迎洋一郎(むかえ・よういちろう)
1941年生まれ、60年豊田合成入社。95年豊田合成タイランド社長。2000年一栄工業社長。現在中国、タイで工場コンサルタントを務める。自称「ものづくり研究家」。
今回は、ジャストインタイム(必要な時に、必要な物を、必要な量だけつくる)と、手作業から機械化、自働化に進んでいるかを念頭に確認し、アドバイスするものです。この改善の取り組みには、まず工場内の物の流れをシンプルにすることから始めるのが大切です。
◆物の流れは水が流れるように
シンプルとは「水の流れるごとく」とイメージして下さい。その流れは極力淀みのない、しかも、そうめん流しのように整流であれば申し分ありません。しかし製造品種によっては、特殊な加工装置を配すために、そこでいったん分断されることもあれば、別工場に移送される場合もあります。その時はそこで区切りにせざるを得ませんので、出店を作って最小限の手持ち量を決めて停滞させ、次の工程が速やかに引き取り加工に移る工夫をすることです。この工程を作るには、「1個流し」「先入れ先出し」の原則を守ることです。それによって、加工方法の手順と加工サイクルタイムが標準化しやすくなります。
次には加工作業が、手作業から簡素な機械化の発想が浮かびます、機械化したらそこに悪い物はつくらない、または悪い物ができたら機械を停止させて除去する仕組みを装置化するのです。これが「自働化」への道で、100%良品保証工程ができ上がります(オンラインQA工程作り)ので、必要な物しか流さなくなります。
この取り組みについて、各社の実態を見せていただくと、かなり遅れている場面も目にしました。例を挙げますと、①工程間の仕掛り停滞が非常に多い②大ロット製品収納箱を使っている③先入れ先出しに並んでない④多段積みになっている⑤加工工程が小刻みに分離されている――などです。
その結果、至る所にムダ・ムラ・ムリが発生しています。その結果として例えば
1) 人、設備の可動率(べきどうりつ・※注1)が低いため付加価値生産性を悪くしている
2) 最初の仕掛けから完成するまでの時間(リードタイム)が非常に長い
3) 工程間通い箱(ワーク収納)があふれている
4) 次の工程が中間在庫置き場確保で遠く離れてしまってる
5) 作業者が加工を止めて運搬作業をしている
6) 生産の遅れ、進み具合が判断できない
7) 前後工程の遅れが出ても、応受援ができない(判断ができ難い)
――などの課題を抱えていました。
ほとんどの会社でこの「物の流れの効率化」の項目の採点が一番厳しかったようです。それらの会社におかれては、自分の会社は改善の宝の山を持っている、やりがいがある恵まれた会社だと捉えて、大きな業績向上の夢を持ち、挑戦していただきたいと思います。
※注1 可動率…設備を動かしたい時に正常に動いてくれていた時間の割合。「トヨタ生産方式」の生みの親である大野耐一氏がその概念を表すために作成した独自の造語。いわゆる「稼働率」とは区別している。
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第26回 トップポリシーとマネジメントは明確に―迎流企業診断と評価(1)
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第27回 4S管理は全社一丸で取り組む―迎流企業診断と評価(2)
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第28回 「見える化職場」になっているか―迎流企業診断と評価(3)
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迎洋一郎さんによる工場診断サービス
『バンカーの目のつけどころ 気のつけどころ』第103回
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