Factory Network Asia Group
タイと中国を中心に日系・ローカル製造業向けのビジネスマッチングサービスを提供。タイと中国でものづくり商談会の開催や製造業向けフリーペーパー「FNAマガジン」を発行している。
液晶テレビの大型化にともない、大型液晶パネルの競争が激化している。大型パネルについては、日本メーカーは鴻海精密工業・シャープ連合の堺ディスプレイプロダクト以外は撤退し、LG ディスプレイら韓国勢が上位に位置しているが、中国勢の追い上げが激しくなっている。
「第一財経」(8月 11 日付)によると、中国最大手の京東方科技集団(BOE)は 8 月11 日、湖北省武漢市に第 10.5 世代液晶パネルの生産ラインを増設することを決定した。投資額は 460 億元(約 7400 億円)で、うち 200 億元は武漢市政府が調達。2017年中に着工し、2年以内に稼働させる計画だ。第 10.5 世代液晶パネルに関しては、 BOE はすでに安徽省合肥市で工場を建設中で、18 年に稼働を開始する予定だが、矢継ぎ早の投資には理由がある。鴻海精密工業が広東省広州市政府と組み、3月に第10.5 世代液晶パネルの工場建設に着手したからだ。19 年の稼働開始予定で、8K テレビへの対応も視野に入れる。第 10.5 世代液晶パネルを巡り、主導権争いが繰り広げられようとしている。
◆韓国の生産能力を追い抜く?
台湾地区 TrendForce のディスプレイ市場調査部門である WitsView によると、17年の世界の液晶パネルの生産能力は約2億4700 万平米に達する見込みだ。しかし成長率は 1.3% にすぎず、ここ2~3年では最も低調だ。それは韓国での大型液晶パネルの減産が影響しているという。サムスンディスプレイが第7世代パネルのラインを1本削減し、LG ディスプレイは第5世代パネルへと生産を集約させている。 17 年中に中国の液晶パネル供給量は韓国を追い越し、全世界の 35.7% を占めると、WitsView は予測している。それにともない、韓国の生産量が全世界に占める割合は、16年の 34.1% から 28.8%にまで縮小する。
一方、中国では政府の支援もあることからさらなる生産能力の増強が見込まれ、 20 年には全世界の約 50% を占めると予測する。日本では堺ディスプレイパネルに加え、中小型パネルに特化したジャパンディスプレイが生産拠点を維持しているが、液晶パネルの主戦場は、いよいよ中国へ移ろうとしている。
調査会社・群智諮詢(Sigmaintell)は、 22 年には第7世代以上の大型液晶パネルが全体の 30%近くを占め、テレビ用液晶パネルの主力になると予測する。現在は、 65 インチ、75 インチテレビには第6世代から第 8.5 世代の液晶パネルが使用されているが、第8世代の 1.8 倍の面積を誇る第10.5 世代を採用すれば、6等分から8等分に切り出せるため、生産効率が向上する。
しかし、供給過剰に陥るリスクもある。 WitsView は、第 10.5 世代が値下げ競争に直面することで、現在の主力である第6世代や第 7.5 世代の価格も必然的に下落し、利益を圧迫する可能性があると指摘する。財務リスクを避けるために第 10.5 世代への投資を控えるメーカーもあるため、将来的には、世代間での競争が起きかねない。消耗戦になれば、韓国勢もかつての日本メーカーのように、シェアが縮小の一途をたどることになるかもしれない。果たして大型液晶パネル業界はどうなるのか。その答えが明らかになるのは、そう先のことではないだろう。
※本コラムは、Factory Network Asia Groupが発行するFNAマガジンチャイナ2017年10月号より転載しています。
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