п»ї 来春からの法定雇用率2.2%と精神障がい者受け入れ 『ジャーナリスティックなやさしい未来』第119回 | ニュース屋台村

来春からの法定雇用率2.2%と精神障がい者受け入れ
『ジャーナリスティックなやさしい未来』第119回

11月 09日 2017年 社会

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引地達也(ひきち・たつや)

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コミュニケーション基礎研究会代表。就労移行支援事業所シャロームネットワーク統括。ケアメディア推進プロジェクト代表。精神科系ポータルサイト「サイキュレ」編集委員。一般社団法人日本不動産仲裁機構上席研究員、法定外見晴台学園大学客員教授。毎日新聞記者、ドイツ留学後、共同通信社記者、外信部、ソウル特派員など。退社後、経営コンサルタント、外務省の公益法人理事兼事務局長など経て現職。

◆相互理解に向け苦心

来年春から企業が雇用しなければいけない障がい者の割合である法定雇用率が2.0%から2.2%に引き上げられ、同時に精神障がい者もはじめて対象者として明記されることになった。

私のいる就労移行支援事業所にも「精神障がい者と仕事をするノウハウを知りたい」「実際に雇いながら学んでいきたい」などの積極的な相談もあれば、「いろいろなリスクが考えられて、動きたくない」などの嘆き節もある。私の立場では、精神疾患者の現実として、受け入れることに積極的な思いとともに、具体的な対応があれば、定着する、と説いている。同時に、就労する障がい者へも企業の思いを伝え、相互が理解し合う環境をつくれるよう苦心しているのが現状だ。

現在の障がい者雇用は約47万人で、そのうち身体障がい者が約33万人、知的障がい者が約11万に比べ、精神障がい者は約4万2千人(2016年6月現在)。精神障がい者は増加傾向にあるが、他の二つの障がいとの隔たりは大きい。実際、2013年の障がい種別の平均勤続年数は身体が10年、知的が7年9カ月に対し、精神が4年3カ月であることからも就労定着も大きな問題だ。

◆一般職場に配置も

この数字が示すように、精神が不安定になり休みがちになるとのイメージが強い精神障がい者は身体、知的の2つの障がいに比べ、福祉サービスの対象として遅れた歴史もあり、定着していなかった実情もある。

身体・知的・精神の三つの障がいに同等・共通の福祉・就労を目指す「障害者自立支援法」が成立したのが2005年だから、一般への定着まで至っていない。
ある大企業は昨年から精神障がい者雇用の練習をしたいと、私の施設から入社させ、その社員を一般職場に配置させ、周囲の理解を広げようと試みた。「ダイバーシティ」「インクルージョン」のキャッチフレーズは、このような取り組みを評価すべきではないかと思いつつ、当事者がくじけそうな場面でも周囲が励ましてくれるからありがたい、と語る。

これは模範的な例で、この原稿を書いている最中に、ある不動産系の会社の人事担当から電話があり「現場と相談したところやはり精神障がい者の取り扱いには自信がないとのことなので今回は見送らせてください」という返答があった。疾患が寛解状態にある有能な人物をお願いし、人事部長は乗り気だったが、現場が反対したとのことで、この反応は珍しいことではない。

◆寄り添う気持ちに

企業に勤めていれば、ストレスにより心労がうつ状態になってしまうことも珍しくない社会で、精神疾患も身近になっているはずだ。しかしながら、病気の状態でないと、病気のことを忘れてしまうのか、どうしても当事者の心に寄り添えないのが企業社会である。
2.2%になる来春に備え、精神疾患に寄り添う気持ちを育んでほしい。秋採用の面談に同行しながら、その社会の要請の自覚を持つ企業と、そうではない企業と、面談の内容、企業担当者の表情から読み取れば、もう少し真剣に人生をかけている当事者の心を慮ってほしいとの思いがこみ上げてくるが、まずは相手の求めるのと同時に、企業側も受け入れるために何ができるかを考えてほしい。

※『ジャーナリスティックなやさしい未来』過去の関連記事は以下の通り
第115回 相模原事件を考え、学び、語らうことを続けたい
https://www.newsyataimura.com/?p=6821

精神科ポータルサイト「サイキュレ」コラム
http://psycure.jp/column/8/

■ケアメディア推進プロジェクト
http://www.caremedia.link

■引地達也のブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/kesennumasen/

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