東洋ビジネスサービス
1977年よりタイを拠点として、日本の政府機関の後方支援に携わる。現在は民間企業への支援も展開、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを使命としている。
今回は、素行の悪いスタッフの解雇に関するトラブルについてご紹介します。
M社は男性社員を数人雇用しています。うち1人を一刻も早く解雇したいのだが、どうすればよいでしょうか、というご相談を頂きました。対象の従業員Aの職種はドライバー、運転技術は普通、可もなく不可もなく、というレベルです。日頃の素行については、毎月1回程度遅刻をするレベルでぎりぎり許容範囲です。在職期間は2年を過ぎています。
問題が発覚したのは約1カ月半前でした。Aは帰宅時には社用車を会社の駐車場に戻して家に帰ることになっているのですが、Aはある日無断で社用車で帰宅し、翌朝に社用車で出勤したことが判明したのです。
事情を聴いたところ、家庭の事情により、急ぎで家に帰る必要があり、そのために無断で社有車を使用したとのことでした。しかし、会社としては無断使用については許すことはできず、ということで、この1件が1枚目の警告書となりました。
同時期に、Aが別の日に社用車の無断使用していることが発覚します。Aは再度、社用車の管理責任ができていない、ということで会社から警告書を受けることになります。これで同じ社有車の無断使用などの管理責任ができていないということで2枚目の警告書を受け、次に受ければ警告書は3枚目になり、会社としては解雇補償金無しでの解雇が可能になります。
◆日本人には見えなかった裏の顔
このA、一見ごく普通のドライバーかと思いきや、実はかなりの性悪でした。日本人の見えないところで、他の従業員に「自分はマフィアに知り合いがいる」「拳銃を持っている」などの発言をしていました。就業当初は冗談かと思っていた他の従業員も、Aが警告書を受けるたびに、「厳重に注意をしたら、仕返しがあるのでは」とおびえるようになっていきました。
色々考えてみると怖くなってしまいます。何しろ相手は運転手です。このような状態で彼の車に乗って命を預ける気には到底なれません。タイの法律では本来ならば従業員の解雇には3枚の警告書が必要ですが、現状では警告書が2枚ですので解雇には相当しません。とはいえ、こんなに恐ろしくなってしまっては運転手として雇用し続けることはできません。解雇補償金を払ってでも今すぐ解雇したいものです。さてどうしたものでしょう。
◆解雇通知は代理人による話し合いが基本
本来ならば自分で解雇通告をしたいのですが、何しろ言葉の問題や文化の違いがありますので、誤解から怒らせることになってしまってはいけません。ここはタイ人の人事担当者に任せたいところですが、タイ人の人事担当者はすっかり運転手を恐れてしまい、怖くて話をしたくないと言い出す始末です。
ここで弊社の出番です。解雇通知を伝えるには、相手を威圧するのではなく丸腰で代理人による話し合いが基本です。また、直接的な利害関係がない第三者との話し合いは、感情的にならずに冷静に話し合いができるという利点もあります。弊社の人事担当である百戦錬磨のタイ人女性社員が拳銃などを恐れることなく冷静に話し合いの場を持つ予定です。
参考までですが、タイの拳銃所持のライセンスは、自宅や車での保管を許可するものです。拳銃携行の許可がなければ持ち歩くことすらできず、拳銃を見せびらかすことなどもってのほかです。携行許可は警察官や軍人など拳銃の携行が職務上必要な関係者以外には発行されません。職場に持ってくるなどの場面に遭遇した場合は、即時にライセンスの提示を求めて、厳重注意することをお勧めします。
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