015年6月から3カ月で454万人が新たに契約した。シェアではテレノール、モビリンク、中国移動通信の順となっている。
◆ネットを使って2,000万人にアプローチ
携帯電話での3Gインターネットサービスは非常に安く、例えばテレノールでは一日18ルピー(1ルピー=約1.2円)で利用することが出来る。6000ルピー前後の格安スマホを買い、同プランを利用すれば、最低賃金の月給1万3000ルピーの労働者でも、頑張れば毎日インターネットを楽しむことは十分に可能だ。
動画をよく見る日本人からすると、当地のインターネットの速度は非常に遅く感じるが、パキスタン人に人気のあるSNSやネットゲームを楽しむ分には申し分ないレベルである。
パキスタンで米国向けソフトウェア開発を手がけるIT企業A社の社長は「2億人のうち10%、2000万人がスマホを持った時のインパクトを想像してみてほしい」という。すでに日本で当たり前になっているEコマース、ネットオークション、電子マネーなどは有望だろう。「今はEコマース向けの決済システムを開発しているところだ」と社長は語る。
パキスタンは日本からアクセスしづらい市場であるが、こちらで2000万人がインターネットを利用するようになったということは、日本からするとネットを通じてアプローチしやすい新市場が生まれているといえるかもしれない。手軽に楽しめるネットコンテンツが当地では求められている。
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