п»ї 進出日系企業、業績堅調も競合相手が台頭 『夜明け前のパキスタンから』第21回 | ニュース屋台村

進出日系企業、業績堅調も競合相手が台頭
『夜明け前のパキスタンから』第21回

1月 18日 2017年 国際

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北見 創(きたみ・そう)

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日本貿易振興機構(ジェトロ)カラチ事務所に勤務。ジェトロに入構後、海外調査部アジア大洋州課、大阪本部ビジネス情報サービス課を経て、2015年1月からパキスタン駐在。

ジェトロは昨年12月21日に「2016年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」を発表した。パキスタンでは同年10~11月にアンケートを実施し、進出日系企業31社から回答を得た。調査結果から浮かび上がったのは、(1)在パ日系企業の業績は好調をキープしており、(2)事業の拡大意欲も引き続き高いという良い傾向。しかし、(3)コスト面での競合が激しくなっている上、賃金上昇、安価な輸入品の流入といった問題も顕在化している。どう対処するか、悩みの種は尽きなさそうだ。

◆業績改善は一服したが、好調をキープ

2016年(1~12月)の営業利益見込みについては、在パ日系企業の67.7%が「黒字」と回答した。前年調査に比べて5.6ポイント減少しているが、他の南西アジア諸国と比較すると、依然として黒字企業の割合は高い【図1】。
設立年別にみると、2010年以前に設立した企業はほとんどが「黒字」または「均衡」である。一方、2011年以降に進出した日系企業では、黒字化を達成している企業は14.3%という結果になった【図2】。

北見さんパキスタン第21回-2

2016年の営業利益が、前年と比較して「改善」した在パ日系企業の割合は45.2%(前年調査比21.5ポイント減)、「横ばい」は32.3%(同22.3ポイント増)、「悪化」は22.6%(同0.7ポイント減)であった。2015年度調査では日系企業の過半数で業績改善がみられたが、2016年は一服感があり、前年並みの業績をキープしている企業が増えた。
2017年の見通しとしては「改善」が54.8%、「横ばい」は29.0%、「悪化」は16.1%と、さらなる業績改善が進む見込みだ。

◆7割超の企業が事業を拡大する意向

今後1~2年の事業展開の方向性については、在パキスタン日系企業の71.0%が事業を「拡大」する方針だ。「拡大」の割合は前年調査(76.7%)から5.7ポイント減少したが、縮小/撤退を検討している企業はなかった【図3】。日系企業の事業拡大意欲は引き続き高い水準にある。

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日本人の数も増えており、カラチ日本人会の会員数は2017年1月時点で196人と、1年前に比べて32人増加した。メーカーなどで駐在員を増員させる動きがあったほか、治安状況に改善が見られるため、家族世帯が44.0%増えた(単身世帯は1.2%減)。
2016年12月には森永乳業がパキスタンでの合弁会社設立が発表するなど、日系FMCG(日用消費財)関連企業のビジネスが活発になっており、2017年も引き続き、日系企業の事業展開は活発化することが見込まれる。

◆顕在化する複数の問題点

今回の調査で注視すべき点は、在パキスタン日系企業の経営上の問題点として、「競合相手の台頭(コスト面で競合)」を挙げた企業が61.3%と、大幅に増えたことだ(表)。パキスタンは外資系企業が少なく、他のアジアの新興国に比べて競合相手が少ないことがセールスポイントの一つであった。しかし、今回の調査結果をみると、パキスタンはアジアで最も競合相手の台頭(コスト面)が激しい国の一つになっていることが明らかとなった。

北見さんパキスタン第21回-3

「主要取引先からの値下げ要請」(41.9%)は多くの企業が問題視している。値下げ圧力が続く中、「従業員の賃金上昇」(45.2%)も顕在化している。2016年度の賃金ベースアップ率(在パ日系企業27社の平均)は10.8%と、アジア18カ国・地域の中では最も高い水準だ。他のアジア諸国の賃金上昇に一服感が見られる中、パキスタンでは前年並みの賃金増が続いている。

また、「輸入関税が高い」(41.9%)、「現地市場への安価な輸入品の流入」(同)も大きな課題だ。「ニュース屋台村」2016年9月16日号の拙稿(第17回「不正品が正規品を駆逐する」)でご紹介したとおり、パキスタンは関税などの輸入時にかかる税金が高い上、密輸やアンダーバリューなど税金を払わない不正輸入品が蔓延(まんえん)している。こうした国家の政策運営上の欠陥も、日系企業にとって悩みの種になっていることが今回のアンケートで浮き彫りになっている。

在パキスタン日系企業の業績は改善しており、事業拡大に前向きな方針が見られるものの、競合相手の台頭やコストの上昇、蔓延する不正輸入品など、顕在化する課題に対してどう対処していくのか。2017年も慎重な舵(かじ)取りが求められそうだ。

(参考URL)ジェトロ「2016年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2016/01/6f26fd5b57ac7b26.html

※「ニュース屋台村」過去関連記事は以下の通り
第17回 不正品が正規品を駆逐する
『夜明け前のパキスタンから』
https://www.newsyataimura.com/?p=5879#more-5879

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